第十三話 魔窟への潜入
<<出発前に準備だ。こちらは人数が少ないから範囲攻撃は持っておかないとな>>
「僕のスタンブルは複数対象にできるよ」
「スタンブルはユウマの意識が向けられる範囲にしか攻撃できないから全体攻撃にならないんだよ。あと地上を動いている相手じゃないと、いくらディストーションがあっても威力が期待できない」
使いどころが限定されるのか。
<<このパーティーの攻撃の軸はリンネだ。ユウマはバフと支援、リンネが攻撃系という基本方針は変わらない>>
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名前: リンネ
獲得スキル:
・〈リーパーズ・ベル〉〔音波振動によるスタン+防御無効弱ダメージ/消費4〕
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<<ユウマも一つスキルを覚えておけ>>
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名前: ユウマ・ブラッドランス
獲得スキル:
・〈ディープ・ブリース〉〔状態を整え、わずかに状態異常耐性を向上/消費0〕
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<<よし、完璧だ。行くぞ>>
ゲセナー侯爵家に向かう道中、リンネが屋敷の構造などの情報を提供する。
心中は穏やかではないだろう。恩人が魔物になった上に、自らの手で討伐しなければならないのだ。
「リンネ……僕はいつでも君の味方だ」
「ありがとう、ユウマ。大丈夫、もう覚悟は決めたから」
そう言ってリンネは力なく微笑む。
屋敷に到達すると、門に二人の門番が立っていた。
僕が一人にガーゴイル討伐の受注書を見せると、もう一人の方に伝えられ、門が開けられた。
一人の門番が僕たちを案内してくれる。
「まさかリンネが受注するとはな」
この門番とリンネは顔見知りのようだった。
「ここには敵側の人間もいる。誰かに見咎められたら、ユウマ殿がリンネを捕まえてくれて、アルフレッド様のところに連行するところだと説明するからな」
さすがに侯爵家の屋敷は広大だった。コンスタンティン伯爵家でも広大さには圧倒されたが、ここはさらに10倍くらいあるのではないだろうか。
ふと父のガイウスを思い出す。
きっと父はこんな地位を目指しているのだ。確かに僕のような「愚者」は足手まといになってしまうだろう。
いくつもの広間や回廊を進み、門番は時折声をかけられたが、手はず通りうまくかわしていくことができた。
そして門番がある部屋の扉の前で止まる。
「この先にガーゴイルがいます。さらに奥にはセリーナ様の部屋があります。屋敷の者は誰も入りません。ガーゴイルに敵う者はおりませんから……セリーナ様はガーゴイルに守られているんです」
「ご案内いただいてありがとうございました」
「こちらこそ、改めて受注してくださってありがとうございます。ゲセナー侯爵家を救ってください。ご武運を祈ります」
怖いけど、やるか……
僕は扉をゆっくりと開ける。
その先には広大な空間があり、50メートルほど真っ直ぐいった先にまた別の扉が見えた。
そしてそこに至るまでに、左右に10体ずつ、合計20体のガーゴイル石像が二列にまっすぐ並んでいる。
「え? ガーゴイルは1匹じゃないの?」
<<この石像の中に1匹本物が紛れている>>
どう見ても全部同じ石像にしか見えないですけど…
<<近づくと奇襲してくるぞ。ちなみにおまえらが攻撃を受けたら避けられないし、一発で即死だ>>
どうすんのよ……




