第六十七話 ジャンク子爵家 家臣団・もう一人のポンコツ
真新しい会議室に全メンバーーーリンネ、ロズウェル、ノクティア、アーレン、チャップを集めた。
そこに、後から美少年ゴーレムが登場する。
「誰や」
ロズウェルが言う。
<<俺だよ>>
「なんや、アイマか」
え? それだけ? 他のメンバーもなんか反応薄いな。
<<では、会議を始めよう>>
始まっちゃったよ。
皆、もうちょっと驚いてもいいんじゃないか?
<<まずは現状の体制を整理しよう>>
ゴーレム人形のときと同じように、アイマの目が光って宙空にスクリーンが映し出される。
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ジャンク子爵家 領主・家臣
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領主 ユウマ・ジャンク 統69 武32 知39 政43 適性:なし
筆頭執政官兼軍師 アイマ 統70 武70 知100+ 政100+ 適性:軍師/策謀/内政
近衛隊長 リンネ 統60 武100+ 知48 政41 適性:近接戦/歩兵/騎兵
防衛隊長 ロズウェル 統82 武78 知62 政50 適性:防衛/治安
魔法軍長 ノクティア 統58 武91 知88 政72 適性:研究/魔法兵
工務卿 アーレン 統52 武34 知32 政49 適性:工業/建築/工兵
商務卿 チャップ 統60 武29 知29 政46 適性:商業/輸送
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何か格好いい役職が並んでいるな。
あれ、なんか冒険者のときとステータスの感じが違うな。
<<ステータスは冒険者のものと、この内政向けでは観点が違う。ジョブの影響がある数値もあればそうでないものもある>>
なるほど。「愚者」の僕より、知力が低いのがいるからそういうことなのか。
<<足りない役割は何だ?>>
農業できないかな。
<<そう、安定的な食糧自給のための農業、畜産業、それから財務、医療あたりが優先的に必要だ。それから外交、土木、軍務全般だな>>
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ジャンク子爵家 募集人材
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農務卿
財務卿
医療卿
外務卿
土木卿
軍務卿・将軍
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「どうやって募集するの? 広告?」
素直な疑問だ。どうやったら優秀な人材が来てくれるだろうか。
<<広告を見て好き好んで魔素の森に来るやつなんているわけないだろう>>
「じゃあ、どうすればいいの?」
<<うまいこと、こちらから見つけてスカウトするしかないだろうな>>
「あ、そう……」
「あと領民も募集しないといけないと思うで。貴族と臣下だけじゃ領地として成り立たんやろ。農夫とか募集したらどうやろ」
ロズウェルがもっともな発言をする。そもそも今の状態じゃ、領地なんていうのも恥ずかしいよな。
<<好き好んで魔素の森に来る農夫なんているわけがないだろう>>
いや、わかっているけれども……
<<農業といえば、よい報告がある>>
「はい、じゃあ私から報告させていただきます」
チャップが元気よく発言する。
「いやぁ、いろいろあって大変だったんですよ、旦那。アースドラゴンとワイバーンの素材をたくさん売りに行ったんですが、なにせ量が多かったもんですから、何人か馬車と御者を雇ったんですね。そうしたら出発してしばらくしたら、突然馬車が四方八方に走っていくんです。何ごとかと思ったらそのままいなくなっているんです。あれですね、素材の持ち逃げです。そりゃめったに見ないような珍しい素材でしたからね。安いやつを雇うんじゃなくて信用できるのを雇うべきでしたね。それでも一番貴重なアースドラゴンの鱗や、ワイバーンの翼なんかは自分で運んでいたので、無事ドワーフ王国のマーケットにはたどり着いたんです。ドワーフ王国にはぜひ行ってみるといいですよ。ヴァレンティア王国では見たこともないものがたくさん見られますからね。でも、ドワーフにもやっぱり悪いやつがいるもんでしてね、金貨1,000枚で全部を買うってのがいたんで、金貨1,000枚ですよ! 見たことあります? それでもちろん売ったんですね。で、しっかりその場で金貨1,000枚を受け取ったんですよ。もちろんしっかり数えました。それで、お腹が空いたんで、ちょっと腹ごしらえでもしようと思って、屋台でワイルドボアの串焼きを買おうと思ったんです。で、ついさっき手に入れたドワーフ金貨を使おうと思ったら、『そんな贋金受け取れるか』って屋台の人が言うんですよ。偽物だったんですよ、金貨。ドワーフの金貨なんて見るのは初めてですからわかるわけないですよね。世間知らずのヒト族だと思ってカモにされたんですね。また1枚ずつ全部調べたんですが、全部偽物でして。慌てて素材を買い取ったドワーフのやつを探したんですが、もう影も形もなくなってました……」
細かく話してくれるのはいいんだけど、素材盗まれるし、せっかく高く売れるからってドワーフのマーケットを紹介してもらったのに騙されて一銭も稼げてないじゃん……ポンコツがここにももう一人いたか……御者としては優秀だと思っていたのに、商人としては最低だな。
あれ? アイマはよい報告って言ってなかったか?
「で、その後、ブロックさんの工房に行きまして、それがものすごいんですよ。このお屋敷も立派ですが、その工房はこの百倍くらいの広さでして、まあ、それはいいんですが、そこでブロックさんからこのアイマさんのゴーレムを預かって帰路に就いたわけです。帰り道でまた例のマーケットを通ったんですが、私はなかなか憂鬱な気分でしてね。だけど、アイマさんがスキルを使えというわけですよ。私の『交易商』ジョブの『バリュー・ディスカバリー』というスキルでして、これは価値の高いものを見つけるスキルなんですが、これを使ったら、穀物の種子を扱っているお店を見つけたんです。しかもヒト族の硬貨も受け入れるって言うんですよ。それで、預けていただいた少なくない旅費をすべて費やして、いろいろ買ってきました。今、持ってきますね」
そう言って、チャップは部屋を出て行った。
ほどなくして戻ってくると、大きな麻の荷物袋を持っていた。
袋を開いて中を見ると、稲のようなものがたくさん詰まっていた。
米なのか!?
「これだけじゃないですよ。他にもいろんなものがありますから」
「ジョーク・ラヴァー」で、大失敗ごとにスキル効果も上がったはずだ。このお土産は、この領地に大きな恵みをもたらすかもしれない。




