第七十三話 蛮族の帰順
エクサスと仲間たちには、新領主のことを他の仲間にも伝えるように依頼した。
必要なだけの住居を用意することと、食糧の保証も約束した。
それ以外にも、僕の「ジョーカー」ジョブのパッシブスキルにより、僕に帰順した者には常時スキルにバフがかかることも明かした。
そんな話をしていると、僕たちが狩った魔物たちを狙ってか、別の魔物が空からやってきた。
鷲の上半身と、獅子の下半身を持つ魔物ーーグリフォンだ。A級に分類されるような強力な魔物だ。
「通常であれば、この折れた槍でまともに戦える相手ではないが、領主様のバフとやらを試させてもらおうか」
エクサスが、折れた槍を構える。山となった魔物の死体の前に立ったエクサスにグリフォンが襲いかかる。
エクサスは先ほどリンネに中断させられたスキルを放つ。
「メテオ・スラスト!」
折れた槍が力強く素早い無数の突きを放つと、憐れを誘うほど刺しまくられたグリフォンが瞬く間に力を失い、地に堕ちた。
エクサスは、想定以上の威力だったのか、唖然とした表情をした。
「驚いたな。その獣人の異常な強さの秘密もわかった。こんな力が手に入るのであれば、誰もが喜んで帰順するだろう」
「それはありがたいな。あ、ちなみに何か失敗するとさらに効果が増すよ。例えば、エクサスが初撃を外していたら、今のスキルもさらに強力になっていたはずだ」
「なんだ、そのでたらめな力は……ユウマはその力で世界征服でもするつもりか?」
唐突な問いに僕は戸惑った。
世界征服なんて考えたこともない。
「そんなのは無理だよ。僕自身はすごく弱いし」
「ユウマが望めば可能だろう? この力は異常だ」
「僕はただ皆が平和で安心して暮らせる領地を作りたいだけだよ。そのためにこの力を使いたいんだ」
「俺たちみたいなならず者たちでもか?」
「もちろんだよ。種族も何も関係なく、誰一人例外なくだ。あ、でも非道なことに力を使おうとしたら僕は仲間と認めないから効果は発動しないと思うよ」
黒騎士はノクティアやリンネのほうを一瞥する。
「ふむ、嘘ではなさそうだな。気に入った。では改めて帰順と、協力を約束しよう。もし世界征服する気になったら、必ず俺たちは力になるだろう」
「世界征服はしないけれど、協力はありがとう。僕も君たちの暮らしを安定させるためにできる限りのことをする。約束しよう」
僕たちが獲った獲物は半分に山分けしてエクサスたちに与えることにし、いったん別れることにした。
僕たちの取り分の半分は、もちろんダークエルフに引き渡す。
「グリフォンの爪は預かろう。この素材でエクサスの武器が作れると思うよ」
あれだけのスキルの威力だ。いい武器を持てば、エクサスもよりすごいアタッカーになるに違いない。
「ユウマの力のおかげで狩ったようなもんだ。好きにしてくれ」
お互いの取り分を携え、別々の方向に進んだ。僕たちはダークエルフに隠れ家に向かった。
「エクサスは何で顔を隠しているんだろうね?」
ずっとそれが気になっていた。
<<あいつはハーフエルフだ>>
「え? そうなの? ステータス見たの? エルフならダークエルフと仲悪いんじゃないの? エクサスは嘘をついていたのか?」
ついそう口にしてしまったが、ノクティアを見て思い直した。
「あ……いや、そうか……」
<<そうだ。ハーフエルフは純血のエルフ族には忌み嫌われる存在だ。おそらくエルフ大森林からは追い出されて、この森に住みついたのだろう。黒ずくめなのは、ダークエルフに近づきたかったからかもしれないな。ダークエルフからも好ましくは思われていないようでかわいそうだが。ユウマにとってはハーフエルフだろうがなんだろうが、どうでもいいことだろう?>>
「もちろんだよ。この領内では皆、平等だ」
<<うん、エクサスも蛮族も重要な役割を果たしてくれることになるだろう>>




