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第33話 不思議な森

 王都を出てから二週間。

 特筆することもなく旅は順調に続き、まあ、街や村では泊まらずに、キャンプ生活を続けているんだけど、ついに最初の目標だった大きな木の絵が描いてあった森の入口に到着したんだけど……。


「道が途切れてるね、でも、ここに馬車が方向転換した後が残っているし、ここから森に入るはずなんだけど」


「草がぼーぼーだね」


「ぼーぼーですの」


 イルの背丈、一メートルほど草が木々の根本を隠すように生えている。


 とりあえず森と草原の境目に向かい、気付いたことは、一ヶ所だけ森に入った形跡が残っている。


 人ひとりがなんとか歩けるほどの獣道。


 それもしばらく誰も通っていないのか、まわりの草が覆い被さり獣道を隠していた。


「ここから森には入れるようだね、茜ちゃん、イルを背負子に乗せて進もうか」


「背負子に乗れるのです! 買ってからずっと乗ってみたかったのですよ! アカネ、お願いしますの」


 出した背負子を背負い、しゃがんだ茜ちゃん。

 その肩に手をついて背負子に上るイル。もちろん前向きになるように座る。

 ちょうど肩から前が見える位置だ。


「あっ、茜ちゃん、イルが落ちないように、ベルトを閉めておこう。身体強化をかけて行くから勢いよく飛ばしてしまうかもしれないでしょ?」


「あっ、そっか、今までは足を持ってたもんね、ベルトは――」


「アカネ、これですの」


 手探りで背後を探り、ベルトを探す茜ちゃんに、イルは乗った時から手に取りリュックを背負うようにして肩に通していたベルトを、茜ちゃんの両肩に垂らしてくれた。


「ありがとうイルちゃん。これね、えっと、腰ベルトを先に固定して、ここに引っ掛けるっ! よし完璧! よいしょ」


 まだ身体強化を掛ける前だけど、難なく立ち上がる茜ちゃん。


「ふおっ! 良い感じですの♪ アカネは大丈夫なのです?」


 イルを見ていたけど、手を放していたのに体がブレる事も無さそうだ。


「うん、大丈夫だよ、おんぶより両手が空くし、ふんっ! ふんっ! うん、これなら剣も振れる」


「長さ、重さ的には木刀だけど……良さそうだね」


 茜ちゃんに渡してある木刀、本当は杖で――。


 ――――――――――――――――――――


 カドゥケウス 聖なる者が持つ杖。聖なる魔法の効果が上がる。聖女、聖者のみ装備可能。


 ――――――――――――――――――――


 なんて、聞いたことあるような杖なんだよね。


 まあ俺には装備できないから収納の肥やしになっていたんだけど、茜ちゃんは聖女だから問題なく装備できた。


 使い方は木刀として使うようだけど……。


 俺も守護者シリーズの小手は、召喚の部屋から脱出する時に装備、触手サイズになって、体に取り込んだままだけど、この体だと武器がね。


「うんうん、準備完了だよ、友里くんは草刈りお願いね」


「おう、まずは湖があるはずなんだよね? そこ目指して行くぞ!」


「「おおーですの!(おおー!)」」


 俺は茜ちゃん達の前に降り立ち、小さなウインドカッターを無数に飛ばし、獣道を広げていく。


 刈った草は、もちろん吸収して足元を掃除していく。


「ユウリ凄いのです、道が綺麗になっていきますの!」


「本当だわ、コンクリートやアスファルトの上を歩いているみたい」


「だろ? 土魔法で平らに均して固めているからね。スケートボードだってこれならストレスなく滑れるはずだ」


 ちょっと魔法の無駄遣いしていると、思わなくもないけど、MPは回復するし良いよね。


 そして茜ちゃん達の少し前を進みながら獣道を整備していて、何か薄い膜を通り抜けた感覚があった。


「えっ、これって結界? あっ、ヤバ! 止まって茜ちゃん!」


 真後ろの少し後ろを歩いていたはずの茜ちゃんとイルは忽然と消えてしまった。


「マジか! ど、どこに消えた! あっ!」


 気配を探ると、ずっと後方、森の入口あたりに気配があった。


 今のは結界で、たぶんやってたゲームにもあった、ダンジョンでスタート地点に戻される罠だ。


 俺は守護者シリーズの小手を装備したままだから、あの召喚部屋にあったような結界をくぐれたってことか。


「とりあえず森の入口に戻らなきゃ!」


 まだ十分も進んでいないところだったので、すぐに森が途切れ、光が差し込んでいるところが見えた。


 そしてそこには背負子を背負い、心配と戸惑いの表情を浮かべた二人が立っていた。


「イル! 茜ちゃん!」


「「ユウリいましたの!(友里くん!)」」


 曇っていた顔がパッと明るくなり、駆け寄って来る。


「ごめん、結界の罠があったみたい。」


 茜ちゃんが俺の前でしゃがみこみ、掬い上げてくれる。

 顔も前まで持ち上げるから、二人の顔がドアップだ。


「驚きましたの、森の中でしたのにお外に出てましたの、無事で何よりなのです」


「ほんとビックリだよ。怪我は無さそうだね、でもさ、これじゃあ森の奥に行けないね」


 イルにつつかれたり、茜ちゃんにはもみもみされるしだけど本当に心配を掛けたようだ。


「怪我もないし大丈夫だよ。それに、森の奥には問題なく行けるよ」


「あっ! 守護者のヤツですの!」


 イルは経験しているからすぐに分かったようで、元気よく手を上げながら正解を言ってくれた。


「守護者?」


 茜ちゃんは知らないから首をかしげ、頭に『?』を浮かべている。


「ああ、召喚の部屋からって歩きながら話そうか」


 さっきと同じように俺が前を歩きながら結界について話をしておいた。


 そして結界をくぐるのに、今度は触手を伸ばし、二人に触っておく。

 ちょっと俺が触手を伸ばした分小さくなっているけど、問題なく結界を越え、森の奥に。


 途中で栗を見つけ、大量に落ちていたのでイガを俺が吸収して、二人には拾い集めてもらう。


 そんな事をしている内に、夕方になったため、少し広く草を刈り、森の中でキャンプをすることにした。

 今日もお読み頂きありがとうございます。


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