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伝説級最弱ジョブ『愚者』、智の魔神に参謀され“外せば外すほど最強”になります  作者: Vou
第一章 冒険者編

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第一話 愚者のスキル

<<大変なことになったな>>


 この声は何なんだ。起きたのはいいものの、幻聴が聞こえるようになってしまったか?


<<幻聴とかじゃないからな>>


 心を読まれている? いや、これは僕の妄想なんだ……


<<いいから足元見てくれ>>


 倒れたままの姿勢で、幻聴に言われるがまま、足元を見る。


 小さなゴーレム人形がバンザイの格好で転がっていた。


<<やあ、こんにちは>>


 声はその人形が発していた。


「うわっ!」


<<びっくりさせて申し訳ないんだけど、一応これでも俺は魔神でね。ちょっとマナ切れで動けなくなっていたところに君が放り出されてきたわけだ>>


 怪しさでいっぱいだ……


<<悪いんだけど、ちょっと町のほうまで運んでくれないかな。代わりと言ってはなんだが、君も安全に町までたどり着けるようサポートしてあげよう。たぶん君一人だったらすぐのたれ死ぬだろうね>>


 魔神を名乗るゴーレム人形に言われ、今世の記憶を辿り、自分の状況を振り返る。

 確かに今の状況は僕にとってまずい。


 僕はブラッドランス男爵家の次男ユウマとして育ち、15歳になった。


 15歳、天啓を受け、自分のジョブが与えられる歳だ。


 そして、そのジョブのせいで、僕は今窮地に陥っている。


 父のガイウス・ブラッドランスは平民ながら、「騎士」のジョブを授かったことで功績を多く挙げ、男爵まで上り詰めた。

 野心がとても強く、息子の僕に対する期待も大きかった。

 長男レオンは「剣士」の戦闘系ジョブを授かり、期待に応えたと言っていいだろう。


 ジョブが地位に大きく影響するこのヒト族社会では、15歳での天啓の儀は、人生の最初の大イベントなのだ。


 父は僕を連れて王都の教会に行き、司祭が天啓の儀式を行い、僕にジョブ名を告げた。


 父も、僕も、それを聞いた瞬間の衝撃は凄まじかった。


 ジョブ: 「愚者フール


 希少ジョブと言っていいだろう。


 そのレア度は100年に一度とも、1000年に一度とも言われる。


 悪い意味で……


 伝説的な最弱ジョブとも言われ、覚えるスキルは、戦闘にも政治にも生活にすら全く使えないと言われる。


 司祭は事務的に初期スキルを読み上げた。


スタンブル(つまずき)』: 対象をつまずかせる。

ケイオス・ライオット(むちゃくちゃ暴れる)』: その場で暴れる。攻撃力補正なし。攻撃命中率補正なし。


 愚者はあらゆる障害につまずき、ときに理不尽に暴れる。

 それは何も状況を変えるものではなく、自分を貶めるだけのスキルだ……

 こんなスキルどう使えというのか…


 教会でそのジョブ名を聞いたときの父の絶望した顔は一生忘れることはないだろう。


 父は、馬車での帰り道、家にはまっすぐ帰らず、僕を道中に放り出した。


「お前のような馬鹿者を家には置いておけん。よりによって『愚者』とはな。魔物が大量発生して戦功が立てやすいときにくだらんジョブを引きよって。王都では『勇者』の召喚にまで成功したというのに……この愚か者が! 万が一、生き延びてもブラッドランスの家名は出すなよ。おまえは我が家には存在しなかったのだ」


 「馬鹿」という言葉が胸に刺さる。


 前世でもあまりに言われ慣れていた言葉だ。


 異世界に転生してまでも、僕は「愚者」なのだ。


 父はあえて魔素が多く降り注ぐガルム街道の真ん中に僕を放り捨てた。


 人体への影響も噂されていたが、何よりも凶悪な魔物が出没する街道だった。


 そんな中、僕は一人放り出されたのだ……


 「愚者」ジョブの天啓と放り出されたショックでまともに頭が回っていなかったが、僕が放り出されたこのガルム街道は、ここ最近魔素濃度が特に高まっており、魔獣も多く出没するという極めて危険な道だ。


 僕の「愚者」のスキルで生き延びられるとはとても思えない……たとえゴーレム人形に騙されたとしても、ここで野垂れ死ぬよりはマシか……


「わかりました……」


 そうして僕はゴーレム人形を拾い上げた。硬い金属の感触だが、軽い。ミスリル製? まさかな。


<<いやぁ、助かった。魔神とはいえ、運まではコントロールできなくてね。まあ、任せておきなさい。俺はアイマだ。よろしく>>


「アイマ、よろしく。僕はユウマ・ブラッドランス……あ、家名はもう使っちゃいけないんだ。ユウマって呼んで」


<<ふむ、ユウマか。よろしく頼むよ>>


「僕は生き延びられるのかな?」


<<俺は魔神は魔神でも智の魔神だ。いろいろあって今の体はこんなんで、直接的な戦闘はできないが、知識と分析と智略でサポートしてやれる。まずはステータスを見せてもらおう>>


 アイマの目の部分が光り、ステータスウィンドウが中空に開いた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


名前: ユウマ・ブラッドランス


Lv.1


ジョブ:愚者フール


HP 16/16 MP 1/1 攻1 防2 速2 知1


スキル:

・〈スタンブル(つまずき)

・〈ケイオス・ライオット(むちゃくちゃ暴れる)


固有リソース:〈ディストーション(歪み)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


<<うわぁ……>>


 引いてるじゃん…


<<全く戦闘向きじゃないじゃん。こんなチビゴーレムの体の俺よりもステータス低いし……俺も戦えないから困ったね>>


「やっぱり生き延びるのは無理ですかね」


<<いや、智の魔神だって言ったじゃん。人智超えてる存在なのよ。俺からしたら愚者も賢者も大差ないぜ。むしろ難題ほど張り切っちゃうよ。うん、ビジョンは見えてる。「愚者」はジョブ進化するほど化けるジョブだしな、俺にとっても特別なジョブだ。とにかく今を生き延びてレベルを上げていかないとな>>


 何かブツブツ始めたな。


<<移動する前にちょっとスキルの練習しておこう。ポケットに入れてもらえるか?>>


 言われるがまま、胸ポケットにアイマを入れた。


<<よし、準備はいいな。対象に意識を向けてスキル名を発するんだ>>


「スキル使う必要あるの?」


<<あたりまえだろう? 「愚者」はステータスがゴミでスキル特化なんだから、スキル使えなかったら生きていけないぜ>>


 いや、スキルもゴミじゃん……


 とは言い返せず…智の魔神が「スキル特化」というからには、名前ほどひどいスキルではないのかも?


 よし、やってみよう。


 自分自身に意識を向けてみる。


 「スタンブル(つまずき)


 右膝が前に突き出し、体勢が崩れた。少しだけ。


 すぐに体勢を立て直す。


「これだけ??」


<<うまいじゃないか>>


「使えるスキルじゃないね。スキル特化なんて言ったくせに」


<<スキル特化だよ。MP消費もないし、必中で、インターバルも短い。そんなスキル滅多にないぞ>>


「だからってこんな自分が一瞬体勢崩すだけのスキルが何の役に立つのさ」


<<いいから、まずはスキルの発動をできるようにするんだ。状況によって使い方は指示するから。もう一つのスキルも使ってみろ>>


 何か納得いかないな……

 と思いながらも、次のスキルに少し期待する。つまずくだけよりはマシだろう。


ケイオス・ライオット(むちゃくちゃ暴れる)!」


 体が勝手に動き始める。両腕が何もない中空を殴り、両足が交互に空を蹴り、そうかと思うと何もないところにタックルを繰り出す。

 今までの人生でこんな激しい動きをしたことがない……


 いや、こんなの当たんないし、当たっても僕のステータスじゃノーダメでしょう……攻撃力補正なしだった気がするし。


<<うん、オーケー。良いスキルだ>>


「え?! どこが良いスキルなの?」


<<消費0でそんな激しい動きができるんだぞ。疲労も全くないだろう?>>


 確かにそうだけど、それで?って感じなんだが…


<<よし、じゃあ、行こう。魔物に遭遇したら必ず俺の指示に従うんだ。じゃなきゃ、君はすぐ死ぬよ>>


 こんなスキルで、もちろん自力で生き延びられるとは思っていない。

 アイマに従って生き延びられるかも半信半疑だが、一人よりはましか。


 馬車も何もないから徒歩で町に向かうしかない。


 アイマが道にも詳しかったので、最寄りのウィルクレストの町に向かうことになった。


 道中も警戒しながら、なるべく足音も抑えて移動した。

 魔物に見つからないことが最も重要だった。


 はずだが……


<<もうちょっと大胆に行きなよ。なるべく魔物を倒していった方がレベルも上がるしさ。大胆さ、無謀さは愚者の美徳なのに>>


「いや、死んだら元も子もないでしょう? レベル上げはせめて装備を整えてからじゃないと……」


<<装備なんてなくたって勝てるって>>


「装備あったって自信ないよ……」


<<お、魔物だ>>


「え!?」


 慌てて周りを見渡すが、魔素の霧が強く遠くが見渡せない。


<<耳を澄ませ>>


 息を殺し、耳を澄ませる。


 ……微かに何か聞こえる。女性の声!?

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