第七十一話 蛮族捜索
ゼルミナたちと別れると、再びダークエルフの集落への道は木々に隠され、元の森の姿が戻った。
僕たちは早速蛮族を捜索することになったが、ゼルミナたちも何の手がかりも持っておらず、どこを探せばいいのか皆目見当がつかない。本当に蛮族など実在するのだろうか。
万が一遭遇したとして、彼らもここに生活している以上、ジャンク領の領民と言えるだろう。単純に排除するわけにもいかない。
「どこを探せばいいかな、アイマ?」
<<獲物を獲っていれば、向こうが見つけてくれるだろうよ>>
なるほど。
そこから僕たちは食糧になりそうな魔物を探し、片っ端から(主にリンネが)倒していく。
ワイルドボアのような地上の魔獣はもちろん、木に止まっている鳥型の魔物も、リンネが「エアー・ウォーク」で瞬時に近づき、斬り殺す。
すぐに運びきれないほどの獲物が山と積まれた。
いったん一部をダークエルフ引き渡すか、と考えていると、リンネがまた僕に飛びついて抱きついてきて、僕は倒れた。
そんなに獲物たくさん獲れたのが嬉しいのか。……ってそんなわけはない。さすがにもうわかっている。
見ると、僕の立っていた場所の後方の地面に長い槍が刺さっていた。
これは確実に即死でしたな。何十回僕はリンネに命を救われているのだろう。
のんびり考える間もなく、敵が姿を現す。
馬に乗った5人ほどの屈強な男女だ。ヒト族だけでなく、牛族やリザードマンなどの亜人も混じっているようだ。それぞれ槍や長剣などの得物を携えている。
蛮族というのは特定の種族を指しているのではなく、種族混合の山賊のようなものなのか。
中心には、黒馬に乗り、黒いマントに黒い兜で顔を隠した騎士がいる。他の者は蛮族らしい乱雑な身なりをしているのだが、その騎士だけは異質だった。
数の上では互角だが、僕は戦力外だし、ノクティアの魔法では殺してしまうだろう。実質、ロズウェルが盾役をして、リンネに無力化していってもらうしかないだろう。
「とりあえず、わしがヘイト集めるで。『リディキュール』!」
ロズウェルが前に出て盾を構える。
黒騎士以外の4人がそれぞれロズウェルに向かってくる。
「ぐわっ!」
と、ロズウェルが叫ぶ。
地面に槍が刺さった。
ロズウェルの首筋から背中にかけてまっすぐな傷がついている。
前からの攻撃ではない。上空からの攻撃だ。鳥人もいるのか?
ロズウェルがダメージを受けるとは……生半可な攻撃力じゃないぞ。
<<ロズウェル、いったん結界を張るんだ>>
「ローバスト・プリズン!」
僕たち5人の周囲に結界が張られる。
蛮族の戦士たちが次々と攻撃を繰り出してくるが、結界は全てを弾く。
ひとまずは安全を確保できたか。
相手も攻撃が通じないところを見て、攻撃の手を止めて距離を取る。
僕は「リリーフ」でロズウェルの傷を癒した。すぐに傷が治ったところを見ると、大きなダメージではなかったようだ。
<<「ローバスト・プリズン」は外からの攻撃も受けないが、中から外への干渉もできない。このまま待っても兵糧攻めになるだけだ。しかし、なかなか統率も取れて、蛮族とは思えないな>>
くそっ、どうしたらいい。殺すしかないのか?
<<ノクティアの魔法やリンネの武力で殲滅するのは簡単だがな、殺したくはないだろう?>>
「もちろん。彼らは領民だ」
<<そうだな。じゃあ、仕方ない。殺さず、無力化するしかない。ユウマはとりあえず、「ケイオス・ライオット」でディストーションを溜めておけ>>




