第十四話 ガーゴイル討伐戦
<<ガーゴイルは敵が本体に近づくまで攻撃はしてこない。この状況は俺たちにかなりのアドバンテージだ>>
まあ、それしかないよね。
「ケイオス・ライオット」
ディストーション溜めますよ。
相手が全く動かないので、100%までディストーション・レートを持っていき、スキル効果アップの「エンカレッジ」をリンネにかける。
<<リンネはまだスキルを撃つなよ。ガーゴイルは上位の魔物だから、さすがに一発では倒せない。もう一度ディストーションを溜めておけ>>
はい、やっておきます。
もう一度100%までディストーション・レートを溜める。
<<攻撃する前にユウマ、念のため、「ディープ・ブリース」発動だ。ガーゴイルはスタンや石化攻撃をしてくる可能性がある>>
「ディープ・ブリース」
リンネと僕の胸が光り、消える。
<<よし、もう一度ディストーションを100%溜めろ。これで最後だ>>
「了解」
ガーゴイルも先に攻撃してくればいいのに。こっちは準備時間が長ければ長いほど指数関数的に有利になるからな。
そしてそのまま何事もなくディストーション・レートは100%に。
<<リンネ、「リーパーズ・ベル」を石像の列に向けて放つんだ。ユウマは、リンネがスキルを放ったら、すぐにもう一度「エンカレッジ」をリンネにかけろ。集中しろよ>>
「わかった」
僕とリンネが声を揃えて答える。
「大丈夫、もうジョセフ様じゃない」
リンネがつぶやく。
「リーパーズ・ベル」
ものすごい衝撃波が発生する。
後ろにいたこちらもスタンされそうな勢いだ。
<<ユウマ、早くやれ>>
「エンカレッジ!」
衝撃波は石像を次々と破砕していき、全てが崩れ落ちた……いや、一体だけ残っている。
「ガァァァァァ!!」
奇怪な声を上げ、残った石像がこちらに顔を向け、羽を広げる。
「あれが……ジョセフ様?」
とても元人間だったとは思えない姿だ。肌は石のようで悪魔のような形相ーー離れたところからでもわかる真っ赤な充血した目や開けた口からのぞく長い舌。
<<そいつにはスタンも効いていない。リンネ、「ハーベスト」だ>>
「え? でも『ハーベスト』は『エンカレッジ』していても失敗する可能性が高いんじゃないの? 『コロージョン』のほうが確実なんじゃないの?」
<<リンネでもスピードで勝てない。「コロージョン」は当たらないし、相手の攻撃を先に受ける可能性の方が高い。一発でも当てられたらリンネが即死だ。「ハーベスト」以外に攻撃を当てる方法はない>>
と、ガーゴイルが翼を羽ばたかせ、ものすごいスピードでこちらに向かってきた。確かにリンネ以上のスピードだ。
リンネがガーゴイルの動きに集中する。
「ハーベスト!」
リンネに躊躇はなかった。
ガーゴイルの胸のあたりが強い光を放つ。
……が、突進が止まっていない。来る!
クソっ! 何で博打に出てしまったんだ。
僕はリンネを庇おうと手を伸ばす。
……間に合わないか! クソォ!
「ガスン!!」
と、気づいたらガーゴイルはリンネも僕にも攻撃してこず、猛スピードで部屋の壁に激突した。
<<死んでるよ>>
「え!? 『ハーベスト』効いたの?」
<<そりゃそうだ。飛んでる途中で死んで、そのまま慣性で突っ込んできただけだ>>
「じゃあ、賭けに勝ったんだ!」
<<智の魔神は賭けなんかしない>>
「いや、でも『ディストーション・レート』が100%で『エンカレッジ』しても、『ハーベスト』100%にならないでしょう?」
<<「ディストーション・レート」が100%になると、ボーナス効果で200%になる仕様なんだよ。だから『ハーベスト』の致死率は100%だったんだよ>>
マジか。最強じゃん。
<<「ディストーション・レート」を100%まで持っていけて、相手も単体って状況でないと使えない手だからそんなにいつでも使える手ではないんだがな、これが使えるだろう「ガーゴイル討伐」を選んだ時点で、もう勝てることはわかっていた>>
「結果だけ見たら楽勝だったね」
<<ちなみにガーゴイル討伐は通常A級の案件だぞ。レベル10台のE級パーティーではとても相手にできる魔物じゃない>>
血の気が引きました。




