第五十九話 アースドラゴン討伐
「数が多くて取り乱してもうたが、大丈夫や。ブリットモア公国のスタンピードでは何百倍もの数を相手にしとるんや。百匹程度大したことないわ。たとえ敵が飛んでいようがな」
そう言いながら、ロズウェルの顔は引きつっている。スタンピードでは、数は多かったものの下位から中位レベルの魔物がほとんどだったのに対し、今回は上位が百匹で、超上位が一匹だ。比べるのがナンセンスなのはロズウェルもわかっているはず。
「わしがヘイトを集めて、耐えられんくなりそうやったら、『リバーサル・フォルティチュード』で攻撃を無効化するわ。今のこのパーティーの火力なら時間はかからんやろ」
見るからに硬いアースドラゴンにそもそも攻撃が通るかすらわからないが……ロズウェルは覚悟を決めたか。
「私が一気にやってやる。百匹も一万匹も私にとっては一緒だ」
ノクティアが言う。
「討ち漏らしたら私が狩るから心配しないで」
リンネ……
皆、自分たちのやるべきことがわかっているんだ。
アイマがいなくても。
僕も僕のできることをやるだけだ。
……いや、ヒト族の最強戦力と言われた僕たちが勝てなかったらヒト族は終わりじゃないか。やらないといけないんだ。
「ここで迎え撃とう」
もう「ケイオス・ライオット」は発動可能だ。やつらが到達するギリギリまでディストーションを溜めよう。
「ケイオス・ライオット!」
僕は虚空に両刃グレイヴを振り回し、“外し”まくる……
「エンカレッジ」
まずは全体への先制攻撃のためにノクティアにスキル効果バフをかける。
アイマがいないため、ディストーション・レートがどこまで溜まっているかわからないが、感覚的には70%以上はいっただろう。
そしてすぐに次の攻撃のために「ケイオス・ライオット」を発動する。
「|ヘル・サンダーストーム《獄雷嵐》」
ノクティアが広範囲の攻撃魔法を放つ。激しい風にワイバーンたちがバランスを崩し、無数の巨大な雷が次々にワイバーンを撃ち落としていく。
雷はアースドラゴンにも直撃し、動きが止まった。
いける!
そう思っていると、雷の直撃を避けた何匹かのワイバーンが「リディキュール」でヘイトを集めるロズウェルに襲いかかる。
「レクイエム・ブレード」
リンネがロズウェルに群がるワイバーンに素早く飛びかかりながらスキルを撃ちまくり、すさまじいスピードでワイバーンを斬りまくる。
瞬く間に全てのワイバーンが地上に堕ちていた。
「やつがくるで」
スタン状態だったアースドラゴンが動き出す。ノクティアのあの雷を受けてもまだ動けるのか……
「さすがに受けきれんな」
ロズウェルが「リバーサル・フォルティチュード」を発動する。
その刹那、アースドラゴンが鋭い爪でロズウェルを引き裂こうとした。
が、ロズウェルの体は全く動じない。
するとアースドラゴンは後ろ足を大きく上げる。
「あかん。全体攻撃がくるぞ」
「エアー・ウォーク」
「エンカレッジ!」
「ファイナル・ブレード!」
アースドラゴンが足を振り下ろす前にリンネが瞬間移動し、その足に強烈な斬撃を放つ。
と、その足はきれいに輪切りになり、アースドラゴンはバランスを崩し横に倒れた。
なおもアースドラゴンは腕を振り上げ、ロズウェルを叩き潰そうとする。
「エアー・ウォーク」
「エンカレッジ」
「ファイナル・ブレード」
完璧なリズムでリンネと僕が交互にスキルを発動する。
アースドラゴンの腕がロズウェルに届く前に吹き飛ぶ。
今度は大口を開け、近づくものを噛み砕こうと威嚇する。
いくら傷つこうと、ドラゴンであることの矜持を保とうとしているかのようだ。
「エアー・ウォーク」
リンネはアースドラゴンの首の横に移動していた。
「エンカレッジ」
「ファイナル・ブレード」
リンネの二本の刀が斬撃とともにアースドラゴンの首を斬りつける。頑強に見えたアースドラゴンの首に豆腐のように簡単に切り取られた。
終わってみれば、僕たちはまだまだ余力を残していた。
僕たちはこんなにも強くなっていたのか……




