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第20話 湖へピクニック

「見て! 湖が見えてきたよ!」


 そう言って手を繋いだまま駆け出すイルと茜ちゃん。

 林を通り抜ける小道を抜けた先に見えたのは、言った通り湖だ。


 街から二時間もかかったけれど、湖は光が反射してキラキラと輝き、林を抜けると、その全貌が見えてきた。


「へえ。思ってた通り綺麗だね」


「キラキラですの! お魚いっぱい捕まえますの!」


「よーし、私も頑張るよ! そのために塩を買ってきたんだもん!」


 うん。それは楽しみなんだけどね。君達は薬草採取の依頼を忘れてないかいと聞いてみたい。


 林を抜ける手前から、鑑定で見ていると、結構な数の薬草が生えているのを見つけたから、少し集中すれば、いつもくらいの量は昼前に――。


「アカネ、早く行くですの! お魚が待っているのですよ!」


「うんうん、あっ、イルちゃん! そんなに慌てると転けちゃうよ!」


 ――って、集められると思ったけど、まあ、楽しんでからで良いかな。


 人が歩く分だけ茶色く草が生えていない、それだけの道をトテトテと走るイルのスピードに合わせて走る茜ちゃん。


 俺はイルの頭の上に乗り、緩やかな風を感じて、この世界で生きてくなら、この二人は絶対に護って、どこかをのんびり旅するのも良いなんて事を考えてたんだけど。


 俺は茜ちゃんに飛び移り、幻影(ミラージュ)をかける。


「ほへ? どうしましたの?」


「くそっ! なんでここに来てるんだ! ちょっと左のずっと先! あれを見て、ゴブリンだ」


「誰か戦ってます! 助けに――嘘っ!」


 イルの頭の上から微かに見えたんだけど、茜ちゃんに飛び移り見えたのは、俺達がいる道から左に外れた二百メートルほど先、湖の畔でゴブリン二匹を取り囲む三人。

 金谷と取り巻きの二人だ。


「ゴブリンは二匹か、微かだけど叫ぶ声が聞こえる」


「友里くん。もしかすると――」


「仲間を呼んでると思う……っ! 後ろっ! イル、茜ちゃん、後ろの林から気配がするぞ! それも昨日より大量だ!」


「ほへ? またゴブリンが来ますの? ユ、ユウリ、大丈夫なのです?」


「やるしかない! 茜ちゃん、もう少し林から離れて湖の近くへ!」


「はい! イルちゃんおんぶです!」


 イルに背中を向けてしゃがむ茜ちゃん。

 イルはすぐさま茜ちゃんの背中に飛び乗ると、グンっと立ち上がるタイミングで茜ちゃんに身体強化をかける。


「にょわっ! ま、また! でも、これで早く走れます。いきますよ!」


「はいですの! よーいどんなのです!」


 くそっ! ゴブリンはいつもの森にいると思い、まったく警戒してなかった。


 走り出してすぐに林から飛び出すゴブリンが見えた。


 その数は五十を超えていそうだ。

 それにゴブリンだけじゃない。数匹だけど灰色の肌をした、豚っ鼻がいる。


 鑑定の結果、オークだと言うことが分かる。


「オークもいるぞ! 茜ちゃん、ここで良いから止まって! 迎撃だ!」


 林から百メートル。

 金谷達とも百メートルの位置で止まってもらい、魔法を唱え始める。


「ウォーターランス! ウォーターランス! ウォーターランス!」


 茜ちゃんには一応ポーズだけだが、ゴブリン達に向けて手を伸ばしておいてもらう。


 ウォーターランスが発射され、まっすぐゴブリン達に向かい、先頭の一匹目に突き刺さり、そのまま体を抜けて後ろのゴブリン達にもウォーターランスは届いた。


 三匹は一発で倒せるようだ。


「よし! ウォーターランス! ウォーターランス! ウォーターランス!」


 それでも数が多いため、少しずつ間合いを詰められている。


 最初、七十メートルは開いていたのに、今はもう五十メートルを切ってきた。


「ユウリ! 頑張ってですの!」


「おう! 手はもう良いからイルをしっかりおんぶして、少しずつで良いから下がって! 間合いが近すぎる!」


 俺の言葉に茜ちゃんは、イルのおんぶをしっかりと腕を回して担ぎ直し、身体強化の効いた体でバックステップしてくれる。


 グン、グンと後ろ向きに下がってくれるため、詰まり始めた間合いが縮まなくなった。


 だが背後で『なんだありゃ! 逃げんぞ!』『うわぁぁー! 金谷くん待って!』『おいてかないで!』と、アイツらもこの状況に気付いたようで、逃げ始めたようだ。


「ってか、倒してから逃げてくれよ! ウォーターランス!」


 背後に一発だけ飛ばし、ヨタヨタとこちらに向かってきていたゴブリンを倒す――が、二匹を突き抜けたウォーターランスは逃げた金谷達を通り越し、十数メートル先で地面に突き刺さった。


 アイツらに当たらなくて良かったけど『テメエ! 何しやがる!』『そんなことより早く逃げよう!』『冒険者ギルドに報告すればアイツら終わらせられるから!』なんて――くそっ!


「好き勝手言ってるけど、今はこっちだ! ウォーターランス!」


 長く戦っていた気もするけど、たぶんまだ五分もたってない。

 残りはゴブリン五匹と、オークの残りが二匹だ。


 ここまで来て一気に近付いてこようとせず、遠巻きに俺達を湖の畔に追いやって来る。


「ゆ、友里くん、もう後ろが無いよ、私も攻撃魔法が使えたら少しは役に立てるのに」


「聖女は回復系だから仕方無いって、ここは俺に任せておいて、大丈夫、次は逃げられないから――ウインドカッター!」


 透明な三日月が俺達の上に浮かび、シュンと微かな音を立てた次の瞬間、避けることもなく、オークとゴブリンに吸い込まれ、背後に抜けていった。

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