第九十九話 ウィルクレスト町戦争の終結
皆の命を守るため、僕はガイウスの提案に乗るべきか、と迷った。
「もう時間がなさそうだぞ。どうする?」
ガイウスが僕の回答を要求してくる。
上下逆さになったロズウェルが少し傾き始めた。
「わかった……」
ガイウスの唇の端が上がり、微笑を浮かべようとしていた。
《わかるな! 『エンカレッジ』だ!》
アイマが叫んだ。
そこに黒い影が現れ、僕は反射的に「エンカレッジ」を発動してしまった。
「ハーベスト」
そのスキルは、僕の固有スキル「ディストーション」と組み合わせることで、地上のどのような生物からも魂を抜き取る最凶の単体攻撃スキルだった。
「何だと……」
《間に合ったな》
ガイウスが崩れ落ちる。同時にロズウェルも反転が完全に解けた。
「王国に幸あれ!」
それが父の最後の言葉だった。
功名心に取り憑かれたような男だったが、それも王国のためだったというのだろうか。
父を討ち取ったのは死神リンネだった。アイマの極秘任務を終えて、救援に来てくれたのだ。
「リンネ、ありがとう」
リンネは小さく微笑んだ。
「ユウマ、大丈夫? お父さん……」
「ああ、もちろん大丈夫だよ。リンネに倒してもらえてよかった。もうあの人はヒト族を捨ててしまっていたんだ」
《ああ、異様な強さだったな》
リンネの後ろには、我らが公爵令嬢マーガレットがいた。ブラッドランスの屋敷から無事に逃げ出せたようだ。
「ああ、マーガレット様、ご無事でしたか」
「リンネ……いえ、あなた方のおかげです。不覚にも捕えられてしまって……迷惑をかけてごめんなさい。いつもいつもありがとうね」
「いえ、迷惑だなんて。ウィルクレスト町を取り仕切るマーガレット様のためなら当然です」
そう言うと、マーガレットは弱々しく微笑んだ。
「もう無理ですわ……私にこの町を統治することはできない。もうヒト族の手に負えないほど、状況は変わってしまった……」
「そんなことないですよ。もう害悪の元凶のブラッドランス家は滅びました。がんばって復興していきましょう。ジャンク領も全力で協力します」
そう声をかけてもマーガレットの表情は晴れなかった。
「ブラッドランス家だけではないのです……。王国がアビスヴォイド教団と手を組みました」
「え?」
マーガレットの言うことがすぐに飲み込めなかった。
「ヒト族はアビスヴォイド教団に与して、他の種族を支配しようとしているのよ」
「そんな……アビスヴォイド教団が世界の破滅を目指しているのを知っているのか?」
「さあね。そんな未来のことは考えていないでしょうね。私には王国が他種族への復讐しか考えていないように思えるわ」
僕は混乱していた。ジャンク領は王国から与えられた領地だ。その王国がアビスヴォイド教団につくというのであれば、僕たちもそれに従わなければならないのか?
従えなければ領地は捨てなければならないだろうか?
「どうしたらいいんだ……」
僕は思わず呟いた。
《一つ提案があるんだが……》




