第七話 討伐依頼初受注
翌朝、宿で簡単に食事をした後、僕たちは再び冒険者ギルドにいた。
朝からすでにたくさんの冒険者がいた。
アイマによると、冒険者ギルドは、午前中は依頼を探しに来る冒険者でごった返し、午後から夕方にかけては完了報告や素材を納めに来る冒険者でごった返すようだ。
僕たちも依頼掲示板に向かう。
掲示板は冒険者ランクごとに分けられていた。
E級とD級向けは冒険者のボリュームゾーンで、依頼の競争率が高く、割りの良い依頼はすぐになくなるようだ。
現在E級の掲示板にあるのは「薬草採取」「スライム駆除」「ゴブリン討伐」など簡単そうなものばかりで、報酬も銅貨10枚〜20枚程度。
手っ取り早く簡単に稼げそうなものがないかと物色するが、やはりこういった発想が知力2の愚者ならではなのだろうか……
<<C級レベルのワーウルフ討伐の実績はあるんだから、手っ取り早く冒険者ランクを上げたいところだな>>
あら、智の魔神も僕と同じ発想!?
<<あっちに行くぞ>>
「あっちってどっち?」
<<E級掲示板の左手に「ランク不問」の掲示板があるだろう>>
「ランク不問」?
E級掲示板の左、少し離れたところに、確かに別の掲示板があった。
あんまり人も集まっていなかったから気づかなかった。
<<「ランク不問」は難易度と報酬のバランスが悪いから敬遠されがちだが、目先の報酬より、まずはランク上げを目指すのに良いだろう>>
アイマの言う「ランク不問」掲示板のほうに移動する。
<<それだ。「ガーゴイル討伐」ってやつにしよう>>
ガーゴイル討伐……報酬: 銀貨3枚。ソロ・パーティー不問。機密事項を含むため、詳細は依頼主から説明。受注後、秘密保持契約を締結の上、依頼主との連絡方法を開示。
「なんか怪しいな……こんなの誰も手を出さないでしょう。銀貨3枚はまあまあだけどリスクがめちゃくちゃ高そう……そう考えると銀貨3枚は安すぎるよ」
<<「ランク不問」ってのはそういうことだ。大きめのリスクを取らなきゃ飛躍はない。甘い話はないってことだ>>
「『ランク不問』とはいえ、依頼主もまさかE級の冒険者パーティーが受注するとは思っていないだろうな……」
<<そんなことないぞ。例えば騎士団を引退して冒険者になってもE級からスタートだから、低ランクでも実力者がいないわけじゃない。もちろんそういうやつらはすぐランクが上がるから多くはないがな。おまえたちもその「例外」なんだ>>
「ふーん、まあアイマがいいって言うなら、きっといいんだね」
僕は依頼票を掲示板から剥がし、手に持った。
他の冒険者たちに倣って、僕たちは受付に並んだ。
「あら、昨日登録された……」
受付はまたアリアさんだった。
「『ラスティ・ジャンク』です」
ぷっ、とアリアさんが吹き出す。
<<ジャンクの隠語の意味を知ってるのか>>
「何それ?」
<<おまえは知らんでいい。俺はそんな意味をパーティー名に込めていない>>
何かバカにされたような気がしてちょっと気分が悪かった。
「すみません、ごめんなさい。依頼の受注ですね。早速の受注ありがとうございます」
アリアさんが手を差し出してきたので、僕は依頼票を渡す。
が、受け取った彼女の手が一瞬止まる。
「あの……本当にこれを受注されるんですか?」
「はい? はい、そのつもりですが……問題でも?」
「いえ……ただの確認です」
アリアさんは、そこからスイッチが入り、手際よく書類を準備する。
僕たちは準備された受注票と秘密保持契約書を確認し、パーティー名を記入して、代表者の僕がサインした。
サインを確認したアリアさんは、別の書類を僕に手渡してきた。
その書類は依頼主の連絡先を記したものだった。
依頼主は「マーガレット・コンスタンティン」。
コンスタンティン伯爵家、貴族の令嬢だった。




