第1話 呼び出して! 早く役に立ちたいんだ!
その日、夢にまで見た日だった。召喚獣として聖星界で暮らしながら、先輩方の活動を見て来た。まず名前を与えられ、適切な任務に就く。そして人々のために活動し、感謝されるのだ。そして、頂点である星獣へと至る。
「どんな人に召喚されるのかな?」
「優しい人がいいなあ」
「俺、女の子がいいな!」
成獣と呼ばれる召喚獣は、成人を迎えると召喚士によって呼び出され、晴れて成獣であることが認められる。おいらもそのうちの成獣だ。
「おいら、かっこいい名前を付けてくれる人がいいな」
これまで修行は頑張ってやってきた。自信はある。役目を終えるその時まで、おいらは使役者の役に立つんだ。その為に、聖獣として生まれて来たんだ。
その時、ユニコーンの聖獣に紋章が宿った。その紋章の持ち主が使役者、召喚士である。
「やった! 成獣として認められた!」
「いいなあ! 向こうの世界でまた会おうぜ!」
仲良くしてきた仲間は、次々と紋章が宿り、召喚されていく。周囲の仲間の数は減っていった。焦りという感情を、この時おいらは初めて実感した。おいらが呼ばれないのは、おかしい。
「おかしいね」
「おかしいよ。だって、おいらの紋章はここに宿っているのに。召喚されないんだから」
旅立っていく仲間たちは、任務を終えるまで聖星界には帰還出来ない決まりがある。召喚士と折り合いがつかず、戻ってくる成獣も居る中で、おいらの紋章の持ち主は呼び出す気配すらない。
「あ。紋章だ!」
恐れていたことが起きた。仲間で最後の聖獣に紋章が宿ったのだ。すぐに召喚魔法陣が大地に広がる。
「気を付けて行けよ。きっと星獣になれるよ」
「うん。お前も、きっと呼ばれるよ」
「うん」
最後の仲間が召喚されていく。周囲には誰もおらず、ぽつんとおいらが立っているだけだ。
「どうして」
「どうして呼んでくれないんだ、この紋章の持ち主は!」
「おいら、要らない子?」
焦燥感と猜疑心がおいらの心を支配していく。かっこよくいったけど、何にもなかった。虚無しかなかった。
「こうなったら……」
「裏技を使ってやる!」
おいらは決心した。召喚魔法の裏を突くのだ。召喚士の危機であるのであれば、それを察知して召喚されることもあるのだ。
「おいらを呼ばないってことは、もう危機的状況にあると判断した! いわゆる、ピンチだ! おいらは召喚される!」
紋章が呼応し、召喚魔法陣が現れた。待ちに待った初召喚だ。
「いってきます!」
誰もおらぬ原っぱで、おいらは叫んだ。自信に満ち溢れていた。これで実力を示せるのだと。
そんな決意は、召喚されてすぐに脆く崩れ去るなんて、おいらは思ってもいなかった。