第三十四話 ジョブ昇格
<<帰る前にいろいろ寄っておこう>>
「ああ、いいね。せっかく王都まで来て何もしないのもね」
<<まずは教会に行く>>
「教会? なんで?」
正直なところ、教会にいい思い出はないので行きたくない。
<<教会といったら天啓を受けにいくために決まっているだろうが>>
「天啓? もう受けてるじゃないか。改めて『愚者』だってことを認識し直せってこと?」
今となっては「愚者」も嫌いではなくなってきているが。いや、むしろ愛着さえあるか。
<<新しい天啓を受けるんだ。レッドドラゴン討伐でレベル50を超えたからな>>
「……僕は『愚者』でいいよ。やっと慣れてきたし」
<<ベースのジョブは一生変わらないから心配するな。おまえは一生「愚者」のままだ>>
その言い方もどうなんだ。
「ちょっと待て、僕たちレベル20台だったよね? レッドドラゴン1匹倒しただけでそんなレベル上がってたの?」
<<そりゃそうだ。レッドドラゴンは伝説級の魔物だからな>>
改めて恐ろしいことをしていたんだな……
それよりも、レベル50になっても元勇者パーティーにバカにされるようなステータスなのか……「愚者」はなんと不遇なんだ……
<<いいから御者に行き先を伝えろ。早くしないと王都を出てしまうぞ。一度出たらまた入るのは面倒だからな>>
僕は御者に、教会に寄ってもらうよう伝えた。ほかにもいろいろ寄るかもしれないと言って、金貨を一枚手渡すと、御者は目を丸くして「どこでもいくらでも行きます」と応じてくれた。
教会で、僕とリンネが天啓を受けることになった。
まずは僕の番だ。
司祭が僕の頭に手をかざし、祈りの言葉を唱える。この儀式で、前回の嫌な思い出がよぎる。
基本ジョブ: 愚者
昇格ジョブ: 大いなる愚者
「大いなる愚者」?? バカに磨きがかかったすごいバカってこと?
<<「竜殺し」の「大いなる愚者」だな>>
褒められてるのか、貶められているのかさっぱりわかない呼称になるな……
続いてリンネの番だ。
司祭がリンネの頭に手をかざし、祈りの言葉を捧げる。
基本ジョブ: 死神
昇格ジョブ: 死神・侍
おお、強そうだ。パワーアップした感がある。
<<「死神」はさまざまな「型」があるが、この「ラスティ・ジャンク」パーティーとリンネには「侍」がベストだろうな。リンネの持ち味の素早さを殺さず、かつ、ディストーションが間に合わない状況でも火力が出せるだろう>>
それって……「愚者」いらなくない?
ロズウェルが守ってリンネが攻撃して終わりじゃん……




