①黙示録は開かれた-1
まずは、こちらの作品を手にとって頂き、ありがとうございます。
(web小説でその表現が正しいかはさておき)
初めての投稿になります。
私生活との兼ね合いもあり、投稿遅くなるかもしれませんが、ご容赦下さい。
お楽しみ頂ければ幸いです。
元々、界はそこに在った
そこに、だた、在り続けていた
"彼"は界にて【始まり】を生み
【始まり】は光へと浮かび、闇へと落ちた。
光と闇から羽が生まれた。
一つは白く、一つは黒く。
二つの羽は交わることなく、界を染めた。
染まりし界にて穢れは満ちて
彼はついに【終わり】を生んだ
【終わり】は隔たりを生み
隔たりは一つの界を
四つのそれへと姿を変えて
[彼約聖典――四界創世の章より抜粋]
週に一回行われる、定期礼拝の日。教会に、多くの人が集まっていた。その中心、祭壇の少し前に教卓が設置され、そこに神父が立っている。
黒いボーラーハットを被り、十字架の意匠の付いた、これまた黒い神父服で首元まで覆っている。ここまでなら普通の格好。ただ一つ、他と違うところを挙げると、神父はあどけなさの残る少女であった。しかも、15歳だというのにとても背丈が小さい。童顔も相まって、ぱっと見であれば、2つ3つほど幼く思えてしまうだろう。
群青色の長い髪は、先端にオレンジ色のグラデーションがかかり、夕焼け空を連想させた。
丸メガネをかけた顔立ちは、綺麗、とまでは言えないものの、愛嬌ある可愛らしいものであった。ただ一つ惜しいのは、左あごの端に、細長い三角形のかたちをした、傷があることだろうか。
「そう、大天使や大悪魔でも、ボク達と同じ。大事な儀礼に遅刻したり、お財布を無くして大慌てするのさ」
「いやぁ~、ちぃと俺には難しいなぁ。もっと良い話あんだろう!? 例えばラファとセムが酔って、裸で街中を踊る奴とかよ!」
「子供居るんだからダメだよ。そもそもセクハラ。次言ったら出禁だよ出禁」
「ねぇ、先生。"せくはら"ってなぁに?」
「放っといて良いと思うよ。ていうか、放っといて! 後でアップルパイ作ってあげるから!」
「わーい!」
最初の内は「この文章の意味はこうだ」とか、あるいは「この文章について、実際の歴史ではこうだった」とか、至って真面目なものであった。
しかし、このサラ呼ばれた女牧師、元々話好きだからか、段々と話の脱線が恒例となっている。礼拝の後半には無関係の雑談に、少しだけマトモな質問が混ざるだけ、といった有り様。
ニコニコと楽しそうに聖典を読み上げる彼女の様子は、一般的なイメージの神父からは少し外れていて、厳格で真面目な礼拝と言うには、だいぶ外れていた。
ただ、彼女があまりにも明るく、楽しそうに話すものだから、それを聞く人達も、つられて笑っていた。時には呆れ返るような質問が飛び出てて、それに彼女がおどけて答えるのだから、更に盛り上がった。その場の全員が笑いながら、時間は過ぎていく。
日が丁度、空の真ん中に差し掛かろうとしたとき、教会の鐘の音が響いた。サラは本を閉じ、はにかみながら言った。
「うん、今日はこの辺で」
礼拝堂のステンドグラスから、光が差し込み、彼女の背中を照らす。席にいた者達も立ち上がり、帰り始めた。サラは眼鏡を外して小箱へ入れると、荷をまとめ、祭壇を離れた。奥にある書斎へ向かう途中、6つか7つくらいの少女が話しかけてきた。
「あのね、サラ先生。今日のお話で、聞きたいことが、その……あって」
話し掛けるのは初めてで、幼い少女にとっては怖いのだろう。顔は強ばり、話しかける様子も、どこか恐る恐るといったところだ。サラは立ち止まり、しゃがんで少女の方を向いた。気持ちを察したのか、怖がらせないよう優しい声で話しかける。
「ん~、どうしたんだい? 大丈夫だよ〜」
「先生のお話だと、神様が世界を作って、その後、天使と悪魔を作った……ここまで、合ってる?」
「うん、合ってる、合ってる」
サラは相槌を大きく打って、微笑んだ。気を良くした少女は声を一段と上げて話し続ける。
「でも、天使と悪魔は仲が悪くてケンカをしちゃって! だから、神様が怒って世界をバラバラにしちゃった!!」
「そうだね。君より大きくても知らない子もいるのに凄いねー」
「えへへ」
褒められて嬉しいのか、小さな少女が照れくさそうに笑う。そんな少女へ微笑みながら、サラは眼鏡の縁を触って位置を整え、優しい声で少女へ問いかけた。
「それで、聞きたいことは何かな?」
「先生、世界は4つある。って言ってたよね。でも、わたしは天使と悪魔、それから人間の世界の3つしか知らないの。4つってことは、もういっこあるの?」
「うん、そう。『白砂界』といってね、三つの世界の間にあるんだ。誰も住んでいないから、ほとんど聞かないよね」
「誰も住んでいないの!? どうして??」
「『はくさ』とはね、白い砂、なんだ。世界のすべてが砂で、他にはなーんにもないんだ」
「へー、そうなんだぁ! 砂だけなんだぁー!! そうそう、それからね………」
その後も少女は次々と質問を投げかけていき、サラは一つ一つ丁寧に答えていった。そうして、一通りの質問が終わると、自分の疑問が解決したこと、それから、サラと沢山話が出来たことに喜んで、少女はその場で小さく跳ねた。
「わたし先生のお話聞くの大好き!! どうして、色んなことを知ってるの?」
「ん~、そうだねぇ、本を沢山読んだっていうのもあるけど、ボクにも"先生"がいた、っていうのが一番かな」
「先生の、先生!?」
普段の礼拝でも聞いたことのない話だ。興味津々に身を乗り出した。
「そうそう。ちょうど君と同じくらいのとき。優しくて、とっても強くて、綺麗だったなぁ~」
「わたしも会ってみたい!! どこにいるの?」
「……ごめんね。すぐには会えないかも」
「えー、そんなぁ。じゃ、じゃあ、町に来たときに教えて!!いい!?」
「そうだね。……また、会えたら」
サラは少女の頭を撫でると、静かに答えた。今までの様子とは異なり、どこか寂しそうであった。
そのとき、教会のドアが大きな音を立てて勢いよく開いた。
「サラ君っ、いるか!?」
軍服を来た青年がそこには立っていた。額から汗を流し、息を切らせている。サラは少女の頭から手を離すと立ち上がった。
「はーい、ここに。その様子じゃあ、またボクの出番ってコト?」
「ああ、すぐに来てくれ!」
サラは手を顔の横に上げてくすりと笑うと、ゆっくりと立ち上がった。
「市場かい?それとも、検問所?良いさ。どうせアイツも……いるんだろう?」




