第六十一話 ジャンク子爵家領地
魔素の森ーー近年の世界的な魔素濃度上昇が発生する以前から、魔素濃度が高い地域であった。
そのため、もともと魔物が多く発生する場所であり、素材目的の冒険者以外ほとんど立ち寄る者はいない。
魔素濃度の上昇を受けて魔物が強化されていることもあり、命を落とす冒険者も多くなり、ますます寄り付く者が減少している。
もともとコンスタンティン侯爵家の領地ではあったが、領民として登録されている者はいない。
ただ、町で差別を避けて暮らしている亜人や、エルフ社会から追放されたダークエルフのような種族が存在するとは言われている。
そこが僕のーー最弱ジョブ「愚者」ながら、冒険者として成功し、爵位までもらったユウマ・ジャンクのーージャンク子爵家の初領地だーー子爵家と言いつつ、ブラッドランス伯爵家から独立したばかりで家族はいないのだが、家族同然の仲間たちが一緒だ。
あえてこの土地を選んだことにはもちろん理由がある。
一つは、高い魔素濃度の原因でもあるのだが、千年前のヒト族のヒュブリス王が初めて魔族を召喚し、そのときに発生した魔界と通じるゲートがこの土地に存在しており、古の魔族たちの復活を監視できる体制を整えること。そして、万が一の魔王復活となっても対抗できる戦力と体制を整えておくこと。
特に「アビスヴォイド教団」と呼ばれる現代魔族の秘密結社が魔物を増やすような活動を活発化させており、古の魔族復活の可能性が高まっているのだ。
彼らの活動も抑え、かつ調査を行っていく必要がある。
そしてもう一つ。これは僕の個人的な希望だが、差別を受け、この過酷な環境で生きる人々でも、安全で安定した生活を安心して送れるような領地にしたいと考えている。
が、この地に到着した時点では、僕たちには家もなく、水や食料調達の目処もたっていない。
一つ一つ、まずは生活を整えるところから始めなければならない。不思議と不安はなく、むしろワクワクしている。




