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使役したい召喚獣と、使役されたくない召喚士ちゃん  作者: Lesewolf
第二章 モントシャイン学園編
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第8話 生意気なのはお前だ~!

 大きなローザ・ファルベンの町にある学園(がくえん)、月の光が由来(ゆらい)のモントシャイン学園は、由緒(ゆいしょ)正しき伝統校(でんとうこう)だ。

 中庭(なかにわ)にある庭園(ていえん)には、バラの花が()いている。そんなバラに(かこ)まれながら、ステラは生徒たちから質問責(しつもんぜ)めにあっていた。


「ステラさん、どうやって(りゅう)使役(しえき)したの?」

「ブルーは竜じゃないんです。召喚獣(しょうかんじゅう)です。それに、使役なんてしてません」

「ええ~」


 ステラはブルーの説明(せつめい)(こま)っていた。授業(じゅぎょう)でもブルーは召喚獣(しょうかんじゅう)として紹介(しょうかい)したものの、その姿(すがた)からドラゴンだと思われているようだった。

 ブルーは使役されていないことに関して、首を(よこ)()っていた。


「ステラはどうして、おいらが使役してないと思うんだ?」


 ブルーはステラへ、(ぎゃく)質問(しつもん)(かえ)していた。ステラはブルーを()でながら、何度(なんど)もうなずいた。


「ブルーは私にとって、大切(たいせつ)なお友達(ともだち)なの。だから、使役なんてしていないの」

「そんなあ。おいら、もっと(やく)に立ちたい!」

「ブルーは十分(じゅうぶん)、役に立っているじゃない。私、学園(がくえん)へ来てから(たよ)りきりなんですよ」


 二人の()()()()は話に、質問責めをしていた生徒たちは(あき)れたように笑っていた。(ひか)えめで(やさ)しいステラと、自分に自信(じしん)のあるブルーの二人の相性(あいしょう)はよく、(とく)にブルーは人気で、口調(くちょう)真似(まね)する生徒まで出てきてしまっていた。


 そんな二人を、物陰(ものかげ)から見ていた茶髪(ちゃぱつ)で後ろに一つに(たば)ねた生徒、ロジャーは面白(おも)くなさそうに見つめていた。ロジャーの使役している召喚獣は白ヘビで、ロジャーの首元でとぐろを巻いていた。


「なんだよ。ドラゴンなんて使役したからって、皆からちやほやされてさ」

「ロジャーさま、そんなこと言わずに、仲良くしましょう~」


 白ヘビの名前はワッツ。ワッツはそういうと、舌を出してロジャーをなだめた。それでもロジャーはむくれた顔をしたまま、二人を見つめている。

 何を思ったのか、ロジャーは物陰(ものかげ)から出ると、二人のほうへ向かっていった。


「おい、お前。生意気(なまいき)め」

「? あなたは?」

「俺はロジャー。お前、調子(ちょうし)に乗ってるじゃないか」

「調子に乗るほど、私は優秀なところを持っていませんから……」


 ステラはそういうと生徒たちの輪から外れ、バラの香りを楽しみながら庭園を歩いて行った。お昼を食べ終えたステラにとって、休憩時間(きゅうけいじかん)(のこ)り20分ほどだ。


 ロジャーが二人のそばにやってくる(ころ)には、周囲(しゅうい)の生徒たちは離れていった。突然のロジャーたちに、身構(みがま)えたブルーであったが、ステラの一言でその不安(ふあん)一瞬(いっしゅん)()()った。


「ロジャーさん、ありがとう」

「は?」


 ロジャーは目を真ん丸にすると、口をあんぐりと開けて呆然と立ち尽くした。


「私、バラが見たかっただけなのに、いろんな方に(かこ)まれてしまって。(こま)っていたんです。ありがとうございます!」


 ステラは笑みをこぼしながら、ロジャーにお(れい)を言った。


「俺は別になにも! してない!」


 ロジャーは顔を赤くすると、そっぽを()いてしまった。しかし、すぐに()(かえ)るとブルーを(ゆび)さして言った。


「ドラゴンもどきめ! 今に見てろよ! ブレスを()くくらいなら、ワッツでもできるんだ!」


 ロジャーがそういうと、ワッツが後ろから(あらわ)れ、青い(ほのお)のようなものを()き出した。それらはバラを一瞬(いっしゅん)(こお)らせてしまった。


「お前、ワッツっていうのか?」

「僕はワッツ。ロジャーさまに使役された、えっらーい召喚獣さ」

「初めてみた! 氷のブレスじゃん! かっけー‼」


 ブルーは目を(かがや)かせながら、ワッツに向かって手をたたいて見せた。()れ笑いを()かべたワッツは、舌を出して笑った。


「だから、お前よりすごいんだ!」

「そうなんですね! (こお)らせたバラもキラキラしていて綺麗(きれい)。でも、バラさんがかわいそうなので、あまり凍らせないでくださいね」


 ステラはそういうと、ブルーに()(かえ)った。ブルーが炎のブレスを出せば、(こおり)()けるだろうが、バラは()えてしまう。


「おいら、()かすだけは苦手(にがて)だなあ」

「へん! なんだよ、優秀(ゆうしゅう)じゃないじゃん」

「なんだよ!」


 ロジャーはそういうと、ステラに向かって()()()()()()をした。


「ブルーは(すご)いですよ」

「そうだ! おいらは凄いんだぜ!」

(こおり)()かせないやつが、(えら)そうなことを!」

「なにをー!」


 ロジャーとブルーがにらみ合ったとき、バラの氷は一瞬(いっしゅん)()け、バラだけが(うれ)しそうに()れていた。


「もう、何しているの」


 見れば、そこには先ほどステラと友人になったばかりのミミィ、そして使役されている召喚獣のレミィがいた。


「げ、ミミィ……」

「ロジャー、花を凍らせたなんて知られたら、マーサ先生にお(しか)りを()けますよ」

「へん! うるさいうるさい!」


 召喚獣レミィは、白ヘビのワッツをにらみつけた。


「それぞれに得意、不得意はあるものだから、気にすることないわ。ブルーもよ」


 レミィはそれだけいうと、すたすたと歩いて行ってしまった。(あわ)てて()いかけるミミィは、ウインクしながらステラに()()けた。


午後(ごご)の授業が(はじ)まるわ、行きましょう」

「あ、まって。ミミィさん……」


 (あわ)てて()いかけるステラの(よこ)を、ブルーが飛んでいく。白ヘビのワッツは空を()ぶことができないため、飛んで行ったブルーを見つめていた。


「何やってんだ、ワッツ! 行くぞ!」

「あ、待ってくださいよ。ロジャーさま~」


 溶かされたバラだけが、(うれし)しそうに笑っていた。


―おしまい―

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