第一九話 イツラの森深層攻略 2
「ついに中心部だね」
「うん。多分ここから先は中域と同じように雰囲気からガラッと変わるだろうから気をつけてね」
クロナは目の前の幻想的な風景に圧巻としているレインに注意をしながらいつも使っている杖とは別の見るからに豪華そうな杖をアイテムバッグから取り出した。
それを見てシーナもいつも使っているレイピアをアイテムバッグへとしまい、こちらも見るからに強力なレイピアを取り出した。
「了解。って、2人ともそんな武器持ってたんだ」
「これは本気の時用。結構レアな物」
「久しぶりに装備しましたが、やっぱりこっちの方がしっくりきます」
どうやら2人とも今まではサブ武器を使っていたようで、これからの中心部ではクロナたちも戦うシーンがあるだろうと言うことでいつも愛用している方の武器を取り出したようだ。
見るからに2人ともこの世界では強力な部類に入るであろう武器に少しだけ誇らしげな表情だったが、レインは特に羨ましがることなく自分にだけ見えるようにしたメニュー画面を表示させてとある物を取り出した。
「……⁉︎ レインもすごい武器持ってたんだ」
「うん。2人ともメイン武器を使うんだったら、僕もそれに見合った武器を使わないとね」
そう、実はちょうど今朝アイテムボックスの中身を整理していると一つだけだったが取り出し可能になっている武器が存在し、レインは今それを取り出したと言うことだ、
と言ってもGMOで言えば星2の物でこれも腐る程アイテムボックスの中で死蔵しているものである。
「そんなサラッと言っていますが、レインさんのそれ確実に国宝級ですからね……」
レインはそう言って星2の剣を軽く振るう。
それだけでも先ほどまで使っていた剣とはだいぶ感覚が違い、今まで倒すのに時間のかかった魔物でも簡単に一刀両断することができそうなほどであった。
しかも、シーナはそう言っているが2人の装備している武器もレインと同等レベルの物なので間接的に自分たちの装備している武器も国宝級ということを伝えていることになる。さすがAランク冒険者と言ったところだろうが、全てのAランク冒険者が国宝級の武器を持っているとは流石にレインも思っていないため2人が特別だということをしっかり理解しておく。
「大丈夫だって、人前では出さないからさ」
そう、中域はまだチマチマではあるが他の冒険者の姿を見かけていたのでここまで来る時も一応は自重していたがこれから先の中心部はまず人がいないということで特に人目を気にすることなく武器を使うことにした。
「っ⁉︎ やっぱりすっごいな」
「レイン、気を抜いちゃだめ。分かってると思うけど、すぐにこっちに来る魔物が数匹いる」
「私たちもレインさんを守りながら頑張りますが、気を抜いてはダメですよ」
「うん。分かったよ。それと、シーナたちに任せるだけじゃなくて僕もしっかり戦うからね」
レインはクロナとシーナの注意をしっかり聞き、もうすぐやってくるであろう魔物と戦うために武器を構える。
それから三十秒もしないうちに一体の魔物がレインたちの視界でもしっかりと捉えられるところまで向かってきていた。見た目的にはグレートウルフの毛が紫で目が赤色バージョンだった。
「あれ、グレートウルフの変種?」
「多分。私も見たことない魔物だけど魔力の質とかがグレートウルフに似ているから上位種だと考えていい」
どうやらクロナも目の前の魔物は見たことがないらしく、レインたちの目の前の魔物の詳細な情報などは分からなかったが、基本的にはグレートウルフと同じ感じだろうとレインは勝手にそんな予想を立てていた。
「見た感じAランク級は余裕でありそうですね。三人で仕留めましょうか」
「そうだね。じゃ、僕とシーナで囮役を務めるからクロナはトドメの一撃をよろしくね」
「了解。気をつけてね」
さすがに未知の魔物に一人で挑むというのはせっかくパーティーを組んでいるのにもったいないということでここはパーティーのメリットを存分に利用することにした。
一人一人がAランク級以上の力を持っており、連携もこの一週間でそこそこ仕上がってきているので例え未知の魔物が相手だとしても相手にとって不足はなかった。
「よし、じゃあいこう!」
「了解です!」
レインの合図にシーナは元気よく返事をしてほぼ同時に紫色の狼に向かって駆け出した。
ただ、さすがにまだステータスの差が激しいためかシーナの方が先に紫色の狼の元までたどり着き紫色の狼の攻撃を捌いていた。
そのおかげでレインは後ろから紫色の狼の行動パターンや相手の力などを大体ではあるが確認することができ、その情報をシーナとクロナに伝えていく。
「見た感じ攻撃はグレートウルフと同じみたいだ! ただ、スピードとパワーがグレートウルフの三倍くらいあると思う!」
「みたいですね。これならクロナさんの魔法を待つまでもなく倒すことができそうです」
シーナはレインの話を聞いて自分でも同じようなことを思っていたのか満足そうに頷くとそのまま攻撃のスピードを一気に上げて、紫色の狼が防御に専念する前に体力を削り切り一瞬で倒しきった。
レイピアなので一回の攻撃はそこまで大きなダメージを与えることができないはずなのだが、シーナの攻撃を見ていると一回一回がものすごい威力を持っており、なおかつ攻撃のスピードも非常に早いので後ろで戦いを見ていたレインはそんなシーナの姿に思わず「おー」と拍手を送っていた。
「私の出番がなかった」
「そんなこと言ったら僕もほとんどなかったよ。まだまだたくさん魔物はいるだろうし、その時に頑張ろうよ」
「そうだね」
レインがシーナの姿を見て拍手を送っていると後ろからクロナが少々不満そうな声でそんなことを言い出したのでレインはまだまだこれからだとクロナのやる気を出るように励ました。
そんなことをしていると紫の狼を倒したシーナがレインたちの元まで戻ってきたのでレインのアイテムボックスに収納してそのまま探索を続けた。
アイテムボックスはこれから冒険をする上で必須のものになってくるのでレインもこれだけはクロナたちに自分のスキルの一つだと言ってあったので今回も特に突っ込まれることなく二人はレインが紫の狼をアイテムボックスに入れるのを静かに眺めていた。
「それにしても、中心部に入った瞬間にまた魔物の性質とかレベルが上がってきたね」
「そうですね。私はここにきたのは初めてですし、ワクワクします」
「私も、結構楽しみ」
「え、二人とも中心部に入ったのは初めてなの? なんで?」
レインは二人のつぶやきにさすがに黙っていることができなかったようで、驚いたように二人に先ほどのことを聞く。
「私はこの森を攻略する前に受付嬢になりましたし、そもそもここはA ランク冒険者でも危険ですからね」
「私も同じような理由」
「なるほど……」
クロナとシーナならソロでも余裕な気がしないでもないが、確かにイツラの森の中心部はAランク冒険者でも怪我をする可能性が大いにあると言われている場所である。
そんなところに好き好んでくるような人物がそもそもいないのだろう。
そのせいで、中心部の魔物の情報もそこまで流れていないということである。
レインも二人の説明を聞いて納得したように頷き、なら一層気を引き締めないといけないなとレインはクロナとシーナを呼んで三人であまり距離を取らないようにしながらイツラの森の中心部を探索していくのであった。




