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伝説級最弱ジョブ『愚者』、智の魔神に参謀され“外せば外すほど最強”になります  作者: Vou
第一章 冒険者編

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第十話 伯爵家の悪役令嬢

 「ノーブル・エッジ」のエースらしいタンクは仕留めたが、まだ3人残っている。


 まだ油断はできない……


 手の内を晒してしまった今、むしろ状況はまずいのでは……??


 と思っていたのに、干からびたタンクを見た3人は「っひぃー!!」とよくわからない悲鳴をあげて走って逃げていった。

 逃げるのに転移魔法を使う余裕もないらしい。


<<やつらはユウマの奇行の意味はわかっていなかったから、単純にリンネのスピードとスキルがヤバいって認識しかなかったんだ。だからパーティーの要だったタンクの無惨な姿を見て逃げる以外の選択肢は思いつかなかったのさ>>


 なるほど、だからタンクを狙わせたんですね。さすがアイマ。


<<さて、一応聞き取りをするか>>


「え? 誰に?」


<<そのタンクだよ。まだ生きているだろう?>>


「ええ??」


 よく見ると確かに息をしている。


<<ステータスがゼロまで落ちているから鎧の重みで立つことすらできないだけだよ。リンネが「ソウル・プロテクト(魂の保全)」を発動しておいたから命は奪っていない>>


「殺してしまったら、あの人たちと一緒ですからね」


 とリンネ。


 あ、自分じゃなくて相手にソウル・プロテクトしてたんだ……命は助かっても、これじゃあ、もう人生詰んじゃってるよな…冒険者保険とか入っているのかな……


「ドストルさん、教えてください。アルフレッド様は、マーガレット様の依頼内容を知っていて、私たちの妨害を指示したんですか?」


 ドストルって名前なんだ、このタンク。


 うん? そうか。ゲセナー侯爵家、というかアルフレッドが関わっているのか?


「……」


「状況はわかっていますよね?」


 と言いながら、リンネはカランビット・ダガーの刃先をドストルの目元に向ける。


 干からびたドストルは心底怯えた目をする。


 ついさっきまで屈強なタンクだったのに、今はラビットのように臆病な小動物みたいだ。


「詳しく、知らない。アルフレッド様、マーガレット様の依頼受けるやつ、消せって。アルフレッド様、お金くれる。腹いっぱい、おいしいもの、食べられる。殺すの、楽しい」


 小さい声でボソボソしゃべるのが似合うようになっちゃったね……


「アルフレッド様はなぜ、マーガレット様の邪魔をするの? もう関係は切れているんでしょう?」


 リンネはさらに問い詰める。

 尋問が得意なのか?


「マーガレット様、逆恨み、してる。ゲセナー家、守る」


「ガーゴイル討伐って……まさか、アルフレッド様討伐ってこと?」


「たぶん、そう」


「なるほどね」


 いや、よくわかんない。


 と思っているとリンネがドストルから離れ、こちらに向き直る。


「マーガレット様はゲセナー侯爵家のアルフレッド様と婚約者だったの。もう解消されてしまったんだけど」


 マジか……なんかわかりやすい因縁が想像できるな。

 うん? リンネもちょっかい出されてたんだよな?


「ちょっと待って。アルフレッドってリンネのことも好きだったんだろう?」


「……好きとかいうのとは違うと思う。奴隷をただの欲望の掃き溜めとして考えていただけだよ」


 言い方……


「アルフレッド様が女好きだったのは否定しないわ。でもそれだけが問題じゃなかったの。マーガレット様がゲセナー侯爵家を乗っ取ろうとしているって噂が出回って……アルフレッド様も別の本命の方とお付き合いされていて、渡りに船とばかり、一方的に婚約破棄してしまったの」


「マーガレット様は本当にゲセナー侯爵家の乗っ取りを画策していたの?」


「わからないけれど……何を考えているのかよくわからない人で……なくはなさそうというか……婚約者が私にちょっかい出していることを知っていながら、私には優しく接してくださっていたんだけど、それが逆に気味が悪くて……少なくともコンスタンティン伯爵家のための政治的な意図はあったと思うわ。家同士の政略結婚でしたし」


 あ、悪役令嬢だ……


「そんな人の依頼受けちゃっていいの?」


 僕は胸ポケットのアイマを見る。


<<大丈夫だ。悪役令嬢が意外と国のことを思って行動してたりするのは定番だろう>>


 そのテンプレがいつでも通用するってことはないでしょう……


「うう……」


 ドストルが呻いた。


 この人のこと忘れてたよ


<<鎧を脱がしてやれ。もう用はない>>


「この人はいいとして、他の人たちがリベンジに来たりしないかな」


<<来るかもな。次は範囲攻撃のスキルを準備しておいた方が良さそうだな>>


「あの人たちもそうだけどゲセナー侯爵家に睨まれたりしないかな。リンネの奴隷契約だってまだ残っているだろう?>>


<<そうだな、リンネが生きていることがバレたら奴隷の首輪で服従を強制する措置をとろうとするだろう。だが、首輪はどうにかするさ。それよりも依頼を完遂することに集中しよう>>


「そうだよ、首輪は大問題じゃないか」


<<何とかするって言っただろう。さっさとそいつの鎧を脱がせて、コンスタンティン伯爵家の屋敷に行くぞ>>



 納得できないまま、僕はドストルの鎧を脱がそうとするが……めちゃくちゃ重いな、この鎧……こんな鎧を装備できる人を倒してしまうとは信じられない。


 リンネが近づいてきて、手を貸してもらい、なんとか脱がせた。


「ユウマ、さっきは助けようとしてくれてありがとう……」


 リンネが言う。


「あたりまえだろう。僕たちは仲間なんだから」


「今まで誰かに助けてもらえることなんて本当になかったから……ワーウルフに襲われたときも、さっきも本当にありがとう」


 僕もこんなに人に感謝されたことはないな、と思った。

 

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