第七話 クロナとの邂逅
前回のお話が重複して更新していたようです。
すでに修正済みですので、もしよければそちらからご覧くださると幸いです。
せっかくニューヒロインが出てきて盛り上がるところだったのに…僕は何をしているのでしょうか
レインが大きな狼もといグレートウルフを討伐してから約二十分以上が経った頃ようやくイツラの森から出ることができた。
クロナによるとDランク級の魔物らしく素早いのと他のグレートウルフと連携を取れることからなかなか厄介な相手だということがわかった。
「レインは今日冒険者登録したばっかりなんだ。それでイツラの森の奥を目指したの?」
「はい……どこまで行けるかなーってつい試したくなっちゃって……」
レインは苦笑いをしながらクロナに向かってそう言う。
レインの行動は他の冒険者から見ても無謀以外の何物でもないただの蛮行だったのだ。レインも、ようやく安全なところに帰ってきて、先ほどの戦闘を振り返ることをしてようやく自分の愚かさに気づいた。
「でも、死ななかっただけよかった。実際、危ない目にはあったけどそこまで怪我もしなかった」
「クロナさんに助けていただかなければ本当に危なかったです。本当に助かりました」
「いい。それと敬語もいらない。名前も呼び捨てにして」
「いいんですか……わかった。クロナ」
レインがまた敬語を使おうとするとクロナの視線の温度が下がり一気に機嫌が悪くなってしまったので、レインは急いでタメ語でクロナに話をする。
クロナもレインがタメ語で話すようになると満足そうに頷いてレインとの会話を楽しみ始める。
「僕はクラメル……じゃなかった。メイルの街に来たのは昨日が初めてでよくわからないことが多いから教えてくれたら嬉しいんだけどいい?」
「いいよ。何が聞きたい?」
レインは結構ドキドキしながらクロナにそう尋ねるがクロナは全く気にした様子もなくレインの話を静かに聞いている。
昨日の夜、レインの夢の出て来た看板の話だけを鵜呑みにするのはバカのすることだ。レインもだれか他に情報を集められるところを求めていたのでクロナのこの了承はとてもありがたかった。
ただ、あまり根本的な話を聞くのは流石に怪しまれるので、レインも考えながらクロナに質問する必要があった。ただでさえ先ほどのアイテムボックスの件もあって、怪しまれているのに、ここでまた怪しまれるような言動をするのは避けたほうがいいだろう。
「メイルの街ってこの世界の街の規模で行ったらどのくらいなの?」
「だいたい中の下くらいかな? 私もあまり他の街に行ったことがないからよくわからないけど……」
メイルの街も昨日今日少し移動しただけでかなりの規模があった。
レインは少なくとも中の上、もしかすると上の下くらいはあると予想していたが、あの規模でもクロナによれば中の下だと言う。
クロナもあまり詳しくないようだが、それでもレインからしたらかなり参考になる情報だった。
少なくとも、GMOではここまで大きな街というのは少なかったし、そもそも基本的に転移魔法を使ったり、ボスがいるところやダンジョンは別のマップにあったのでそこまでGMOの世界自体はあまり大きいものではなかった。
「そっか。ありがと。それと、クロナってどのくらい強いの? さっきのグレートウルフに使った魔法を見る限り結構強かったりする?」
「わからない。あと、レインに伝えておく。冒険者同士でステータスの詮索は良くないよ。わたしは別にバレてもいいけど、たまに秘密主義の人もいるから。ちなみにわたしはつい昨日ステータスを見に行ったけどあんまり変わってなかった。魔法は得意だけど近接攻撃はあんまり得意じゃない。」
「ステータスを見に行った?」
これは、レインが結構気になっていたところである。
レインはステータスを見るのもメニューを使えば簡単に調べることができたが他の人はどうしているのだろうと。そもそも、レベルの概念が他の人にもあるのかどうかすら怪しかったがそれは先ほどのクロナの発言でステータスはあることが証明された。
「5歳になってから神殿にステータスをもらいにいかなかった? そのあとは神殿でステータスの確認ができるはずだけど……レインは違うの?」
「あー、そのですね……」
「むぅ……言えないんだ」
「申し訳ないです」
「いい。絶対にレインの信頼を得て正々堂々レインの秘密を聞き出す。さっきの戦いを見たところ、レベル15前後はあるだろうから一緒にパーティーを組もう。わたしは結構強いからレインの力になれると思う」
クロナは若干不満そうにしながらもそう言って、勝手にレインとパーティーを組むことになっていた。
レインとしてもクロナのパーティー加入はいろんな意味で嬉しいことなのだが、それ以上にいまのこの自分の立ち位置を知られることはまずいのでレインは一瞬だけだが困ってしまう。
レインも、こんな可愛い女の子と一緒に冒険ができるのも嬉しいし、確かに先ほどの魔法を見る限りかなりレインの助けになるのは間違いないため困ってはいたものの特にクロナの意見に反対することはなかった。
結局、クロナのステータスを聞くことはできず、その後は普通に世間話やこれからの予定を話しながらしっかり2時間をかけてメイルの街に戻ってくることができた。
ただ、その間普通の常識話をされても反応できなかったレインはもう開き直って田舎からきたよそ者という設定でゴリ押すことにした。
クロナはかなり不満そうにしていたがこれにはレイン自身もかなり無理があると思っているのでしょうがない。
かなり、怪しまれてしまったがパーティー解消はしないらしく、むしろ謎が解けるまでついて行くと言った喧騒でレインのことを監視し始めた。
「帰ってきたけど、クロナはこれからどうするの?」
「レインと一緒に冒険者ギルドに行こうと思ってる。グレートウルフも買い取ってもらわないといけないでしょ?」
「あー、ならその前に袋を買いに行ってもいいかな?」
「別にいいけど。なんで?」
「クロナに隠し事ばっかりするのも悪いから狩った魔物をどうしているかだけ言うね。実は僕、クロナの持っているアイテムバッグと同じことができるんだ。だから袋とか必要なかったんだけど冒険者ギルドに行くのに何もないところからゴブリン達を出すのはまずいでしょ? だから、あらかじめ袋に入れて行こうかなって思ってさ」
レインはこれ以上、クロナに隠し事をし続けるのも悪いと思ったのと同時に、ここでクロナ1人にバレるか冒険者ギルドに入って大勢の人にバレるかを天秤にかけた場合にクロナ1人にバレるほうがよっぽどマシと言う結果になった。
しかも、クロナなら黙ってくれそうだったし、これからパーティーメンバーになるのだからこのくらいはバレても別にいいだろう。
クロナのアイテムバックと違いレインのアイテムボックスはレインの課金によってほぼ無制限に近い容量になっているため今後、2人で冒険をして行く上でアイテムボックスに頼る場面は多くなって行くだろう。
なにせ、アイテムボックスに入れておけば任意で魔物を解体までしてくれるのだから断然、アイテムバックよりも使いやすいし活躍する場面も多いだろう。
「そっか。そう言うことなら袋を買いに行こう。実のところ、このアイテムバックも結構レアでバレるのを避けたかったからちょうどよかった」
クロナはレインが秘密の一つを教えてくれたのが相当嬉しいのか少し笑みを浮かべながら早い足取りで道具屋へ向かうのであった。
当然道具屋に行くのにしてもレインはまだ土地勘がなかったので、クロナに全て任せて歩いてきたがかなり雰囲気のある道具屋へとついた。
その間にクロナからアイテムバッグについて教えてもらったレインであったが、アイテムバッグと言ってもピンキリで高いものほど収納量が増えるらしい。
ただ、安いものでも貴族の年収分くらいは普通にあるらしく、冒険者で所持しているのもほんの一握りの実力者かお金持ちだけらしい。そんなものを持っているクロナは一体何者なのか気になるレインであったが隠し事をしているのはお互い様なのでその辺はレインも詮索をするつもりはなかった。
と、言うのも先ほどのグレードウルフを収納しているところを見ている限りでは一番小さいものではないのが確実となっている。
それ以上、クロナの正体に自分から首を突っ込んでもいまのレインでは対処できない可能性の方が高いためしばらくは様子見ということになったのだ。
「はい、これはレインの分」
「ありがとう。いくらだった?」
「お金は必要ない。さっき、レインの秘密を教えてくれたからそれでチャラにしておく」
レインがそんなことを考えている間に、クロナは大きな袋を二つ購入しており、クロナはそのうちの一つをレインに渡した。
レインはお金を渡そうとしたがクロナに断固拒否されたので、礼を言ってからありがたくその中に解体済みのゴブリンや狼、ウサギなどを入れて行く。
「さっき、話には聞いていたけどすごいね」
「でしょ。僕も初めは驚いたよ。かなり便利で僕は助かっているけど」
「今度から魔物の収納はレインに任せた方が良さそうだね」
「そうだね。それじゃあ、全て移し終えたから冒険者ギルドに行こうか」
レインはそう言って笑いながら、クロナと一緒に冒険者ギルドに向かって行く。
レインも、クロナも互いに見た目は16歳、17歳くらいの美形だったので、街の人からかなり注目され、レインは戸惑ってしまったが隣のクロナが全く気にしている様子もなかったのでそれに倣ってクロナの隣を堂々と歩いて行くレインであった。