1話 学校へ行こう(予定)
日本の東京。
そこのとある路地裏に、クレーターをつくって降り立った人間。否。
「【解析】全体損傷率0%。無傷。生存。さすがは私だ」
と、一人で拍手をする人間の様な機械。
[コマンドシリーズ=Ω・ラインツ]である。
「【考察】現在気温が当地域の年間平均気温を大きく下回る事を確認。【断定】現在、季節は冬」
そう、ラインツはたった今研究所から脱出したばかり。行くあても寄るべもない。
そして機械に低温は天敵である。それは勿論、コマンドシリーズも例外無く——
「【観測】降雪を観測。自立型兵器に低気温は天敵。【推奨】降雪が止むまでの機動停止を推奨。受諾する」
その一言だけを残し、ラインツは機動停止状態に入った。
⬛︎⬛︎⬛︎
「ーじょうぶ?大丈夫?」
しかし、その眠りはなぜか急に温度が暖まったことによって止まった。そして、またもや白い天井を見て、嫌な既視感を覚えるラインツは真っ当な疑問を投げかけるが——
「【不解】ココ、ドコ?」
「!…目、覚めた?」
「【不解】誰だ?」
「よかった!目、覚めたんだね!?何があったの!?」
その疑問は、全く聞き入れてもらえず——
「と言うかその服何!?白衣!?若そうだけどお医者さんなの!?」
逆に相手の名前も分からない女性の質問がどんどん増えていく。
「【了承】質問には答える。だから止まって。ストップ」
その言葉を聞き、女性は一人で盛り上がってしまったのが恥ずかしかったのか顔を染める。
「ご、ごめんね。さっきまで気を失ってたのにこんな喋りかけちゃって。」
そして、先程の問いを思い出す様にして——
「えっと、そう!ここが何処かってね、ここ、私の家なの!それで、私が誰かって言うの、名前は玉橋藍舞!普通の教師!他に何かある?」
「【不解】私は何故此処に?」
「えっとね、君が倒れていた所が帰り道から見えて、それで不味いんじゃって思って、家近いし暖めてあげないとって思って、それで!」
ラインツはそれを聞き、『理解』とだけ呟き、たっぷり10数秒考えた挙句——
「【助言】言いたい事は多々あるが、女性が部屋に男性を上げるのは危険だ。【推奨】家に入れずに暖を取らせる方法の模索」
「確かにそうだけど…って、その喋り方、何?なんかこう…ロボットみたい」
その言葉にラインツは少し目を見開く。
「【驚愕】まさかその答えに辿り着くとは…実は阿呆じゃない?」
「何かとても失礼な事言われた用に感じたんだけどそう感じたのは私だけなのかな?初対面だよね?そうだよね?って言うか『その答えに辿り着くとは…』って何!?すごい意味深な事言ってたけどどう言う事なの!?」
怒涛の勢いで会話、いや、もはや一方的な話し掛けによって少し引いたラインツは、しかし質問にはしっかりと答える様で——
「【解説】私は人間では無い。兵器。」
それを聞き女性。藍舞は数秒放心し——
「そっか。そうなんだね」
と、笑いながらも目だけは相手の顔色を伺う様にしている所を見れば、幾ら人の心情に疎いラインツでも相手がどんな事を考えているかぐらいわかる様で——
「【誤解】【焦燥】違う。ちょっと待て。断じて違う。厨二的な病症では無い。だからそんな目で私を見るな。笑うなら目も笑え。」
ラインツとしては事実をを言ったまでだが、現代日本でそんなター○ネーター的な事、無いのだ。
「うん。大丈夫だよ。お姉さんそう言うの理解あるからね」
まあ要するに、信じて貰えるはずがない。
「【提示】分かった。仕方がない。信じ無いと言うのなら、証拠を見せるまでだ。」
と言い、ラインツは目を伏せる。
「【読込】右腕装定型SNo..002」
「いや、大丈夫。分かってるから……ね…......へ?」
先程とは一変、慈愛の笑みで応じる藍舞は、ラインツの外見の変化からその顔は驚愕に変わる。
「【質問】これで少しは認める気になったか?」
目の前で男の右腕が明らかに人間の、もはや生物のものでは無いと分かってしまう様なものになると、現代人は——
「え...あ...ちょ...な、なにそれ?なんかこう、すごくメカメカしいというか、近未来感の溢れ出るユーモアな仮装だね?でもハロウィンはまだまだ先だよ?」
こんな感じで、自然と現実から目が逸れてしまうのだ。
「【証明】信じれないなら触れば良い。仮装などでは無いと嫌でも分かるはずだ」
「触っても大丈夫なのこれ?剥がれたりしない?」
「【嘲笑】まだ認めないか、何でも良い。叩くも引っ張るも好きにするが良い」
「さっきから何でそんな煽るの?私の事嫌いなの?そうなの?てかもう引っ張るよ!引っ張っちゃうよ!良いんだよね?剥がれたりしても知らないよ!えいっ!」
藍舞は言われた通りに引っ張る。が——
「ほ、本当に取れない…」
ラインツの右腕は一切反応がない。取れも、壊れも、剥がれもしない。
「【証明】どうだ。先述した通りであろう。これで信じる気になったか?」
「ま、まじで?」
未だに目を疑っている藍舞だが、本人も薄々気付いてきたのか——
「【肯定】まじもまじ。大マジだ。」
「oh…」
——……まじか...——と、現実が視野に入ってきた。
「【失望】やっとか。やはり阿呆なのか?」
「いやだから辛辣!毒舌が過ぎるよお姉さん泣いちゃうよ!?」
——やはり先程の鋭さは偶然だったがな…——と、そんな失礼な事を考えながら話していると、ふと藍舞がこんな事を言い出した。
「人間…って言うか、生物じゃ無いって事は分かったんだけど、何であんな所にいたの?」
「【質問】気になるか?」
「いやもうなんか君のこと知りたくなっちゃった。面白そうだし」
ラインツとしては個人に話す事のデメリットもない為、起きた事をありのまま話す。
「———と、言う事で、私は低気温になると電力消費が早くなってしまう為、あそこで起動停止していたんだ」
ラインツによって起動停止までの全てを聞かされた藍舞だが、流石に気になる事があったようで——
「ちょっと待って、て事は、これから人類たくさん処分するぞマシーンが沢山人間を殺すって事?」
そう。全てを聞いたという事は男の計画も全て聞いたと言う事だ。そしてそれが本当だとすれば、かなり不味い状況、しっかりたっぷりとっぷりと人類の危機なので、先ほどとは違い、意識的に現実から目を背けるが——
「【肯定】そう言う事になるな」
ラインツは事実を言ったに過ぎ無いので、否定などするはずが無い。そして、ラインツが兵器だということを理解して居る今、藍舞もラインツの言う事を信じる。
「マジかー。死にたく無いなー。てかさ、君はそれを止める為に来たんだよね。なら、今からでもどうにか出来ないの?」
「【否定】流石に私も同機種23機も相手に出来るほど強くない。研究所を攻めるのは悪手だろう。相手が襲撃して来た所を迎撃した方がまだ良い。侵入すれば十中八九全兵器を相手にする必要があるが、コマンドシリーズの強さを高く評価しているあいつは、おそらく地上を襲撃するときはコマンドシリーズ一体か、その他の自立型兵器数機だ。多少の犠牲が出る可能性はあるが、私が居なくなり抵抗できなくなるよりは良いだろうから、やはり迎撃の方が良い。そして、私の今しなければいけない事はもう一つ。逃亡した兵器との合流だ」
( 機体名[コマンドシリーズ=+・ヘアハーリング]。戦闘になる可能性も十分に有るが、一応会っておいた方が良いだろうしな)
そう。[コマンドシリーズ=+・ヘアハーリング]。ラインツを除き唯一研究所から逃げた兵器。今思えば奴も男の目的を知った故の逃亡の可能性も十二分に考えられる。もしそうならば、仲間に引き込むことができるかもしれない。そんな事を考えていると藍舞が口を開く——
「ふーんそうなんだ。じゃあさ、契約をしない?」
と、突拍子も無く言い出すのは、流石にラインツも予想外の様で、少し驚き、しかし直ぐに冷静になり質問にする。
「【質問】契約だと?内容を言え。利点があるなら考えよう。」
「了解!内容は簡単。家使って良いから私守って。以上!」
その言葉を聞いた瞬間、元より熱など無かった目が更に冷えた様な目になる。
「【質疑】こちらにメリットがない。住処など必要無い。電力も遠隔で直接発電所から奪る。」
「サラッとやばいこと言うね。電力不足のこの世の中に…。んまあ良いのよそんな事は。メリットはそこじゃ無くてね、ここにいれば人間と沢山触れ合えるし、人の心とか感情が理解できる様になるかもよ?」
しかし、その言葉を聞いてもラインツは靡かない。
「【失笑】私はそんな物欲しいなど言っていないが?」
「ぅえー何でよー!漫画とかだと『心が欲しい』とか言うんじゃ無いのぉー?」
「【否定】言わない。が、まぁ貰えるのなら貰っておきたいな。」
「言質取った!今欲しいって言った!はい契約成立ー!」
「【否定】言っていないが…まぁわかった。確かに善意で私を家に連れ込んだのにこちらからは何もしないと言うのは流石に良く無いか。」
その言葉を聞き、藍舞は笑みを深め、ガッツポーズを取る。
「やったー!ボディーガードゲットー!」
「【微笑】現金なやつ。と言うものか。」
そして藍舞はすぐに冷静になり——
「善は急げだよ!君には人間社会に溶け込む為に何個かやってもらう事があるんだよ!」
「【質問】何をすればいいんだ?」
「まず一つ!一つ目は他の人にはなるべくこの事は言わない!って事!」
「【疑問】何故だ?」
「話を聞くに、そいつらミサイルでも無い限りかすり傷も付きそうに無いじゃん?だから警察とかに言ってもあんま意味なさそうだし信じられないだろうし。それに、もし同じ研究所の出だって知られたらありもしない無い罪で捕まりそうだし」
「【否定】ポータルがあるんだ。脱走など簡単だ。」
「そうだけど顔晒されたら外歩けないし、君匿ってるって知られたら私こそやばいもん!」
「【肯定】まぁ...確かにな」
「それで次!その話す時文頭に着く隅付き括弧に入ってる二字熟語をなくす!」
「【】こんな感じか?【】と言うか文字に起こさないと気づかないのによく2字熟語が隅付き括弧に入っていると分かったな。そしてよく『【】』の正式名称が隅付き括弧だと知っていたな」
「そうでしょーどややぁ。…ってそうじゃ無くて!隅付き括弧自体も無くして!」
「こうか」
「そう!それ!そんで次は一人称!『私』でもいいけど『僕』か『俺』にした方が良いよ!...一人称同じだと誰が誰かわかりにくいし...」
「何か言ったか?」
「何でもぉ〜」
「?...まぁいい。了解した。俺にしよう」
「うん!そんな感じ!後は、そうだね〜よし!学校行こうか!」
「了か…は?」
ラインツは何故そんな所に行かなければならないのかと考えてみるが、どう考えても一つの答えにしかたどり着かなかった。すなわち、
——やはりこいつ阿呆なのか?——と。
玉橋藍舞
黒髪ロング!身長は...160後半くらい
好きです(唐突)
[コマンドシリーズ=Ω・ラインツ]
黒髪。多分。後から変わるかも。身長は...170後半くらい
イケメンです。というかコマンドシリーズは研究所の男の意向で顔が整っています。
受験勉強の合間に書いてる作品なんで投稿遅いのは勘弁してくだせぇ