第四十七話 ブリットモア公国の侵攻・スタンピード
ブリットモア公国はウィルクレストの町の北西側に位置しており、僕たちも北西側の門に配置された。
哨戒隊の情報によると、正確な数を把握できないほどの数だったようだが、優に1万を超える敵影のように見えたという。
ウィルクレスト騎士団の数は100程度、歩兵団が300、弓兵が100、かき集められた冒険者の数もせいぜい200程度といったところだろうか。
マーガレットによると、ブリットモア公国の兵士は魔物化した兵士だという。
そうすると対人の訓練を中心に行っている騎士団では対抗できないかもしれない。
魔物を相手にすることが慣れている冒険者たちも、万単位の魔物を相手にしたことがある者などいるはずがない。しかも、S級の「ラスティ・ジャンク」を除けば、B級以下の冒険者たちだ。つまり、上位の魔物が混じっていればーーその可能性は極めて高いがーー対抗できるのは「ラスティ・ジャンク」だけだ。
僕は自ら「ラスティ・ジャンク」に迎撃の指揮を執らせてもらえるよう志願した。S級冒険者としての責任もあり、大物の魔物を討伐してきた実績もある。何よりもアイマがいる。
<<敵影が見えればディストーションは溜めることができる。視認できたらユウマはすぐに「ケイオス・ライオット」を発動してディストーションを溜めるんだ>>
アイマは冷静だ。範囲攻撃ができるノクティアが加入したとはいえ、何万という敵に対抗できるのか……僕たちは冒険者であって、戦争をする軍隊ではない。
<<ノクティアは詠唱を始める準備をしておけ。リンネとロズウェルは、大物だけに集中するんだ。特にノクティアが討ち漏らすようなのがいたら、そいつを優先的に叩け。それ以外で近づく雑魚は兵士たちと冒険者たちに任せるんだ。俺が指揮官を見つけたら教えるから、そいつを優先的に狙え。ロズウェルがヘイトで引きつけて、リンネが確実に仕留めろ。出撃のタイミングはユウマと伝令を通して伝える。地上部隊の指揮はロズウェルが担当だ>>
僕たちは配置に就くべく移動する。
僕は町の入り口の門の上の見張り台に立った。ノクティアは町を囲う城壁の上に、弓兵と魔法使いたちとともに配備され、リンネとロズウェルは門の裏でいつでも出撃できるように、騎士団と歩兵団、前衛職の冒険者たちとともに待機している。
僕の視界にさえ入っていれば、「エンカレッジ」でバフをかけることもできる。
やがて、見張り台から見える彼方の平原に土煙が上がり始める。
まるで砂嵐だ……あれが魔物たちの行進によって発生しているのだとしたら、とんでもない数だというのは想像に難くない。
これが「スタンピード」……
「ケイオス・ライオット」
僕はスキルを発動し、ディストーションを溜める。初手は100%まで溜めて、ノクティアの最大範囲の魔術の火力で可能な限り数を減らさなければならない。
<<先頭の集団が思ったより早いな。門が見えて速度を上げている。秩序だった行軍ではなさそうだ。門を開けて兵団と冒険者たちに先頭集団を殲滅させるんだ。ノクティアの攻撃はまだ使えないからリンネも出せ>>
僕が大声でアイマの指示を城壁に待機している伝令係に伝える。
すぐに門が開き、地上部隊が展開する。
敵方の先遣隊は200程度だろうか。偵察のために先行してきた、という様子ではない。血走った目のウルフ系の魔物たちが一心不乱に獲物を求めて全速で迫ってきているようだった。
リンネが迫る群れに向けて「リーパーズ・ベル」を放ち、開戦となった。
弱い魔物はその一撃で倒れ、それ以外もスタンで動きを止め、その後ろにいた魔物たちも一時的に進行を止められた。
兵団と前衛職の冒険者たちが止まった魔物たちを囲んで攻撃を仕掛ける。
ロズウェルがヘイトを集め、攻撃を受けるたび、「カウンター・ロア」でスタンをかけ、また周囲の戦闘員が攻撃していく。
その中でも倒れない敵がいれば、リンネが高い火力でとどめを刺していった。
第一陣は1匹残らずきれいに片付けられた。
リンネ、ロズウェルたちの地上部隊はそのまま留まる。
後続の大部隊が横幅何キロにも及ぶ土煙を巻き上げて迫る。
<<ディストーション・レート: 100%>>
僕も開戦だ。




