第二十三話 レインの秘密
レインの部屋で仲良く? 話をし始めてから早くも二時間が経過しようとしていた。
「さて、そろそろお開きにしようか」
「そうだね。もういい時間」
「レインさんの部屋もだいぶ満喫できましたし、私も構いませんよ」
ということでレインが解散しようとみんなに提案すると三人とも特に異論はないようでそのまま『クロナとシーナの二人だけ』その場から立ち上がりレインの部屋を出て行こうとする。
残りの一人であるルナは……当たり前のようにレインのベットの上で二人に別れの挨拶を告げていた。
「ところでルナ。君は何をしているのかな?」
「ご主人様と同じ部屋で寝ようとしているだけですが、何かいけませんでしょうか?」
「うん。全部ダメだね。できれば他の部屋で寝てくれると助かるな。もちろん、お金は僕が用意するからさ」
「ご主人様は獣人である私のことが嫌いなのですか?」
ルナはあからさまに悲しそうに尻尾や耳を垂れ下げて私今ショックを受けていますと大げさにアピールをしながらレインにそんなことを聞く。
そんな聞き方されたら流石にレインでも嫌とはいうことはできないし、そもそも獣人であるルナのことをそもそも嫌ってなどいないので否定するのは簡単なのだがその後の展開が容易に想像できてしまうのでどうしたものかとレインはすぐに答えることなく少しだけ考えるそぶりをする。
すると、本当に嫌と言われるのではないかと思い始めたのかルナの目にだんだん涙が浮かんできてしまったのでレインは慌てて否定することになった。
「き、嫌いじゃないよ。でもね、同じ部屋っていうのはダメだと思うんだ」
「大丈夫です! 問題ありません!」
「問題大アリだよ! ちょっとクロナとシーナもなんとか言って……って、もういないし」
レインが慌ててクロナとシーナに助け舟を求めようと扉の方を見るとそこには二人の姿はすでになく二人の宿に送ることができなくなってしまった。
「とりあえず、どっちにしてもこの宿の人に確認を取らないといけないから下に降りようか」
「はい! ありがとうございます。ご主人様」
というわけで超ご機嫌なルナを連れて宿の店主に確認を取りに行くことになるのであった。
「悪いね。今一人部屋の空きがなくてね。二人部屋ならちょうど一部屋空いてるんだけど、どうするんだい? あぁ、ちなみに、もし二人部屋を取った場合あんたも一緒にその部屋に移動してもらうからね」
レインとルナが下にいた女将さんにもう一部屋空いているか話を聞くことになったのだが、そこではレインが一番聞きたくなかった答えが返ってきてしまった。
ちなみに、女将さんはそんなことを言っているが先ほど一応レインが隣の部屋を確認するとそこは空き部屋だったはずである。
先ほどからルナが女将さんにずっと声は出していないが頭を下げてありがとうございますと伝えているし、女将さんもそれに答えるように豪快に笑いながらサムズアップをしている。
どう考えてもまだ部屋に余裕があるはずなのに、二人の確信犯によってレインの逃げ道がだんだんなくなっていっていた。
「ご主人様、二人部屋にしましょう! 安心してください。私は心の準備ができていますので」
「女将さん、そこをどうにかできませんか? 流石に男女で同じ部屋はちょっとまずい気が……」
「そっちの女の子がいいって言ってるんだからいいじゃないか。何か不都合でもあるのかい?」
女将さんは冗談半分でレインにそんなことを聞いているが、本当に隠し事が山ほどあるのである。
まだクロナたちにすら自分が白き悪魔だということを打ち明けていないし、そのほかにも今でも毎日飲んでいる経験値ポーションもルナの前で飲むのはあまりよろしいものではないだろう。
ただ、これ以上レインが駄々をこねても無駄だというのは女将さんの顔から見ても確かだし、レインは色々と覚悟と諦めのこもったため息をついて二人部屋を借りることにした。
「それでこそ男ってものだよ。部屋はちょっと割引してやるから、元気だしなよ。ほら、これが鍵だよ。一番日当たりもいいオススメの場所だから、楽しんでおくれ」
「ありがとうございます。じゃあルナ。ちょっとついてきてくれないか?」
レインは鍵を受け取ると少し真面目な声音でルナにそういうとそのまま先に鍵に書かれた番号の部屋へと向かうことにした。
レインとしてもこれからが勝負なところがありかなり緊張しており、ルナにもそれが伝わったのか不思議そうな顔をしながらレインの後をついてきていた。
「ここですね。ご主人様?」
「ルナ、これから僕の秘密を話すよ。多分信じられないだろうし、まだ証拠があるってわけじゃないんだけど、それでも僕を怖がらないでくれるかな?」
「ご主人様……」
そう、今レインが恐れているのは何も秘密がバレることではない。
確かに今までクロナたちに黙ってきた秘密をルナだけに明かすことに緊張していないわけではない。
だが、それ以上にレインは自分があの白き悪魔だということがバレることによってルナを怖がらせてしまうかもしれないことの方が怖かったのだ。
こうして同じ部屋になってしまったからにはこれからも日課として経験値ポーションを飲み続けなければいけないし、部屋で色々と実験をすることもあるだろう。
なので、秘密にすることは論外なのだが、ルナが白き悪魔のことを嫌っているようであればこれから同じ部屋で過ごしていくことはできないし、そうなれば後でもう一度お願いして部屋の交換を頼む必要があるのだ。
「大丈夫です。たとえ、ご主人様がどんな人でも私を助けてくれたのに違いありません」
「ありがとう。とりあえず中に入ろうか」
「はい、話はそれからですね」
ルナの言葉にレインは少しだけ体が軽くなる気分を味わいながらとりあえず部屋で腰を落ち着けるために鍵を開けて二人は部屋の中に入っていくのであった。
「当然だけどさっきの部屋より大きいね。かなりいい部屋を紹介してくれたみたいだ」
部屋の中に入ると、先ほどまでレインがいた部屋の二倍から三倍ほど広く部屋の質もかなりいいものとなっていた。
ベッドはシングルベッドが二つ仲良く並んでおり、もし仮にここで一緒に生活するようになったら、慣れるまで大変そうだなーとレインは呑気にそんなことを考えていた。
ほかにも家具が二つづつあり普通に以前の部屋よりも快適だった。
これで家賃は銀貨八枚と一人当たりで考えると前の部屋より安いのだからどれだけ女将さんが二人に気を使ってくれているのかよくわかるものとなった。
「それで、ご主人様……」
「そうだね。まぁ、ルナも察していると思うけど、僕にはいくつかクロナとシーナにだまっていることがあるんだ」
「はい。それはなんとなく察していました。もちろん、二人にもそれなりの秘密があることも」
「うん。まぁ、二人の秘密は僕も知らないんだけど……っと、それより僕の話だったね。その秘密っていうのが何個かあってまず一つ目なんだけど、僕は他の世界からやってきたんだ」
「ということはご主人様はもしや勇者様だったのですか?」
あまりにもあっさりと別の世界からやってきたとレインに打ち明けられてルナも最初は疑いそうになったが、レインの方を見ても全く嘘をついている様子がないため納得してそんな質問をする。
「いや、気がついたらこの街の木の下で寝ていたから勇者召喚とかではなく純粋にこの世界に来たんだと思う。僕が使っていたキャラクターとして」
「キャラクター?」
当然、キャラクターなんて言ってもルナが分かるはずがなく首を傾げながらレインにキャラクターについて聞いた。
ただ、レインとしたらこれからが正念場である。
キャラクターについて説明するということはそれすなわち自分が白き悪魔だということを伝える必要がある。
なので、レインは一度心を落ちつかせるように深呼吸をすると覚悟を決めてキャラクターについて説明することにした。
「うん。これが二つ目の秘密で一番他の人にバレたくなかったことなんだけど……その、ルナは白き悪魔って知ってるかな?」
「えぇ、約一億年前に最強と謳われていた人族ですよね? 確か、彼以上の化け物は絶対に生まれてくることがないだろうってお伽話で読んだことがあります」
「そう。その白き悪魔なんだけど、それ僕なんだよね?」
「え? す、すいません。ちょっと耳がおかしくなったようです。もう一度お願いしていいですか?」
「だから、その、僕が白き悪魔なんだよ。なぜか知らないけど、一億年も時間が経っていたみたいで……」
「えぇぇぇぇぇ⁉︎ レインさんが白きあく……」
「ちょ! 声が大きいよ!」
急に大声を出したルナの口を塞ぐようにレインは慌てて抑えるとそのまましばらくルナが落ち着くまでそのままの状態を維持した。
どうやらルナの頭の情報処理が追いついていないらしく先ほどからかなりあたふたして今にも気を失ってしまいそうであった。
「ご、ご主人様が、あの伝説の?」
「まぁ、詳しく言えば白き悪魔っていうのは違うんだけど、確かに僕が白き悪魔ことレインだよ。それより、その……怖くなった?」
「へ? どうしてですか?」
「いやー、文献を見たってことは結構怖いことも書かれていたんじゃないかなーって思ってさ」
確かにレインはGMO時代の時多くのものから神聖視されていたが、全員が全員レインを神聖視していたわけではない。
ゲームとは自分が主人公であり、自分が最強でなければ面白くないのに絶対に勝てない壁がある。それを面白く思わない人たちも少なからずいるようで、そう言ったアンチから外から散々言われたことはよくあった。
まぁ、大概が世界ランキング2位から1000位で作られたギルドの奴らやレイン自身が作ったNPCにボッコボコにされていたが……
それでも、そう言った人たちが作った文献も絶対にあるためそうなればあらぬことを書かれている可能性があるのだ。まぁ、レインも少しやりすぎたなーと思うことも多々あるのだが……
そんなわけで、ルナに自分が怖くないのか再度レインは問いかけたのだが、ルナは全く意味がわからないと言ったような表情をしていた。
「確かにありましたけど、私は別に白き悪魔じゃなかった、ご主人様が悪いことだけをしていたとは思いませんので、怖がりませんよ? それに、さっきも言ったじゃないですか。ご主人様がどんな人でも、私を助けてくださったことには変わりません。そんなご主人様を裏切るようなこと、私は絶対にしませんよ」
「そうか。ありがとうルナ」
「はい。それより、他にも色々と聞きたいことがあるのですが、いいですか?」
「うん。もうルナには一番大事なことは話しちゃったしね。別に大丈夫だよ」
「ありがとうございます! では……」
レインも自分の秘密を肯定して共有してくれる人ができたからなのかとても温かい気持ちになりながらその後ルナの質問に答えていくのであった。




