第五十六話 ドラゴン再出現
僕たちがマーガレットの待つ王城に戻ると、また城門のところでヴァイスが待ち構えていた。僕たちも用事があったからちょうどよかった。
ーーと思っていたらヴァイスから先に切り出された。
「ああ、ユウマ様、お戻りをお待ちしていました。ちょっと大変なことになりまして」
また頼み事か……
「ヴァイス卿、どうしました?」
「アースドラゴンが出現しました。ディアウッドの町の方に向かっていると報告が来たんです」
「またドラゴンですか!?」
「そうなんです。どうなっているんですかね、近頃は。とにかくドラゴンを討伐できるのは『ラスティ・ジャンク』しかいないんです。お願いします」
ヴァイスは必死に訴えてくるが、僕たちが断るとは思っていないだろう。
僕も町が危ないと聞いて、断る理由などない。
「町の人を救わなあかん」
ロズウェルが言う。
町がドラゴンに襲われることの悲劇を誰よりも知っているのだ。
リンネとノクティアの方にも顔を向けると、二人とも頷きを返した。
「わかりました。お受けします」
「おお、ありがとうございます。すぐに馬車を用意します」
「待ってください。御者はチャップという者にお願いできますか? 以前、僕たちをウィルクレストの町まで送ってくれた御者なのですが」
ヴァイスは少し思案するような顔をしたが、チャップの名前に思い当たりはなさそうだった。
「わかりました。指示します」
「それから、アースドラゴンの討伐に成功したら、報奨はいりませんが、チャップをジャンク家で雇わせてほしいのですが、よろしいでしょうか?」
またヴァイスは少しだけ考えたようだが、すぐに答える。
「はい、もちろんです。御者なんていくらでも替えが利きますからね」
さらっと失礼なことを言う。こういうところから人を見下しているところが見えてしまい、この男を好きになれない。
いずれにせよ、タイミングよくこちらの用件も通すことができた。
図らずもドラゴンの素材が手に入るチャンスで、ブリックスへの約束も果たせそうだ。
ただ、問題はアイマなしで僕たちがドラゴンを討伐できるのかどうかだ。
「討伐に必要であれば、すぐに動員できそうな騎士団員もつけますが、どうしましょうか?」
確かに不安はあるが、前回のレッドドラゴンのときのことを考えると、騎士団が参加するとむやみに犠牲を増やすことになりかねない。
「いえ、大丈夫です。それならマーガレット様に護衛をつけてください。僕たちはアースドラゴンの討伐に向かうので、一緒にウィルクレストに戻れなさそうですから」
「もちろんです」
「御者の準備ができ次第、僕たちはすぐに出立します」




