第八十七話 ウィルクレスト町からの難民
チャップ、アイク、イサク、ウイクがウィルクレストの町から戻ってきた。
驚いたことに彼らは何百人もの人々を連れていた。屋敷の前で、何事かと思うほどの大きな団体ができていた。
「いや、アイマの旦那の言うとおりでしたよ。ちょっと声かけたらどんどんついてきて。というか路上に人が溢れかえっていて、ひどいもんでしたよ、ブラッドランス伯爵家の領地は」
チャップが言った。
「こんなに大量に引き連れて、咎められなかったの?」
僕はそれが気になっていた。こんなに大人数では目立ちすぎただろう。
「それが、衛生面や治安面でいろいろあって邪魔者扱いされていたので、感謝されましたよ」
「そうなの? じゃあ、お互い嬉しくてよかった」
<<衛生面と治安面に問題があるってのを聞いてなかったのか? 今までなかった病気や犯罪も一緒に持ち込まれてもいるんだぞ>>
「あ、そうか。危なそうなのいた?」
「はあ、まあ衛生面でも治安面でも危なそうなのばっかりですね」
あっけらかんとチャップが答えるので、僕は言葉を失った。
<<家を各家庭に与えるから、人間らしい生活をしてもらえば、衛生面は最低限はなんとかなるだろう。治安面はさっそくエクサスたちに見回ってもらうが、生活が落ち着くことがわかれば犯罪も多くはならんだろう>>
「法律とかって必要だよね」
<<最低限の決まりは必要だな。理由や種族に関わらず傷つけない、殺さない、壊さない、盗まない。所有権の規定もしなければならなかったり、いろいろ細かい決めごとは必要になってはくるだろうが、いったんはその基本原則だけは守らせよう。その他の非人道的なことも禁止だが、細かいところは追々決めていけばいい。当面はユウマが法律だ>>
「ええ? そんなんでいいの?」
<<多少ややこしい問題も出てくるだろうが、まだ人数も少ないし、あまり細かく決めるよりはユウマの倫理観でやっていけばいい。おまえが尊敬を集めれば、民も納得するさ>>
「尊敬されるような人間じゃないと思うんだけど……」
「そんなことないですよ! ユウマさんはご立派です」
とチャップが言うが、君に言われてもなぁ、という気分。
<<今後も、勝手に流れてくるだろうな。まだ財産を奪われていない者でも悪政に苦しんでいる者たちは多いだろう>>
「ますます領主の重圧がかかってくるな」
<<悪い側面ばかり見る必要はない。人は集まってきているんだ。より広い農地が作れるじゃないか>>
「そうだね。アイク、イサク、ウイク、皆が落ち着いたら、いろいろ作ってみてもらえるかな? 集まってくれた皆を指導しながら」
「はい、がんばります!」
三人が元気よく答えてくれた。
<<農地は城壁の外で作ってくれ。リンネが家の木材のためにかなり森林の伐採もしてくれたから、それなりの更地ができているはずだ>>




