第十九話 王都出発前夜
ラッセルに明日の朝、出発するから準備しておけと言われ、僕たちはギルドを後にした。
「王都楽しみね」
リンネは嬉しそうだ。観光じゃないんだけど……まあ、元気になったならいいか。
「そうだね、王都はウィルクレストよりも賑やかだし、面白いものもいろいろあるよ」
「ユウマは行ったことあるのね」
「父親に連れられて何度かね」
無口な父と兄と事務的に史跡を回っただけで、正直なところ、あまり楽しい思い出はないが。
「アイマ、ずっと黙ってたけど、こんなレイドの依頼を受けて良かったの?」
<<もちろん。今代の勇者にも会えそうだしな>>
「勇者パーティーかぁ……当然冒険者ランクはA級だよね?」
<<S級だよ>>
「え? 何、S級って?」
<<A級の上だよ。選ばれた者しかそのランクが与えられることはない>>
「そんな人たちがいるところに、僕らが入っちゃダメでしょう」
<<S級を最速で目指すパーティーにはふさわしい案件だ>>
「え? 僕たちS級目指してるの?」
<<そうだ。S級で実績を積めば貴族になって領地を拝領できるチャンスもあるな。ブラッドランス男爵もそうだろう>>
お父様、勇者並みに強かったってこと?
<<領地をいい感じに運営できれば、スローライフも夢じゃないぞ>>
「ステキね!」
リンネのテンションが上がってるなぁ。
<<ステータスをチェックしておくぞ。ガーゴイル討伐でレベルはかなり上がっているはずだ。それでもB級にふさわしいステには至ってないだろうが>>
テンション下がること言うな、アイマは。
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パーティー名: ラスティ・ジャンク
冒険者ランク: B級
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名前: ユウマ・ブラッドランス
Lv.23
ジョブ:愚者
HP 99/99 MP 9/9 攻31 防22 速14 知3
スキル:
・〈スタンブル〉
・〈ケイオス・ライオット〉
・〈リリーフ〉
・〈エンカレッジ〉
・〈ディープ・ブリース〉
スキルポイント: 15
固有リソース:〈ディストーション〉
武器: ダブルエッジ・グレイヴ (攻+12)
防具: 布の服 (防+2)
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Lv.24
名前: リンネ
ジョブ:死神
HP 87/87 MP 73/73 攻67 防25 速89 知66
スキル:
・〈ハーベスト〉
・〈ソウル・プロテクト〉
・〈コロージョン〉
・〈リーパーズ・ベル〉
スキルポイント: 9
武器: カランビット・ダガー (攻+5・速+3)
防具: 皮の胸当て(防+4)
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僕の知力…
<<スキルポイントだいぶ貯まったな。レイドのメンバーを見て新スキルを取得しよう。もうすぐ、上位ジョブも狙えそうだ>>
「あ!」
<<どうした?>>
「すごいこと思いついた。戦闘に入る前から、ディストーションを100%まで溜めておいたらいいんじゃない? そしたら『エンカレッジ』で、リンネの『ハーベスト』を必中にできるから、単体の敵なら絶対勝てるよ」
<<残念だが無理だ。ディストーションはおまえの「ヘマ」によって発生する歪みなんだ。敵がいないところで「ケイオス・ライオット」をしたところで「ヘマ」の判定にはならない。ただの素振りと見なされるだけだ。ディストーションは戦闘中でないと溜められない>>
「ああ、そう……」
僕たちはまた昨日のレストランで楽しく食事をして、宿に戻った。
また僕とリンネは同じベッドで寝る。
「まさか私の人生で王都に行くことがあるなんて思ってもみなかったわ」
「楽しみだね」
「それに私みたいな獣人がB級冒険者になるなんて……ガルム街道では絶望感しかなかったのに、本当にユウマと出会えてよかった……」
「まあ、ほとんどアイマのおかげだけどね」
ふふっ、とリンネが可愛らしく微笑む。
そして、隣で横になっている僕の手を握る。
おいおい、どういうこと? 獣人ってこういうスキンシップが普通なの?
「本当に、いつかお金を貯めて、どこかでのんびり暮らせるといいね。そのときは……」
<<さっさと寝ろよ。おまえら、俺たちは王都に行って、合同討伐に参加するんだからな。ちゃんと休めよ>>
「はい、ごめんなさい」と言って、リンネは手を離した。
アイマ……




