第四十三話 魔素に群がる魔物たち
あっという間に数百匹は超えるだろう大量の魔物や魔獣に包囲された。
弱そうなのも強そうなものもいそうだが、とにかくあまりに数が多い……
これではリンネでも捌ききれない。「リーパーズ・ベル」のような範囲攻撃スキルも範囲が限定的で、囲まれては背後に攻撃ができない。
そして何より火力が足りない。
リンネが敵を掃討するまでにロズウェルがヘイトを集めてもHPが持たないだろう。
当然僕は戦力外だ。
ディストーションを溜める間も取れそうにない。
もしディストーションを溜めることができて「スタンブル」をしても、僕が認識できる範囲しか効果はないし、動いていない敵には効果が薄い……
これはかつてない危機なのでは……
単体か少数の敵相手では何とかやってこれたが、大群相手は今までなかった……今度こそ万事休したか……
<<悪いが名前とステータスを見させてもらった。ノクティアだな。悪いが力を貸してくれ>>
ノクティアは突然話しかけてきたチビゴーレムのアイマを見て一瞬固まっていたが、すぐに答えた。
「……この森の魔物のことはよく知っているけれど……私の力では倒せない魔物も多いわ」
<<このパーティーがいるから大丈夫だ。ユウマ「エンカレッジ」をこの女性、ノクティアに>>
僕は急いで「エンカレッジ」を発動する。
<<ノクティア、「ヘル・アイシクル」を全方位に、可能な限り広い範囲に放ってくれ。打ち損じた敵はうちの前衛が殲滅するから心配するな>>
ノクティアは頷き、詠唱を始める。
<<リンネは「リーパーズ・ベル」を手当たり次第打って、スタンで時間稼ぎするんだ。ロズウェルはヘイトを集めてノクティアを守れ。迫ってきた敵がいれば「カウンター・ロア」でスタンだ。ユウマはリンネにもロズウェルにも「エンカレッジ」を交互にし続けろ。何も考えずに作業に集中するんだ>>
僕が「エンカレッジ」し続け、リンネが「リーパーズ・ベル」で足止めし、射程範囲から漏れた敵をロズウェルが止め、スタンさせる。
ほどなく、ノクティアが詠唱を終える。
「ヘル・アイシクル!」
地中や空中から、無数の氷柱が突き出してくる。氷柱には鋭い棘が生えており、小型の魔物たちは棘が貫通し、大型の魔物たちは無秩序な方向から飛び出してきた氷柱に潰されていった。
さながら地獄絵図だった。
<<油断するな。ユウマ、念のため、リンネに「エンカレッジ」だ。リンネはまだ動くものがいれば「レクイエム・ブレード」でとどめを刺すんだ>>
魔術によって生成された氷柱が霧散していくと、周囲の様子が次第にはっきり見えてくる。
無数の魔物の死骸の山……かなり遠方まで続いている。
20メートルくらい離れたところに、立ち上がる影が見えた。
<<オーガキングだな。この中では最も強力な魔物だろう。リンネ、やってしまえ」
リンネが素早く近づき、「レクイエム・ブレード」2連撃をオーガキングに向けて放つと、首と胴体が斬り離され、だるま落としのように崩れた。
「助かった……今回ばかりは無理だと思った……」
思わず呟いてしまう。
「私の魔術にあそこまでの威力はないはず……顕現させた氷柱のサイズも攻撃力も範囲もあり得ないレベルだった……」
<<この「ラスティ・ジャンク」の力だ。ノクティアの魔術も相当なものだったがな>>
「普通の魔術とは違う体系みたいやな。あんな魔術見たことないで」
おそらく「ラスティ・ジャンク」の中でも冒険者経験が最も多いロズウェルが言った。
<<まずは森を抜けて、話を聞こうじゃないか>>
「え? でもまだ森は出られないよ。『悪魔』を探さないと」
僕たちにはまだ任務が残っている。
<<あの魔術を見てわからなかったか?」
「何が?」
<<彼女が「悪魔」だよ」>>




