表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

第1話   クラス替えと4人の女子

 プロローグにも記した通り、見た目なんて人それぞれだから、残酷なのかそうでないのかもまた人それぞれであることに変わりは無い。けど、あえて、言わせてもらうなら、これは残酷である。グロイとか気持ち悪いとか、そういう類の残酷さではないことは前提条件として挙げておくけど、その酷さはつい、目を背けたくなるようなものかもしれないということを、知っておいて頂きたい。

 

 いい加減読者も飽きてきただろうし、そろそろ話を進めないと本気で危ないと思ったので、私は語りに移ることにした。

 

 

 

 クラス替えではしゃぐのは、子どもの間だけ。そう断言できる私は、クラス発表の張り紙を見ながら、一つ、溜息をついてるところだった。

 中学2年になった私は、まだ13歳。親の1/3くらいしか生きていない。そして、世界の1/30も理解してないだろう。けど、私の目に今もなお写っている世界は、酷く、そして残酷だ。


 「何がクラス替えだ・・・馬鹿らしい・・・そんなことで一喜一憂してはしゃぐなよ。」

 鬱陶しいったらありゃしない、と1人クールに張り紙を見る私。

 2年-----1組だ。

 至極、どうでもいい情報だと、その時、(その時は)思ったけど・・・・・



 担任は変わらず、クラスの何人かが変わった。2年連続で同じ、なんて人もいる。

 クラス替えの後のお決まりであるかのように、担任が自己紹介をするよう生徒に促した。いや、お決まりなんだろうけどさ・・・・・。嫌がったってしょうがない。


 私の番。

 静かに立ち上がり、一呼吸。

 

 「竹中翼です。1年間よろ」


 しくお願いします。と、最後まで言い切る前に、背中に痛みを感じた。

 コンパスで背中を刺された。しかも3cmくらい深く。


 「ん?どうした?竹中。」

 

 「いえ・・・何でもないです・・・1年間よろしくお願いします。」


 今度こそ最後まで言い切り、私は席に着いた。背中には痛みと血液が残ったけど・・・・・

 

 私の自己紹介はそんなだった。


 


 私は、世間一般的に言うと、いじめを受けている。あくまでも世間一般では、というだけで私はいじめられているなんて微塵にも思ったことが無い。っていうか、思えないのである。

 いじめという概念は、被害者がいじめられた、と感じることによって成立するものであり、この定義から行くと、私のケースはいじめには分類されないそうなのだ。

 

 そんなことは、どうでもいいことだけどね、と私。

 世間の目なんかどうでもいい。問題なのは自分がどう感じるか、どう思うか、であり、一般という概念こそ、そもそも必要が生じてないんだ。


 とま、こういう感じで、普通の中学生からバスケットボール5つ分くらい外れた思考を休み時間に張り巡らせている私は現在、昼休みの教室にて、窓の外を眺めていた。


 眺めていた。

 眺めが。

 消える。

 かわりに、一人の人間の姿。


 「ねぇ、竹中さん。」

 

 女だった。同じクラスの女子。かすかに見覚えアリ。


 「何?」

 

 「私と友達にならない?」


 「はぁ?」

 何誘ってんの?


 「何であんたと友達にならなきゃいけないの?」


 「な、何でって、言われてもなぁ・・・・友達になりたいから・・・」


 「冗談いいよ。あ、もしかして、あんた知らないの?私、いじめられてるらしいから、近づかない方がいいよ。一緒にいじめられるから。」

 

 「やっぱりいじめられてるんだ・・・」


 あれ、これは予想外。

 知ってて何でこんなところに来た。

 言っとくけどこっちはあんたなんか信用してねぇぞ!疑心暗鬼真っ盛りだからね。

 どうせ罰ゲームかなんかでしょ?


 

 キ~ンコ~ンカ~ンコ~ン・・・・・・



 「あ、チャイム鳴っちゃった。また後で来るね。」


 言って彼女は、自分の席に戻っていった。

友達になろうってのに名乗りもしないなんておかしいよね。

あのコ、名前なんていうんだっけ?・・・・・




 

 そんな思考を行った、2時間ほど後の話。


 「ちょっと来て欲しいんだけど。」


 唐突に現れたそのコは、唐突に私の手を引っ張り、連れて行く。


 カツアゲか、トイレで殴りこみか、この2つくらいだろう。


 連れて行かれた先の教室では、3人の女子が待機していた。


 「何?カツアゲ?言っとくけど私、今日財布持ってないからね。」

 

 一応先手を打っておいた。何事も先制パンチが必要だって、昔誰かが言ってたような、言ってなかったような・・・・・

 と、私の言葉に、4人とも若干のうろたえがあった。効果はあったらしい。


 「違うよ。私たちは、竹中さんのミカタだよ。」


 やっぱり効果は無かったらしい。私のパンチはまだまだ未熟のようだ。帰って鍛えておかないと。

と、と、え?ミカタ?

 

 「ミカタ?何ミカタって?ものの見方?日本の味方?」

 

 見ると、4人のうち、1人がすごく笑いをこらえている・・・そんなに面白かったのか?



 「私たちは、イジメの味方だよ。」


・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・

それじゃイジメに加担してるみたいだけど・・・


 「あ、菜々子、今のだと、私たち悪者みたいだよっ。私たちはイジメ被害者の味方だよ!」


 なんと!私が感じていた疑問を見事に解決してくれた!この人はきっといい人だ!ぜひ!友達になりたい!なんて、疑心暗鬼しつこいかもの私が思うわけがなく。

 まぁイジメ被害者の味方ということなら、私の味方ということになるのだろう。あくまでも世間一般での話だけど。


 

 「私たちは、いじめられてる人たちを救う活動をしているグループだよ。」


 言って、菜々子というその女子は、正義の味方よろしく、腰に手を当てる決めポーズで続けた。


 「いじめなんか、絶対許さないからね。」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ