表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
使役したい召喚獣と、使役されたくない召喚士ちゃん  作者: Lesewolf
第一章 オーカーケリー村編
4/27

第3話 さあ一歩! 冒険へ繰りだせない⁉

 はるか遠くに存在する人間界(にんげんかい)、その名もヴィスタリア。召喚獣(しょうかんじゅう)の住まう聖星界(せいせいかい)アスタリア。それぞれ共存(きょうぞん)する世界は美しく、人々と聖獣(せいじゅう)たちの(にぎ)やかな世界だ。

 そんなヴィスタリアに住まう少女ステラ。12歳のステラは、病弱(びょうじゃく)で部屋から一歩も出たことが無かった。エーテル欠乏症(けつぼうしょう)というマナ不足による病にかかっていた。そんなステラの(やまい)を直したのは、聖獣として自ら現れた召喚獣ブルーであった。


 これはそんな二人が()りなす、勇気(ゆうき)友情(ゆうじょう)、そして成長(せいちょう)の物語。


 ◇◇◇


「おはよう、ブルー!」

「おはよっ! ステラ、具合はどうだい!」

「元気よ、全部ブルーのおかげ!」

「当然だい! おいら、優秀(ゆうしゅう)だからね!」


 ルビーの瞳を持つ青き召喚獣ブルーは、もこもこのウロコのある子ドラゴンのようだ。翼もばっちり生えている。対して、ステラは長く美しい金髪ブロンドの髪を持ち、瞳はブルーと同じく燃えるようなルビーであった。


「ねえ、ブルー。私、家の外に出てみたいのだけれど」

「いいじゃん! 外行こうよ。おいら、人間界ヴィスタリアは初めてだから楽しみなんだ!」

「私は人間界に暮らしていたけれど、外に出たことはないの。だから、とても楽しみです」


 ステラは笑いながら髪の毛をとかし、医師であり親代わりのルートヴィッヒからもらったワンピースに袖を通した。白いワンピースはフリルが付いており、ステラに良く似合(にあ)っていた。


「ステラ、似合うじゃん! おいら、可愛いと思うぜ!」

「ありがとう! それじゃあ、外の世界に出発です!」

「おー♪」


 いざ一歩。前に出ようとしたステラの足は重く、なかなか扉を開けようとはしない。


「どうしたんだ?」

「私なんかじゃ、皆と仲良く出来ないかもしれないです」


 弱気なステラは病弱で寝たきりだったために、友達もいない。唯一(ゆいいつ)話せるのは医師であるルートヴィッヒだけだったのだ。ブルーは聖星界で友達に囲まれていた。ステラの恐怖は、ブルーにはわからず、伝わらなかった。


「その一歩が、冒険(ぼうけん)だと思うんだぜ!」

「冒険?」

「そう! 冒険ってのは勇気がいるもんだから、ステラには勇気が足りないんだと思うんだ!」

「勇気……」


 ステラはワンピースの裾を掴み、わなわなと震えだした。


「わわっ! ステラ、どうしたんだ!」

「勇気、……怖いけれど。勇気を……」

「そうだよ! 勇気勇気勇気! おいらみたいに、勇気でうわーっと外に飛び出そうぜ!」

「ブルーは強いのね。私は怖くてたまらないのです」

「こわい……?」


 ブルーはその時、思い出していた。周りの友達が(みな)召喚され、たった一人残されたことを。

 それは孤独(こどく)であり、恐怖(きょうふ)そのものだったのだ。


「こわい……」


 怖い。ブルーにも、ステラの(かか)えている感情がわかった。それでも、ブルーには疑問(ぎもん)があった。


「なあ、ステラ」

「なに? ブルー」

「今までこの家で、一人で病と闘っていたんだろ? それって、ものすっげえ勇気のいる事じゃないか?」

「え? そうなのかな……」


 ステラは(うつむ)いたまま、(さみ)しそうに(つぶや)いた。


「おいら、聖星界で一人ボッチになったんだ。寂しくて、怖かった。おいらは要らない子なのかと思ったよ」

「ブルー……」

「でも、おいらは今! ステラに召喚されて、召喚獣として仕えてる! おいらはそれが嬉しいんだ♪」

「仕えなくていい。その、友達になってくれたら……」

「友達? もう友達だろう!」


 ブルーはえっへんとお腹を見せながら青い炎を吐き出した。ブルーにとって、友達がどういうことなのかよくわからなかったが、そんなことはどうでもよかった。これから優秀っぷりを見せて、そして仕えていれば、いつかは認められると思ったからだ。


「友達なら、私に仕えたりしないで」

「そ、そんなあ!」

「私ね、ブルーとは仲良くして居たいの。だから、仕えなくても」

「おいら優秀だよ⁉ 何でもできるよ!」

「でも……」


 ブルーはステラの背中を押しだそうと、飛び上がった。ステラはびっくりしたのか、扉を開けて外に飛び出してしまった。


「もう、ブルーったら! ふふふ、あんなに怖かったのに、外に出れちゃいました」

「おいら優秀だもん! 友達の背中を押すくらい簡単だぜ♪」


 ステラは気が抜けたのか、その場にしゃがみ込んで大笑いしていた。ステラの笑みに、ブルーも踊りながらステラの周りを飛び回った。


「まあ、ステラちゃん!」

「ステラ? ステラってあの寝たきりの?」


 周囲(しゅうい)の人が集まって来た。(おどろ)いてブルーの後ろに(かく)れたステラは、ガタガタと(ふる)えていた。先ほどまで笑っていたのが(うそ)のようだ。


「おいらはブルー! 召喚士ステラの召喚獣さ! かっこいいだろう!」


 ブルーはお構いなしに、威張(いば)って見せた。子ドラゴンのようなブルーは(めず)しいのか、周囲の人も大勢(おおぜい)集まって来た。


「凄い、ドラゴンを使役(しえき)してるみたいだ」

「おいら、何でもできるぜ! ドラゴンよりも強いんだい!」


 ブルーの青い炎を吐き出すのをみて、周囲の人々は(おび)えるどころか拍手(はくしゅ)して出迎えた。


「なあ。おいら、ステラの役に立ちたいんだ! ステラは皆と仲良くしたいんだろ?」

「う、うん……」

「まあそうなの? おばちゃんとも、仲良くしてくれるかしら?」

「あたしとも仲良くしてー!」


 ステラは目を真ん丸にしてびっくりしたものの、笑顔で微笑んだ。


「よろしくお願いします。ステラです」

「あたしはアーミアよ!」

「アーミア! おいらとも仲良(なかよ)くしてくれよ!」

「もちろん!」


 二つのお団子(だんご)が可愛らしい、赤毛のアーミアは嬉しそうに微笑(ほほえ)んだ。アーミアはステラと同じ(とし)くらいだ。


「ステラ、うちへ遊びに来ない? お人形がいっぱいあるの」

「いいんですか? 行きたいです!」

「おいらもいきたい!」

「もちろん!」


 ステラはアーミアと時間を忘れて遊んでいた。ブルーはお人形の洋服を着せられそうになり、(あわ)てて飛び回っていた。

 結局(けっきょく)赤いスカーフ、見た目でいえばマントを付けられたブルーは、そのかっこよさに()()れしていた。


 ステラとブルー。二人の生活は、まだ始まったばかりだ!


―おしまい―

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ