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伝説級最弱ジョブ『愚者』、智の魔神に参謀され“外せば外すほど最強”になります  作者: Vou
第一章 冒険者編

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第二十六話 勇者とレッドドラゴン

 魔法部隊の犠牲にも怯まず、前衛職の冒険者たち、騎士団員たちが左右から突撃していく。


 山頂への道中でも魔物を簡単に斬り倒してきた屈強な戦士たちだ。


 レッドドラゴンも顔を左右に振ってどちらを相手にするか迷っているようだ。


 そして、どちらから合図するでもなく、全く同じタイミングで接近していく。


 レッドドラゴンも決断をし、体を勢いよくひねった。


 するとレッドドラゴンの長く太い尾が左手側にいた戦士たちを勢いよくなぎ飛ばした。


 続いて鋭い爪を備えた巨大な左腕を横に振り、突撃してきたもう一方の戦士たちも一斉に切り裂き、吹き飛ばした。



 多くの前衛職も息絶え、生き延びた者も重傷を負い、倒れた。


 すべては一瞬のできごとだった。


 歴戦の冒険者や騎士団員たちが、まったく歯が立たず、あっけなく戦闘不能となった。


「おお、おお、いいね、いいね。だいぶ死んだな。『ブレイブ・ハート』も興奮しているぜ」


 勇者が戻ってきた。


 殴りかかりたい気持ちをなんとか抑え、戦場に集中する。


 レッドドラゴンは前衛職の中の生き残りを見つけたようで、そちらに近づいていく。



 その中に、兄、サイウスがいた。


 僕を侮蔑した兄。僕を見下したその目は今、強大な魔物を見上げて、怯えていた。


 たとえ騎士団に入団できるような優秀な剣士だったとしても、所詮はヒト族、強大な魔物の前では全くの無力だ。


 なぜ僕たちは正しく自分の力を認識できないのだろうか……


 僕はサイウスのもとに向かって走り出していた。


 レッドドラゴンが巨大な右足を振り上げる。


 僕はサイウスを突き飛ばした。


 レッドドラゴンの足は僕を背中から踏み潰した。


 ガぁぁぁぁぁぁああああ。


 痛い、息が……苦しい……


<<〈ディストーション・レート: 24%->37%〉>>


 レッドドラゴンの足が動き、解放された僕は立ち上がり、リンネのもとに走って戻る。


 リンネがまた大泣きしながら「ソウル・プロテクト」を僕にかける。


 僕の肉体が何度も死ぬことで、リンネにも辛い思いをさせているのが伝わる。これには僕の心が痛む。


「余計なことすんじゃねーよ。おまえらもさっさと死ね! 俺は確実にドラゴンを殺さないとなんねーんだよ!」


 おまえのせいでこんな状況になっているんだぞ。


 僕は勇者を睨みつける。


「なんだ、その目はよぉ! 気に食わねえんだよ!!」


 勇者は剣を振り上げてみせるが、僕たちのことは斬れないだろう。


 斬ってしまえば、自ら「ブレイヴ・ハート」の威力アップを諦めることになる。


<<無視しろ。俺たちが全滅したところで、レッドドラゴンに勇者の攻撃は通らん。勇者以外全員死んでも1割削れればいいところだろう。リンネの「ハーベスト」以外、レッドドラゴンを倒す術はない>>


「ごちゃごちゃ何言ってんだ。おまえはまじで気に食わねえから、戦いが終わったらゆっくりいたぶって殺してやるから待っていろ」


 剣を振り上げたまま、勇者はレッドドラゴンの方に向き直る。


「ほとんど死んだからもう十分だろう。何十倍も攻撃力は上がるのは初めてだから楽しみだぜ。レイナ、俺とサヤにバフだ」


 勇者が聖女に指示を出すと、聖女が詠唱を始める。


「いくぞサヤ、おまえの剣技でドラゴンに隙を作るんだ。俺が一気にとどめを刺す」


 詠唱を終えた聖女のバフを受けた剣聖が、ドラゴンの右側へ、勇者が左側に回る。


 まずは剣聖が仕掛ける。


「『メテオ・ブレード!』」


 流星のように凄まじい剣撃がドラゴンを襲う。


 だが、ドラゴンの皮膚にはわずかな傷もついていない。明らかに攻撃は通っていない。


 それでもドラゴンの注意は剣聖に向く。叩かれている感覚はあるのか。勇者の狙いは達成できたようだ。


「よくやった、サヤ。それでこそ剣聖だ」


 剣聖のほうを向き、背後ががら空きになったドラゴンに勇者が向かっていく。


「『ブレイブ・ハート』解放!」


 勇者が長剣を振りかざし、高く跳躍し、レッドドラゴンの首元に飛びかかる。


「『ブレイブ・オーバードライブ』!」


 長剣が眩い光に包まれ、一気に振り下ろされる。


 剣がレッドドラゴンの皮膚に当たり、凄まじい轟音がした。



 長剣の刃はレッドドラゴンの首を刈り取ることはなかった。


 勇者が空中でバランスを崩し、地上に落ち、ドスンッっと音を立てる。


 レッドドラゴンの首元にうっすら傷のようなものがついていた。


 何人もの冒険者たちを犠牲にした一撃のダメージはたったそれだけだった。


 顔を上げた勇者はその目にドラゴンを捉える。


 その瞬間、その目から戦意が消えるのが見てとれた。

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