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使役したい召喚獣と、使役されたくない召喚士ちゃん  作者: Lesewolf
第二章 モントシャイン学園編
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第7話 学校と俺様! 転校生は、屈強な男?

 はるか遠くに存在する人間界(にんげんかい)、その名もヴィスタリア。召喚獣(しょうかんじゅう)の住まう聖星界(せいせいかい)アスタリア。それぞれ共存(きょうぞん)する世界は美しく、人々と聖獣(せいじゅう)たちの(にぎ)やかな世界だ。

 そんなヴィスタリアに住まう少女ステラ。12歳のステラは、病弱(びょうじゃく)で部屋から一歩も出たことが無かった。そんなステラの(やまい)を直したのは、聖獣として自ら現れた召喚獣ブルーであった。


 これはそんな二人が()りなす、勇気(ゆうき)友情(ゆうじょう)、そして成長(せいちょう)の物語。


 ◇◇◇


 大きなローザ・ファルベンの町にある学園(がくえん)、月の光が由来(ゆらい)のモントシャイン学園は、由緒(ゆいしょ)正しき伝統校(でんとうこう)だ。そんな学園に、転校生(てんこうせい)が来るとあって学園は()り上がっていた。(うわさ)によれば、ドラゴン(がた)の召喚獣を使役(しえき)しているという屈強(くっきょう)な男子が転校(てんこう)してくるという。


「あのドラゴンを使役するんですもの、きっと豪快(ごうかい)性格(せいかく)(ちが)いないですわ」


 学園は朝からこの話題(わだい)夢中(むちゅう)だった。また、ある生徒(せいと)はこう噂した。


「ドラゴンに乗って学園に乗り込んでくるんじゃないか?」

「そんな事、前代未聞(ぜんだいみもん)だ! きっと先生が注意(ちゅうい)するよ」

「あら、難しい言葉を知っているのね」


 ――ドラゴン。

 ドラゴンは、古くから物語(ものがたり)伝説(でんせつ)に出てくる、とても大きくて強い生き物だ。大きな(つばさ)で空を飛び、口から(ほのお)()くといわれている。そんなドラゴンが学園の上空(じょうくう)に現れたら、たちまち大パニックになるだろう。


 女子生徒の一部(いちぶ)(こわ)がっているのか、表情(ひょうじょう)重苦(おもくる)しい。


「あ、マーサ先生がいらしたわ!」


 クラスの担任(たんにん)、マーサ先生が現れた。マーサ先生は小太りの……(いな)、ちょっとぽっちゃりした可愛らしい女性だ。ワインレッドのスカートにワインレッドのローブを身にまとい、大きな黒板の前にある檀上(だんじょう)へと上がった。40人ほどの生徒は緊張(きんちょう)した表情で先生を見つめた。


「皆さん、おはようございます」

「「おはようございます」」


 マーサ先生は、皆の顔を一人ずつ見つめ、万遍の笑みを浮かべた。マーサ先生は面倒見のいい優しい先生で、生徒たちにも大人気だ。


「えー。本日は、転校生を紹介(しょうかい)いたします」

「来た来た!」

「待ってました! 転校生!」

「皆さん、お静かに。さあは言ってちょうだい」


 マーサ先生が杖をひょいっと振り上げると、(かる)い音を立て教室のドアが開いた。そこには、茶色の真新(まあたら)しい制服(せいふく)に身を包んだ屈強な男子、ではなく。星の(またた)きのような美しい、ふんわりとした金髪を持つ美少女(びしょうじょ)が現れた。その赤い(ひとみ)は宝石のルビーのように(きら)めいている。

 (かた)には、青い身体(からだ)にルビー色の瞳を持つ子ドラゴンのような召喚獣が乗っていた。首元(くびもと)には、赤いスカーフを()いている。


 思っていた転校生と違い、生徒たちはどよめきながらその美しい少女を見つめていた。そして、大あくびをした子ドラゴンは、少女の顔を真っ赤(まっか)()め上げた。


「えー。それでは自己紹介(じこしょうかい)をしていただきます」


 少女は緊張(きんちょう)したまま、(ほほ)赤面(せきめん)させながら皆へ向かった。


「あ。初めまして。ステラです。こっちは……」

「おいらはブルーだ! えっへん、優秀なんだぜ!」

「ちょちょっと、ブルー!」

「なんだ? 自己紹介だろう? おいらの特技はねえ~♪」

「まってまって。頭真っ白になっちゃった」


 緊張していたステラは顔を真っ赤にすると、ゆっくりと息を()って()き出した。そして、真新しい靴を見つめたままゆっくりと丁寧(ていねい)にお辞儀(じぎ)をした。肩に止まっていたブルーの翼が大きくはためく。


「ステラといいます。ローザ・ファルベンの町から、ずっといった南にあるオーカーケリーという小さな町から来ました」


 なんとか自己紹介を言い終えると、ステラは安心して笑顔になった。その愛らしい表情に、男子生徒は鼻の下を伸ばした。


「じゃあ、次はおいらだな⁉ おいらはブルー! 優秀な召喚獣だ! 好きなことは、食べること!」


 ブルーが()いしん(ぼう)と知り、男子生徒だけではなく、ブルーを怖がっていた女子生徒まで笑い出した。


「なんだなんだ? 皆は食べるの好きじゃないのか⁉」

「空を飛ぶとか、火を吹くとかじゃないのかよ!」


 長い茶髪を(たば)ねた男子生徒が一人、ブルーに向かって指をさした。


「そんなの好きなことでも何でもない! 皆が出来ることだろ⁉」

「ブルー、私はお空も飛べないし、火も吹けないよ」

「ああそうか! 人間は空飛べないし、火も吹けないもんな!」


 ブルーは得意(とくい)げになって青い炎を吐き出した。それを見た男子生徒は興奮(こうふん)し、女子生徒の一部は再び怖がり(おび)えたようにしている。


「はいはい。皆さんお静かに。えー。ステラさん、ブルーもありがとう」


 マーサ先生はそういうと、黒板(こくばん)に『ステラ、ブルー 大歓迎(だいかんげい)』と杖で文字を書き始めた。


「それじゃあ、席はミミィ・ローレンスの(となり)にしましょう。ミミィ、色々教えてあげて下さい」

「はい、先生」


 ミミィは長いツインテールの(みどり)の髪の少女で、手を()ってステラを(むか)えてくれた。ミミィの(ひざ)の上には、猫のような召喚獣が座っていた。細い身体に灰色(はいいろ)毛並(けな)みの綺麗(きれい)な召喚獣だ。


「初めまして。ミミィよ。こっちは召喚獣のレミィ」

「よろしくお願いします。ステラです」

「おいらはブルーだ!」


 レミィは横目でブルーを見つめると、わかりやすいように溜息(ためいき)を吐き出した。ブルーは笑いながら、レミィに話しかけていた。


「お前、レミィって名前になったのか! 久しぶりだな!」

「ええ。あなたこそ、ブルーって名前になったのねぇ」

「あら、レミィ知り合い?」


 レミィはこくこくと(うなづ)くと、首元を前足でかきだした。ちりんちりんと、首につけられた(すず)の音が()っている。


召喚獣(しょうかんじゅう)の住まう聖星界(せいせいかい)アスタリアで、ちょっとね」

「なんだよ、(くも)のわたあめ分けてやったじゃねーかぁ」

「はいそこ、お静かに!」


 マーサ先生の杖がこちらに向けられた。レミィは尻尾(しっぽ)をピーンとすると、そっぽを向いてしまった。ブルーは「なんだいなんだい」とブツブツいいながら、静かにステラの(ひざ)の上に座った。


 その様子(ようす)をニヤニヤと見つめていたのは、先ほどブルーに言い返していた、長い茶髪を(たば)ねている男子生徒だった。



◇◇◇


― 次回、ブルーと大喧嘩しちゃう⁉ 男子生徒の正体はいかに……! ―

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