第十八話 ギルマス、怖い
「えーと、ラッセルさんが『ラスティ・ジャンク』宛の依頼をお持ちだということですか?」
「そうだ。指名依頼ってやつだな」
「冒険者登録してからまだ一件の依頼しか成功していない新米冒険者にふさわしい依頼があるということですね」
嫌な予感がするのでけん制しておこう。
「ガーゴイル討伐を成功させてB級へ飛び級したニュースターに相応しい依頼だな」
いやいや……その解釈は盛りすぎでしょう……
「はぁ…」
「王都に行って合同討伐に参加してきてくれ」
「合同討伐ですか……複数のパーティーで大きな魔物を狩る、ということですよね?」
「そうだ。近頃の魔素濃度の上昇のせいで、ついにデカい魔物まで出現するようになってな……王都のパーティーを中心に、各拠点ギルドからも代表者を出せとのお達しだ」
「ウィルクレストギルドの代表者が『ラスティ・ジャンク』だと」
「そうだ。物分かりがいいじゃないか」
「いやいやいや、それはないですって。僕たち初心者の冒険者ですよ。人見知りするから王都とか他のギルドの冒険者とかともうまく連携できないですって。そもそもなんで僕たちなんですか? 冒険者なら他にもいっぱいいるじゃないですか」
「マーガレット様からの推薦だ。ガーゴイル討伐を成功させたパーティーにこの依頼を出せとな。ゲセナー侯爵家が機能していないこともあって、他の有力な冒険者を外に出しにくい事情もあってな。あ、拒否権はないから」
「ええ……そんな……」
「はい、これ受注書ね。サインして。金貨1枚に貢献度に応じた成功報酬も出るよ。交通費も王都ギルド負担。馬車も手配済みだ。何しろレッドドラゴン相手だからな。特別待遇だ。勇者とかにも会えるかもな。やったな」
強引だな……この人。
もうサインするしかないじゃん……しちゃったよ、もう。
え、ちょっと待て。サラッとヤバいこと言ってなかった? レッドドラゴン!? 神話とかに出てくるやつじゃん。そんなの実在しているの? っていうか、戦わないといけないの? 死んで来いってこと? 死んでもいい枠で選ばれた??
ギルマスの権力、怖すぎる……人権も何もあったもんじゃないな。




