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伝説級最弱ジョブ『愚者』、智の魔神に参謀され“外せば外すほど最強”になります  作者: Vou
第二章 領主編

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第七十五話 魔素毒

<<魔素の散布機だ。魔素毒を入れて撒き散らしていたようだ>>


「そんなものが……」


 サイラスがつぶやいた。


<<ノクティア、ピンポイントでそのあたりを「ヘル・フレイム(獄火炎)」で燃やしてくれるか?>>


 ノクティアがうなずき、「ヘル・フレイム」を発動する。

 範囲を絞ったせいか、高い火柱が立った。

 火柱の跡にはむき出しの地面だけが残った。


<<これでとりあえず無害化できたな。ゼルミナ、まず自分を解毒できるか? 失敗しても繰り返すんだ>>


「何度やろうができないと思うのだが……」


 ゼルミナが短い詠唱をする。


アンチドーテ(解毒)


 薄い光がゼルミナの全身を包んだ。


「うん? 治ったぞ。なぜだ……」


<<魔力も弱まっていたようだから、今までの「アンチドーテ」ではこの毒には対応できなかっただろうが、今はユウマの傘下だからな。それにしても失敗なしで一発成功させるとは。元の魔力がよほど強いからだな。継続的に毒を撒いていた装置も取り除いたから、もう問題ないだろう>>


「僕のパッシブスキルで、仲間になった人は常にスキル効果にバフがかかるんだ。失敗すればさらに効果が高まるよ。あ、でもダークエルフの魔法ってスキルなの?」


<<ダークエルフはヒト族に近い魔素器官を持っているからな。その魔法はヒト族のスキルと同等と見なされるようだ。おそらく種の起源は同じ、古の魔族なのだろう>>


「それならよかった。ゼルミナ、サイラスも解毒できるか?」


「うむ」


 ゼルミナがサイラスに「アンチドーテ」を施すと、見る間にサイラスの顔色もよくなった。

 が、サイラスは特に嬉しそうでもない。無表情なやつだな。


「他の人たちも解毒してあげなよ」


「うむ、そうだな。各家を回るので、そのあたりで待っておれ」



 ゼルミナは木々の上に建つ家を浮遊しながら回っていった。サイラスもゼルミナについていった。

 大きな集落ではないようなので、そこまで時間はかからないだろう。


 僕たちは、ゼルミナが治療に回っている間、彼女の家の木の下で待つことにした。


「しかしなぜあんなものが結界内にあったんだろう」


<<魔素毒の散布機を用意したのは。まず間違いなく「アビスヴォイド教団」だ。それなのに、やつらはゼルミナに蛮族の仕業だと思わせたんだ>>


「アビスヴォイド教団が何らかの方法でゼルミナに接触して、誤った情報を吹き込んだの?」


<<その可能性が高いな。治療が終わったら話を聞こう>>



 小一時間ほどして、ゼルミナが解毒を終え、サイラスとともに戻ってきた。


 ゼルミナの表情は明るい。


「今晩は宴だ。大量の獲物もある。皆に体力を取り戻してもらいたい。それに新領主の歓迎も兼ねてな」


「それはいいね。……だけどその前に少し話をさせてもらえないか?」

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