第二十四話 女の戦い?
「ご主人様の好きな女性のタイプはどう言った人でしょうか?」
「あ、あはは……どうだろう。優しい人、かな?」
「そうですか、では次に……」
「ルナ、一旦休憩にしようよ。そろそろ夕食の時間だしね」
あの後、どんな質問が来るのかと少しドキドキしていたレインだったが、最初のレインが正体を明かしてからは特に白き悪魔としてのことを聞かれることはなくその代わりに先ほどのように好きな女性のタイプだとか今彼女は好きな人はいるのかだとか、あとはどんな食べ物が好きなのかなどのレイン自身のことについての質問しかなかった。
最初の方はレインもルナのことが気になったのでお互い質問していったのだが、あまりにもルナがレインの事を根掘り葉掘り聞いてきたのでレインは一旦休憩と言ってそのままルナを連れて食事に連れていくことにした。
あのまま話をしていたら確実に日がまわりそうな勢いだったので、レインは一分前の自分に心の中でサムズアップをしておくのであった。
レインたちが仲良く一階の食堂へと向かうといつもと同じく結構賑わっていたが、ちょうど二人席だけが空いていたのでレインはルナを誘ってその席に座った。
すると、レインたちが来たのに気づいたのか女将さんがレインたちのところまでやってきたのでレインが注文を頼もうかと思ったが、その前に女将さんはルナの方を見て何やら嬉しそうに笑っていた。
「あんたたちかい。二人してこの時間に仲良く降りてきたということは上手くいったみたいだね」
「はい。ありがとうございました」
「いいよ。それよりも、頑張って彼氏を落とすんだよ」
「えぇ、頑張ります!」
「あのー、夕食の準備をお願いしてもいいですかね?」
どうやらルナと女将さんのなかで何かあったようで、かなりルナのことを応援しているが、レイン的にはほどほどにしてくださいとしか言えないので黙って苦笑いを浮かべることにした。
女将さん曰く、この二席も今日だけ特別にレインとルナのためにとっておいてくれたものらしく、料理も今日だけお祝いということでかなり豪華なものをタダで出してくれるらしい。
その際にレインがどうしてここまでしてくれるのか気になったので女将さんに聞いてみるとなぜかため息を吐かれながらルナの方を見て「本当に頑張るんだよ」と呆れながら応援して厨房の方に戻っていった。
「解せない……」
「まぁまぁ、ご主人様はそのままで大丈夫ですよ。これは女の戦いでもありますから」
「……女の戦い?」
レインはルナの言っていることが理解できないようで頭を傾げながら「女の子って難しいなぁ」などと呟き始めた。
異性とのデート? を既にこの世界で二回も体験しているにも関わらずまだまだ女心を理解するには全然至らない自分を情けなく思いながらレインはその後女将さんが持ってくる豪華な食事に舌鼓するのであった。
「その、ごめんなさい」
夕食を美味しく二人で食べ終わり、そのまま部屋に戻ってきたわけなのだが、ルナは急に「あ!」と大きな声を出すとそのまま耳や尻尾を申し訳なさそうに垂らしてレインに謝罪をした
「ん? 急にどうしたの?」
「いや、冷静に考えたらさっきの夕食も今日の宿代も全部ご主人様に払わせてしまっていることに気づいて……」
「あぁ、そんなことか」
レインは何か重大なことでもあったのかなと一瞬身構えたが、本当に些事なことでレインも全く気にしていなかったことに対して謝られてしまったので思わず少しだけ笑ってしまった。
確かに今のレインは金欠でそこまで豪遊することはできないがまだ生活に困っているわけではない。
最悪ガチャ産の武器を数個武器屋で売れば生活することはできるので全く気にすることはないのだ。
お金はないが財産なら使い切れないほどあるのでレインもそこまで深刻に考えていることではなかった。
ただ、レインはそう考えていてもルナにはまだ詳しいことは何も話していないため不安にさせてしまったのだろう。
レインもそれを察してルナを安心させるように優しく頭を撫でながら「大丈夫だよ」とひどく落ち込んでいるルナを落ち着かせる。
「お金のことは気にしなくていいよ。結局、一緒に暮らすことを許可したのは僕だしね。生活費やその他諸々ルナにまとまったお金が入ってくるまで僕に頼ってよ。あぁ、生活費は僕と一緒に住んでいるからには全部僕が出すからね。そこは譲らないよ」
「で、でも……それではご主人様の負担が……」
「さっきも言ったでしょ? 僕は白き悪魔って周囲の人たちに呼ばれてたんだよ? 例えばほら、これも今では結構貴重なものなんでしょ?」
レインはそう言いながらいつものように飲んでいる経験値ポーションを一つアイテムボックスの中から取り出して机の上に置いた。
「ご主人様、これは?」
「経験値ポーションって言うんだけど、知らない? この前クロナがすごく貴重なものだって言ってたんだけど……」
「け、経験値ポーション⁉︎ それって幻のアイテムじゃないですか⁉︎」
「でしょ。ちなみにこれが数え切れないほどあるし、今は制限があるだけど条件を満たしていけばもっとレベルの高い経験値ポーションとかも取り出せるようになると思うよ」
「す、すごい……」
ルナは素直にそう思いながらレインによって取り出された経験値ポーションの方をじっと見つめる。
ルナも経験値ポーションを直で見たことは一度もないし、チラッと本で読んだ情報だとここまで虹色に光るものではなかったので一瞬本物か疑ってしまったが、よく見ると気配だけでもものすごい価値のあるものだと実感させれ本で見た物よりもすごいものだと感嘆の溜息を吐いた。
今でさえ伝説級のアイテムを目にすることができてその余韻に浸っているのに、次のレインの言葉を聞いてさらに飛び跳ねることになった。
「なんならちょっと試してみる?」
「え、い、いいんですか?」
「うん。ほら、もう一本あるし、一緒に飲もうか」
レインはいつもの日課のようにフタを開けるとそのまま野菜ジュースでも飲むように一気に経験値ポーションを煽った。
ルナはただそれを見て唖然としているがレインが無理やりポーションをルナに渡して「はい」と渡すとルナも意を決したように目をつむりながらレインと同じように一気に経験値ポーションを飲んでいった。
が、そこで問題が起こってしまった。
「あ、な、なに、あぁぁぁ!」
「しまった! ルナ、大丈夫⁉︎」
そう、レインは毎日のように経験値ポーションを飲んできたので耐性ができたのか最初のように痛みやその他諸々でのたうちまわることがなくなったのだが、ルナは違う。
今日初めてそれを口にしてしまったことにより、レインも最初に体験したような悪夢のような激痛が今ルナの体を襲ってしまっているのだ。
レインもルナの様子が激変してからそのことに気づきこの世界に来て一番焦ったと言わんばかりにあたふたしてそのまま二、三分間ルナの叫びが治るまでずっとルナを抱きしめて「ごめん!」と謝り続けるのであった。




