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伝説級最弱ジョブ『愚者』、智の魔神に参謀され“外せば外すほど最強”になります  作者: Vou
第二章 領主編

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第八十一話 米と風呂と布団

 今日食べる分の稲は刈り取り、また苗を育てる分の種子は分けてとっておいた。

 種子から苗を育てたり、土壌の栄養を戻すことはスキルでできるらしいが、そもそも刈り取りやら他の工程に時間がかかっているので、まだまだ大量生産は難しそうだ。


 布団を作り終えたアーレンに、脱穀やら精米やらに必要な道具をアレクたちと話しあって製造してもらった。それから釜や鍋などのキッチン道具も追加で。

 アーレンは本当にこの領地の要だな、と思う。

 防衛も急ぎだけど、まずは生活を整えなければ。



 無事精米まで完了し、米を研ぎ、いよいよ米を炊き上げる。

 スキルなしでも料理の得意なアーレンが担当だ。ドワーフ国では米を調理した経験があるとか。

 アーレンは負担が大きく申し訳ないな。調理できる人も探そう……


 テーブルを囲んで10人が並んで座り、目の前には、(たぶんワイルドボアの)肉料理とついにご飯が!


 さっそくご飯をスプーンで掬い、口に運ぶ。

 少し硬めかな……が、お米の甘い旨みが口に広がる。おいしい!

 生きていてよかったと心から思った。


 こうなると欲張りな気持ちが出てきてしまう。

 味噌汁とかもほしい! チャップの種子の中にはきっと大豆とかもあるだろう。

 まだまだ夢が広がるな。


 最初は未知の穀物に戦々恐々としていた他の面々も、一口食べたらご飯の虜になったようで、皆夢中で食べている。


 米を特産品にするだけで、この領土の経済にも貢献するかもしれないな。

 何より、より多くの人に米の味を知ってほしい。


「まだまだ人手がいるな」


 ついそうこぼしてしまったが、失望ではなく、希望に満ちた愚痴だ。


<<そのことに関しては、考えがある。農作の規模を大きくしていかなければならないからな。だが、今日は初収穫でせっかくのご馳走だからゆっくり楽しむといい>>


 その場にいた(アイマを除いた)全員が米をおいしくいただいて、満足げだった。

 皆の幸せそうな顔を見られると、僕も嬉しくなった。


 食事の後、皆で今日の米作りを振り返ったり、今後の希望などを話し合い、楽しい団欒となった。


 続けて僕は風呂に挑むことにした。

 アーレンが風呂釜を作ってはくれたものの、どうやってお湯を作るかが課題だった。

 しかし、莫大な魔力を持つノクティアが生活魔法を習熟していることが判明した今、僕にはあるアイデアが浮かんでいた。


「ノクティア、生活魔法で水を生成できるよね?」


「もちろんだ。火と水の生成は生活魔法の基本だ。生きていく上で最も重要な要素だからな」


「ちょっと一緒に風呂のところに来てくれるか? 水を風呂に満たしてほしいんだ」


「簡単なことだ」


 風呂場に着くなり、ノクティアは詠唱もなく、指先一つをかざした。すると一瞬のうちに風呂に水が満ちた。

 相変わらず、ノクティアの魔法はすごいな……


「次は火をお願いできるかな?」


 アーレンが使い切れなかった廃材を薪として、風呂釜の下に置いておいてもらっており、それをノクティアに示した。

 ノクティアはまた造作もなく火をつけた。


「消火もできるからよいタイミングで言ってくれ」


 僕はじっと湯加減を監視し、最適な温度になったところを見計らって、ノクティアに消火をお願いした。

 ノクティアがまた無詠唱で指先だけかざすと、ふっと火が消えた。水は使わず、周囲の酸素を消したのだろうか。魔法ってすごいな。


 僕はこの好機を逃さないため、服を脱ぎ始めた。が、ノクティアの冷めた視線に気づき、恥ずかしい。


「ノクティア、悪いんだけど、風呂に入るから、その……」


「遠慮せず入ってくれ」


 マジか……まあ、ノクティアが気にしないならいいけれど。

 反対を向いて、服をすべて脱ぎ捨て、大事なところだけは隠しながら、風呂に入った。


「おおぉ」


 思わず声が出てしまう。これは、風呂だ。当たり前だが。しかし、湯船に浸かることがこんなにも気持ちいいとは……


「温度の加減の調整が必要だったら言ってくれ。熱くすることもぬるくすることもできる」


「いや、大丈夫。最高の湯加減だ。他にも入りたい人がいたら、そのときにまた頼むよ。ノクティアも後で入るといい」


「それなら一緒に入らせてもらおうか」


 そう言ってノクティアが服を脱ごうとし始めた。


「いや、ちょっとそれはまずいよ。僕もう上がるから、どうぞ」


 僕は慌てて風呂から出た。


「そうか、では体を乾かそう」


 今度は体の水が一瞬で蒸発した。何でもありだな。しかし、ノクティアの魔力をとても無駄遣いしているような気分で少し申し訳ない気もした。毎日風呂に入るのは控えるか……



 一日の最後に、アーレンが用意してくれた布団に潜り込み、横になった。

 ふかふかの布団は、転生前の日本でも味わったことのないほど心地よい感触だった。

 幸せすぎる……皆も今日はぐっすり休めるだろう。いい休息ができればいい仕事ができるはずだ。


 今日は控えめに言って、最高の一日だった……明日からまた頑張ろう。

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