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第26話 お絵描き

 冒険者ギルドの雰囲気がザワザワしていたものからシーンと静まり返った。


 帰ってきたのは傷だらけになったギルドマスターと、同じように傷だらけの金谷達三人。


「ん、いるようだな、待たせてしまったが、先程の部屋に頼む」


 そう言って止まらず奥へと歩いていった。


「何があったんだ?」


「怪我してましたの」


 そこへ冒険者が走り込んできて、俺達の疑問晴らす事を言う。


「ギルマスと新人が四人で王都に向かってきた魔物の群れを倒したぞ! その数四十匹のゴブリンだ!」


 は? なんでまたそんな事になってんの?


 ギルド中が奥へ消える四人と、叫んだ冒険者に目を交互に移動させる。


 聞いていると、金谷達はまたやらかしたようだ。

 あの時間から薬草採取の森へ行こうとしていたらしい。


 森の調査から帰ってくる冒険者たちが止めるが聞き入れず、森に向かい、湖と同じようにハグレのゴブリンを痛め付け、今度は倒したらしい。


 まあ、仲間を呼ばれた後だったようだけど。


「どうしましたの? さっきのお部屋に戻りますの?」


「そうだね、とりあえず行かなきゃ駄目みたいだし、話を聞き行こうか」


「は~いですの。よっこいしょっと」


 イルは足が届かない椅子から滑り降り茜ちゃんが立ち上がるのを見上げている。


『うん、金谷君達とはあまり一緒にいたくないですが、この姿の私達じゃバレませんし、行っちゃいましょう』


 立ち上がり、騒がしさを取り戻したギルドの中を横切り、俺達は奥の部屋に向かった。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「あれ? いないぞ?」


「いませんですの」


 ボロボロになった地図がある部屋に入ったんだけど、そこには誰もいない。


『ねえ、まさかまだここで待ってないと行けないのかな? そうならあの地図を描き写しておかない』


「おお! 旅の地図ですの! 私も描きたいですの!」


「はぁ、ついてこいって言われて来たらいないんだもんね。時間潰しにそうしよっか」


 何か描ける物を探していると、執務机の横にあるゴミ箱の中に紙束が入っているのを見付け、チラッと見ると、色々な依頼書みたいだ。


 だけど書くのを失敗したのか✕が書かれていて、裏面は何も書かれていない……これで良いかなと思い、机の上にあった羽根ペンとインクも借りて地図前に向かい二人はお絵描きを始めた。


「大~きな木が~ありますの~♪ こっちは~美味しい湖ですの~♪ お山があって~海もありますの~♪」


「くくっ、イルは絵が上手いね、おお、茜ちゃんも……凄くない? ほとんど縮小版じゃん! いやそこ破れたところまで再現しなくても!」


 イルが描く地図は、俺も昔描いたような絵日記に描かれるような絵だけど、茜ちゃんの描く地図は、金谷達によって破られた所も絵として描かれていて、ちゃんと影まで再現されている。


『ええ~、なんだかこの方が宝の地図っぽくて格好良くない?』


「ふおお! 格好~いい~の~です~♪ そっくり~描けてますの~♪」


「ま、まあ、良いけどさ」


『でしょ? イルちゃんの地図もとっても可愛いですよ、湖にいたお魚と貝の絵も描いたんだね』


 イルの絵を褒めながらも自分の描く手は止まらない。完成に近付く絵は……えっと、モノクロの写真のような出来だ。

 そう言えば保育園の頃から絵が上手かったのを思い出した。


 二人は絵を描ききって見せ合いをした後、残りの紙はゴミ箱に戻し、羽根ペンとインクも戻してやることがなくなり、ソファーに座っていると、開けっ放しにしていた部屋の入口から、怪我の治療をしていたのか、包帯などを巻いた四人が続けて入ってきた。


「すまない、待たせてしまったな。よし、お前達もそっちに座れ」


 四人は出ていく前に座っていた場所に座る。


「カネタニ、自分の実力がまだまだだと分かったはずだ。だがなぜ今回そこまでやったんだ? 私を師匠と呼ぶのなら、しっかり修行をつけてやるのにだ」


 金谷達はおしだまったままだ。


「えっと、俺達の疑惑は解消したのですのね? 何時間も待たされて、俺達は必要ないと思うのですが」


「ああ、手違いがあってな、本当にすまない。今回の事で、謝罪とお前達にはランクアップの申請のため、話をしようと思っていたんだ」


 話は、金谷を追いかける際に、無罪である俺達のDランクへのランクアップをするよう職員に伝えたつもりだったけど、言葉足らずで、この部屋に待っている事を伝え忘れていたらしい。


「そして今も、医療班に捕まってな、また待たせることになってしまった」


「はぁ、まあ、ランクが上がるのは嬉しいですけど」


 頭を下げたギルドマスター。金谷達はふてくされた顔で『チッ』とか舌打ちをしてる。


「Dランクにはこの後すぐに手続きをする。だが、今回は単独パーティーでの、八十匹以上の討伐だ、Aランクに申請をしようと思ってな、悪いとは思ったが待ってもらった」


『友里くん! 罠です! Aランクになっちゃうと、強制的に依頼を請けないと行けない時があります! ランクはCもいりません! Dランクで十分』


 確か小説の中だとCランク止めとかあるくらいだ。Aランクともなれば、貴族や王様とかから断りようのない依頼が舞い込む設定だったよね。


「俺達はDランクで良いです。数日後には王都を出るので」


「本当に良いのか? 高額の依頼を請けられるようになるのだが」


「師匠、こう言ってるのです、こんな奴らにはDランクまでで良いでしょう。オラ! てめえらはもう用無しだ、さっさと出ていきやがれ!」


 ええ~、またやらかしたんだろ? 金谷のその態度大丈夫か?

 今日もお読み頂きありがとうございます。


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