変編5話 10月31日『神火神楽』
体が腐り、そして死んだ少女に手を合わせてからもう1人の少女へと向き直る。
「さて、次はあなただけど?」
「やんないよ、私は」
「あっそう、敵討ちとかはしない人なのね、あなたらしいわ」
「ありがとう、いい悪意よ」
にっこりと笑ってつい1ヶ月ほど前の9月25日に行方不明になっていた朝金奇異は言う。
「ねぇ、あなた一週間もどこに言っていたの?」
「ここじゃない別世界よ。急に召喚されて驚いたわ」
・・・・・・・・・・・・嘘をついているようには見えない。
つまり本当に異世界に行っていたのだ。
まだ私が幼い頃にこの地球とは全く別の場所、行きたいと思っても行ける場所には無い別世界があるとは聞いていた。
そこにこの子は行っていたのだ。
多分クラス全員で。
「ねぇ、あなたのいた異世界にあなた以外の3年4組の生徒はいた?」
私の丁寧な質問に、「は?なんで私があなたごときに答えなくちゃいけないの?」と悪意で返答される。
ああもうめんどくさい。悪意を持って質問しなきゃいけないのか?
「あのね?あなたに拒否権はないのよ?命令、答えなさい」
「はっ!自分の質問に答えないからって命令とか、まるっきり私の人権無視のことをいってくれるじゃない。いいわ、その悪意に免じて答えてあげる。いたわ、クラス全員があの異世界に」
やっぱりか、くそ、こんなめんどくさい奴と神楽が似ているなんて、ものすごく腹が立つ。私の目から見れば違いが多いって言うのに、そりゃ姿は似ているけど、話すこと成すこと全部神楽とは似ても似つかないわ。
でもまだ諦めちゃダメだ。まだ訊き出さなくてはならないことがある。
「ねぇ、あなたの他に戻ってきている人って何人いるの?」
異世界がどんな場所かは知らないが、大体地球の中世ほどの時代で、高い確率で戦争が起こっているらしい。
そんな世界で果たして何人、生きて戻ってきたのだろうか。
「しーらない」
私の心配を無視するように、軽い口調であっけらかんと答える。
本当にどこまでこの人間は。
「答えなさい」
私が殺気を出し、威圧するが、奇異は飄々とした様子で、一切応えていない。
「はっ!その程度の威圧、あっちの世界じゃ何度も食らったわ、今更怯えられないわ」
でも、いい悪意だから答えてあげる。
奇異の上から目線の言葉にものすごく腹が立つが、具体的には裸に向いてどこかに吊し上げてやろうかと思うほど腹が立つが、答えると言っているのだから怒りは抑える。
「私の他に、確実に戻ってきていると言えるのは1人だけ、フェンの付き人として日々大変な思いをしている出席番号33番夜咲假偽だけよ」
「確実にってことは、その夜咲ってやつだけはあなたと一緒に戻ってきたのね?」
「そうそう、そう言うことだよ、他のみんなは知らない、最期にあったのはつい1ヶ月前の9月27日にこの世界に戻ってくる前ね。その時には、私と假偽のいる今日狂教会と、まともに王城に召喚された他クラスメイト全員との殺し合いの時だから、もしかしたら私たち2人以外は生き残ってないかもしれないわ」
クソが、たった一回話しただけで情報量が多すぎる。こいつとその夜咲ってやつは1ヶ月前、失踪してすぐに戻ってきていて、今日狂教会というこの世界にも一部で悪評を轟かせている教会メンバーと他のクラスメイトを殺そうとしたって、なんだそれは。本当に情報量が多い!
それに、気になるのはこいつをこの地球に戻したのは誰かってことで、そんなの、わたしにもあのクソババアにもできないし、妹のことしか頭にないシスコンはそもそも異世界があることを知らないだろうし、今日狂教会を作ったっていう狂滎凶介にもそれだけの力はないだろう。
だとすれば、考えたくもない人物が1人だけいる。
本当に、ずいぶんと昔、2000年前に2日だけこの世界の中国に来て私の心をズタズタにして帰っていったあの男。
あの男なら、たかだか33人程度、絶対に異世界に連れて行けるし、元の世界に返すことも可能だ。
「それは、あなたが、あなたを、異世界からここに戻した男の名前は」
ああ!訊きたくない!言いたくない!
だが確認だ、これは仕方のないことだ。
ああいやだいやだ、あの男の名前を口にしようと思うだけでも嫌悪感がつのる。
「そいつの、名前は、リオル・クライシスで合ってる?」
「ハハッ、本当に嫌いなのね、すごい悪意を感じるわ。まぁそうよ、リオル・クライシスと名乗ってたわ、わたしもあいつは嫌い、あんな規格外の化け物、あんなのが私と同じ人間だなんて信じられないわ」
そうだ、あいつは人だ。
人のくせに人の枠を越えすぎていて、神のバグと平然と並ぶことができる。そんな人間を人と呼ぶのは抵抗がある。
でも納得はできる。あいつなら人を30人ちょっとどころか地球の全人類を異世界に飛ばすことなんて簡単なんだろうし。
ああ、考えたくない、あいつが地球にいるとか。
「はぁ、じゃあ帰るわ。もうやだ、帰る」
「そんなにいやだったの?」
心配そうな顔をして奇異が訊いてくる。
そのことに少し違和感を感じはするが、そんなことどうでもいいと思うくらいリオルのことが頭の中で渦巻いている。
あんな人外をどうやって元の世界に戻すか、それを考える方が先決だ。
「じゃあね」
「バイバイ、次に会うときはあなたが死にかけでありますように、そしたらちゃんととどめを刺してあげるから」
そう言って膝を曲げて、前に飛ぶ。
「えー、何その威力」
奇異が飛んだ際にできたアスファルトのひび割れを見て、声を漏らす。
でもいいや。そのくらい妖魔王のところの鬼も普段の力で出せる。
歩いて神楽の家に帰る。
話していたりして、出てから20分は経っていて、近くのコンビニには往復で5分程度しかかからないので、完全に別のところに行っているのはバレているだろうから開き直って何も持たずに戻る。
「あっ、お帰り、遅かったね、どこいってたの?」
とても綺麗に澄んだ声で、私の少し折れかかった心を優しく包み直そうとしてくれようとしているような、そんな優しさしか込められていない声で神楽が許し難い嘘つきで、人殺しの私に話しかけてくださる。
「あっ、う、うん。ご、ごめんね、めが・・・・・・・・・神楽ちゃん」
どうしよう、目を離さなくてはいけないのに目を離せない。
そもそもなぜこのような美の塊、美しさを詰め込んで世界中の全生命が彼女を愛することが決められている、そんな少女を幸運にも間近で見ることができて目を逸らさなくてはいけないのだ。
みているだけでこの幸福感。話しかけられたことへの多幸感。彼女の美しい瞳を、艶めく紅い唇を、白く輝く肌を、光り輝く黒髪を、拝見させていただいたことへの至福。耳がとろけるような甘い声を聞かせていただいた幸せ。
その全てが全身を巡り、体を熱くし、彼女の目の前だというのに息遣いを荒くし、あってはならない劣情を抱かせる。
そんな自分のことが嫌になり、嫌いになり、憎悪の対象とし、今すぐにでも彼女の元を離れ下劣な己を死ぬまで痛めつけたいと、そう思うのに、体を言うことを聞かずに、靴を脱いで彼女の立っている床板と同じものに汚れた足を乗せ、今すぐに足を切り刻んでしまいたいほどの罪悪感を覚え、体は止まることを知らず愚かにも彼女よりも高い目線に立ってしまう。
今すぐに膝をつき、彼女の目線を天から感じ舌を噛み切り死んでしまいたい。もしも彼女が望むのであれば、1ヶ月でも一年でも、一生をかけて痛めつけられて殺されることも本望である。
そう思うのに思考と体は相も変わらず一致しない。
思考はまともで、今己がやらなくてはならないことを理解しているのに、体は本心が、本能が、欲望が、欲求が求めることをしようとする。
彼女の瞳を見つめたい、彼女の唇に吸い付きたい、彼女の肌に触れてその肌を舐りたい、彼女の黒髪に顔を埋めその匂いを嗅ぎたい。
その傍目にも理解できるような最低な劣情を感じていないのか、「大丈夫?縁連ちゃん、具合悪い?熱があるの?」と、愚劣な愚か者の体調を気になさるという本来なさらなくてもよろしい行為を女神様はなされ、その優しさにこの愚図の心は愛欲を溢れさせ女神様のそのお手に触れてしまう。
何をしているんだ私は、速くこの手を切り落としこのゴミが触れ汚れてしまったそのお手を洗っていただかなくてはならないのに。
手は触れたままで、体は動くことをやめ、指の腹で感じる彼女の柔らかく暖かい細く美しいゆびの感触を楽しみ、あまつさえもそのお手を握ってしまうという愚行を起こす。
「結構ダメな感じ?具合悪い?部屋いこっか」
やめて、今それだけは、絶対に理性の糸が切れる。
そう思い、傷つける結果になったとしてもそのお手を振り払わなくてはいけないというのに、神楽様が引くを振り払うことなどできずに階段を上がり、部屋の前へと着いてしまう。
その間に、息はさらに荒れ、口に溜まった唾を飲み込むことすら容易なものではなく、こぼれ落ちてきたものを何度手で防いだことか。
今にも鼻から血が流れてきそうなほどに顔が熱く、臍の下が燃え盛るように熱く、汗なのか別のものなのか、身につけている下着は土砂降りの雨に打たれたようになり、今すぐにでも脱ぎ捨ててしまいたくなる。
だが、そんな汚物を神楽様のお目に晒すことなどできるはずもなく、神楽様のお部屋に入ってしまい、神楽様の香りに満ち溢れた部屋に入り、全身を神楽様に抱きしめてもらっているような状況下で、
理セイナんテハチ切レて。
かぐらのからだがゆかにしかれたじゅうたんたおれるりょううではりょうてくびをわたしがかたてでつかみあたまのうえにおしつけてあらわになったわきにかおをおしつけるようにしてにおいをかぎいちどなめその味にさらにこうふんしかおをあげひょうじょうをみることもなくじぶんのくちびるをかぐらのくちびるにおしつけしたをくちのなかにむりやりいれてかぐらのくちのなかをなめまわすはのかたちもしたのだんりょくもすべてがすべてがすべてがいとおしくあいしてあいしてあいているてをかぐらのふとももにあてやわらかいがひきまってもいるそのあしをもみはわせてすこしずつうえへとあげていきしたぎにふれ
舌に痛みが走る。
連続したものではなく一瞬のもので、その痛みで自我を取り戻す。
取り戻し、顔を離して自分の舌を下の歯の上に乗せて勢いよく下顎を上げ噛みちぎ
「ダメだよ」
私の狂おしいほど愛おしい神楽様が、私の濡れた下着の外から躊躇なく弱いところを優しく撫でていく。
その一瞬の快楽は私に制御なしの声を出させ、閉じようとしていた口を開かせ、全身から力を奪っていった。
そして床の上で体を痙攣させている私の上に神楽様がおいでになられて、その細くしなやかな指を3本、親指人差し指中指を、私の口の中に入れ3本の指でこの塵芥の舌を掴み弄ぶように弄る。
その時の恍惚としていらっしゃるような、それでいて冷めていらっしゃるような笑みは、一種妖艶なもので、子供が無邪気に発する他人を魅了する笑みのような、ものに似ていて、それが畏怖と共に歓喜と快楽を伴ってないに等しい脳みそに大きく刻み込まれる。
「ダメだよ、縁連ちゃん、そういうことをするなら相手の合意を得なきゃ、気づいてなかったとはいえ私が部屋に誘ったんだからある程度のことは受け入れてあげたけど、流石に触っちゃいけないところはあるよ」
ごもっとも、至極真っ当な正論です。全てはこのゴミ虫が悪く、責任を取る、そういう意味では何をしても足りるものではなく、せめてこの何の役にも立たない肉体の命だけでも捧げようとしたのです。
そう言おうとした口は舌を動かすことが出来ず、言葉は意味をなさないうめき声となって外へ出る。
「そういえば今日は満月だったなぁ、ごめんね、気づかなかったよ」
頬を撫でられる。
「それにしても、随分と溜まってたんだね。トントンするだけで、なんとまぁ」
優しく触れられるたびに体が跳ねる。
「大丈夫だよ、他のみんなはいっぱい楽しんで遊んでるから声はいくら出しても聞こえないよ」
声は加減することなどできずに漏れ続ける。
「ふふっ、気持ちいいんだね、わかるよ、私も女の子だから」
ゆるりと笑うその姿に体が震える。
「ああ、汚すのも大丈夫、洗えばいいだけだから」
濡れた絨毯を触りながら言う。
「体すごいビクビクしてるけど、大丈夫?これから満月の時には抜くの手伝ってあげようか?」
口を耳に近づけて甘く囁く。
「あれ?おーい大丈夫?気絶直前か、すごいなぁ、満月の力は」
首筋に厚く柔らかい唇が少し触れる。
「それじゃあね、ゆっくり寝なよ」
おでこに唇を当て、神楽が起き上がる。
「日針縁連」
「ふふっ、フルネームで呼んで去るとか、なんか強キャラ感あっていいねぇ」
呟きながら扉を開けて閉める。
体の内が倦怠感に包まれ、それを上回る多幸感、幸福感、幸せ、至福の感情に包まれ、気絶するように意識が途切れた。