第百話 アイマの提案
《ユウマ、おまえは何か勘違いしているかもしれないが、この世に王国の土地なんてものはない。もちろん、おまえの領地なんてものもな》
「え?」
《俺が言いたいのは、おまえは王国に爵位をもらい、土地を与えられたから、領地を保有する限り、王国に従わなければならないのではないかと思い込んでいるだろうが、それは違うということだ》
「何が違うんだよ。それが事実じゃないか」
《それが違うんだ。本当はそれは事実ではない。王国が勝手に領地の分配を行っているのはその通りだが、それは人々が王国にそうする権利があると信じ込んでいるからに過ぎない》
「それはそうだよ。誰もが王国にそうすると権力があると信じているよ。僕だってそうだ」
《俺が提案したいのは、ジャンク領をジャンク王国として独立させる、ってことだ》
「はぁ!?」
僕はあまりに突拍子のないアイマの提案に面食らって、間の抜けた声を出してしまった。
「それはいいわ。コンスタンティン家も支持します。いえ、コンスタンティン家は、ヴァレンティア王国から離脱してジャンク王国の属領になりますわ」
マーガレットが同調した。
「えぇ!?」
《王国は人々が信じてついてきているから成立しているんだ。例えば、チャップみたいなやつが王国を始めると言っても誰もついてこないだろう。だが、今のユウマなら多くの人がついてくるだろう。少なくとも、ジャンク領と、ウィルクレスト町のヒト族の生き残りはな》
僕が国王に……本当に人々が認めてくれるだろうか……
《それともおまえはヴァレンティア王国に従って、アビスヴォイド教団側につくのか? ヒト族が魔物化して、ついにはこの世界は消滅させられることをよしとするのか?》
「いや、それは絶対ダメだ!」
《それなら選択肢は他にない》
アビスヴォイド教団に屈するくらいなら、何も迷うことはないということか。……そりゃそうだ。
「わかった。ジャンク王国を樹立しよう」
僕がそう宣言すると、そこにいた皆が歓声を上げた。
「私が国王様を守ってあげるから心配しないで」とリンネが言った。
「わしは王国を守ってやるで」とロズウェル。
「私が敵を殲滅する」とノクティア。
「俺が敵将を討ち取りまくるぞ」とエクサス。
みんな……
「私と結婚しましょう」とマーガレット。
ええ!?
「公爵令嬢と結婚すれば、独立しても信用されやすいんじゃないかしら」
《ユウマ、確かに、そろそろ結婚も考えたほうがいいかもしれないな》
「……アイマまで……いや、僕は結婚を政治的なものとしてあまり考えたくないんだけど……」
《政治のことだけじゃない。おまえやおまえの周りの女性たちの幸せも考えてのことだ》
「そうよ、私だって別に政治的な配慮だけをしているわけではないわ。あなたのことは好きよ。自分の幸せのことも考えているし、あなたの幸せも考えたいと思っているわ。だから……もしあなたが嫌なら無理強いはしないわ」
マーガレットがその美しい顔で僕をまっすぐ見つめていた。
「いや、嫌なんてことは……」
そう言いながら、僕はなぜかリンネの方を見てしまう。
リンネは俯いて不機嫌そうにしている。
「リ、リンネはどう思う?」
「……知らない」
なんか怒ってる?
《ユウマよ、もし必要なら複数の王妃がいてもいいと思うぞ》
アイマはゴーレムのくせににやにや笑って僕を見ていた。
「何を言っているんだ、アイマ……」
「それなら、私も婚約者候補に名乗りをあげよう。私もユウマは好きだぞ」
ノクティアが入ってきた。って、おい、ややこしくなるだろうが……
「リンネもどうだ?」
ノクティアがそう尋ねるが、リンネはますます機嫌が悪くなっているように見えた。
「知らない!」
《まあ、考えておけ。おまえが鈍感でこういうことには優柔不断なのもわかっている》
「何だよ、それ……」
《さあ、魔素の森の拠点に戻ろう。ジャンク王国を樹立して、ヴァレンティア王国、そしてアビスヴォイド教団と事を構えることは決まったんだ。忙しくなるぞ》
そうだ。僕たちはやるべきことをやらないと。
ここまで第二章「領主編」をお読みいただき、ありがとうございます!
国王にまで成り上がったユウマですが、次章「王国編」では、アビスヴォイド教団との対決がいよいよ本格化していきます。
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