第六十話 ユウマ・ジャンク (第一章 冒険者編 完結)
ディアウッドの町に戻り、僕たちはアースドラゴンを討ち取ったことを宣言した。
すでに多くの人々が避難していたが、逃げ遅れた人々が歓声を上げ、やがて泣き出した。
人々は「本当によかった」「ありがとう」と口々にした。
町は何も被害を受けず、無事だった。
この町の人々は日常に戻り、今までの生活を続けていくことができるのだ。
ドラゴンやワイバーンの凶暴さによって簡単に壊れてしまうようなその日常は、僕たちが守りきったのだ。
僕たちを含め、ここにいる皆が何ごとも起こらない日常のありがたさを噛みしめることだろう。
ロズウェルが男泣きを始める。いろいろな想いが去来しているだろう。
チムニーロックの悲劇の再現を防いで人々を救ったことへの安堵、と同時にいくらドラゴンを討伐したところで、チムニーロックの町は二度と同じ形では戻ってこないことを改めて思い知らされているのかもしれない。
ノクティアは無表情のようだが、わずかに口角が上がっているところを見ると、達成感に満たされているのだろう。
僕の横に立つリンネは、人々の様子を見て優しく微笑んでいる。僕の視線に気づくと、笑みを大きくして僕に視線を返す。
僕は想いがあふれだし、思わずリンネを強く抱き寄せた。
リンネは少しびっくりした様子だったが、すぐに抱擁を返してきた。
「愚者」という最弱ジョブにもかかわらず、皆やアイマの助けにより、家名に頼らず爵位を手に入れ、冒険者としては一つの頂に立ったのだということを実感する。
これからはユウマ・ジャンクとして、領主として、よりたくさんの人を守り、救い、日常を壊そうとするものと戦っていくのだ。
さあ、次のステージへ進もう。
ここまで第一章「冒険者編」をお読みいただき、ありがとうございます!
この章でユウマは「愚者」として成長し、冒険者の一つの到達点に達しましたのだと思います。
次章「領主編」では——「アヴィスヴォイド教団」の影を追いつつ、ゼロからの街づくり/防衛都市計画/他国との外交・戦争など、ユウマたちが数々の課題に挑んでいく予定です。
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