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廃課金者の異世界建国記  作者: 月うさぎ
第一章 異世界転生
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第十四話 初めての勝利


「お疲れ、レイン。聞きたいことは山ほどあるけど、とりあえずおめでとう」


「お疲れ様です。そして、私たちのために戦ってくださってありがとうございました!」


「ありがとう。なんとか勝てたよ」


 レインとナウナーたちの試合が終了すると同時に心配そうにしながらクロナとシーナがレインの元へとやってきた。


 端の方ではクロナと同じようにエアドもレインの無詠唱が気になったのか、やたらと獰猛な笑みを浮かべてレインのことを眺めていたが、今は2人に譲る気らしく特にレインに話しかけてくることはなかった。


 その分、クロナとシーナにこれでもかというほど心配されたが、勝負には勝てたのでレインもとても清々しかった。


「それで、調子は大丈夫なの?」


「ん? あぁ、まだなんとか動けるよ。あ、向こうも目が覚めたみたいだね」


 クロナの質問にレインは、硬い笑みを浮かべながらも大丈夫だと言ってナウナー達の方を見る。


 そこでは奴隷行きが確定してしまっているのにもかかわらず、ナウナーたちは負けたのに笑みを浮かべながら3人で肩を抱き合っており、魔剣を所持していた時のような荒ぶっている様子は全くなかった。


 GMOにも魔剣はあったが、先ほどのような一気に様子が変化することなどなかったので、レインも魔剣以外に何か原因があるかもと少し予想していたのだが、今のナウナーたちの様子を見るに魔剣のせいということで間違い無いのだろう。


 レインのメイン武器にも魔剣が何個かあったので今後少し怖いのだが、まだ魔剣を取り出すことは不可能なのでそのレベルに至ってから考えることにしようとレインは考えることをやめてクロナたちと話をするのであった。


「あ、そういえば他の冒険者たちは?」


「レインさんの勝利が決まるとすぐにみなさん訓練場を出て行かれましたよ。きっと、依頼でも受けに行ったのでしょう」


 レインがふと観戦席の方を見ると、すでに人っ子一人いない状態だったので不思議に思いシーナたちに冒険者たちの行方を尋ねると、シーナが若干苦笑い気味にそう伝えた。


 クロナとシーナが戦闘前に言っていた通り、他の冒険者たちもおこぼれを期待していたようで、それがなくなったとわかるとすぐに興味がなくなったように去って行ってしまったのだ。


 レインにとって幸いだったのがナウナーたちが負けたからと言って逆恨みをしてくるバカな冒険者がいなかったことだろう。まぁ、1人でDランク冒険者3人を相手にでき、さらに無詠唱で魔法を発動することができる相手に喧嘩を売ろうとするバカなどほとんどいないだろうが……


「そっか。なら、僕たちも一旦ギルドに戻ろうか。色々としなきゃいけないことも多そうだし」


「ですね。ギルドマスター、私たちは先にギルドに戻ってますので、そちらの方たちをお願いしますね」


「わかった。っと、言い忘れていたが、レインおめでとう。最近この街の冒険者たちは若干怠け気味だったから、君のような新人が入ってきてくれて嬉しく思うよ」


 最後にエアドはレインにそう言いながら握手をして、ナウナーたちの元へと向かっていくのであった。


 なお、自分たちのせいとは言え初っ端からギルドマスターに目をつけられてしまったレインはエアドが去ってから思わずため息を吐いてしまうのであった。










「それで、レイン。さっきのアレは何?」


 レインたちが冒険者ギルドへと戻ってくると、少なく無い視線がレインの方に飛んできていたが、それでもレインは極力気にしないようにしてさっさとシーナに個室へと案内してもらうことにした。


 後ほどナウナーたちもやってくるようだが、その前にクロナとシーナがレインに聞きたいことがあるらしく、しばらく待ってくれと先ほどシーナがエアドに連絡していたので、そちらがくるのはもう少し後になるだろう。


 レインは必死に道中に言い訳を考えていたが、いざ個室へと入りクロナから直球で聞かれると尻すぼみしてしまって頭の中が一瞬で真っ白になってしまった。


「さ、さっきのはと言うと?」


「昨日、レインはレベル4だって言った。普通、レベル4が無詠唱魔法なんて神様からスキルをもらうかいっぱい努力しないと無理」


「それに加えてレインさんは昨日の時点で神様に特殊なスキルを戴いたなんて話はしていなかったですよね?」

「あ、アレは……」


 レインはどうにか誤魔化そうと今までに無いくらい頭の中をフル回転させる。


 正直に話してしまおうかとも思ったが、まだ出会って2、3日しか経っていな人物に話せる内容でも無いし、レイン自身まだ異世界に転生した件についてや白き悪魔のことについては黙っていたかった。


 そうなると必然的に昨夜に使用した経験値ポーションの話なども誤魔化す必要が出てきて、結局根本の部分から誤魔化す必要が出てきてしまったのだ。『練習部屋』のことも話したところできっと信じてもらえないだろうし、結局は笑って誤魔化すしかなかった。


「むぅ……話せないの?」


「ご、ごめん。自分でも色々と常識はずれなことをしてきた自覚はあるからさ……色々と話せないことが多いんだ」


「そうですか。クロナさん、ここは一旦私たちが引きましょう。レインさんも色々と疲れていますでしょうし、これからまだしなくてはいけないことが残っていますからね」


「……そうだね」


 レインが申し訳なさそうな顔をしながら2人に頭を下げると、2人とも少し不満そうではあったがそれ以上突っ込んでくることなくすぐに引き下がった。


 シーナの言う通り、これからまだナウナーたちの処遇を決めなくてはいけないのであまりゆっくりと話していられないのである。


「シーナ、ナウナーさんたちってこれからどうなるの?」


「魔剣を使用した時点でこの街の規則に反していますので、レインさんの奴隷になろうが一旦は詰所の方でしばらくの間服役しなければいけませんね。レインさんは無事でしたけど、本来魔剣とは魔の者が使用する剣として人族が所持するのは禁止されているのですよ。まぁ、高ランク冒険者になりますと、所持が認められるケースもありますけどね」


「へぇ……」


 シーナの説明にレインは納得したように頷いた。


 レインもあんな危ない物を所持している人が多いのかと心配していたのだが、どうやら本来低ランク冒険者であるナウナーたちが魔剣などを所持するのは違法だったらしい。


 どうやら魔剣もレベルが高かったり精神力が強かったりすると使いこなせるようになるらしく、冒険者ランクが高かったり、国に認められれば魔剣の所持が認められるらしい。


 逆に、レベルが低かったり精神力が低かったりすると魔剣に取り込まれてしまうため、使用することはおろか売買に関わることすらダメらしい。現に、ナウナーたちは魔剣などに取り込まれてしまいかけていたのでシーナとクロナの言っていることは正しいのだろう。


「あ、ギルドマスターがやってきたようですね。この話はまた後で、と言うことにしましょうか」


 魔剣の話で盛り上がっていたレインたちであったが、ノックの音でそれも終了ということになった。


 この個室に用があるのはギルドマスターであるエアドとナウナーたちだけなので、シーナもささっとドアの方まで行きギルドマスターたちを迎えることになった。


「そろそろいいか? シーナ、色々話は聞けたか?」


「いえ、まぁもしレインさんから色々話を聞けたとしても、ギルドマスターに伝えるかどうかはわかりませんけどね?」


「ハッハッハ! レインは随分とシーナに気に入られているようだな。こいつがここまで大胆なのは初めて見たぞ」


「そうなんですか?」


「あぁ、シーナはまだギルド員歴が長いわけでは無いが、それでもこいつがここまで一冒険者に肩入れするのは初めて見たぞ」


 エアドは面白そうにしながらレインに向かってそう言う。


 レインがチラッとシーナの方を見るとニッコリと笑って肯定の意を言外に伝えている気がしたのでレインはありがとうございますと素直に礼を言っておいた。


 最初はシーナとクロナの暴走でナウナーたちと戦わなくてはいけなくなってしまったが、それでシーナからの信頼を得られたのなら頑張った甲斐もあったなとレインは今更ながらに達成感のようなものを感じていた。


 一方でクロナもレインにシーナと同じようなことを思っているのか、クロナはレインの袖をクイッと引っ張り人差し指を自分の方に向けて自分も感謝しているぞという意思表示をする。


「今回の新人は色々と大物みたいだなっと、そんなことよりもさっさと入ってこい」


「「「はい……」」」


 エアドは思い出したかのように後ろに連れていたナウナーたちを呼び、一緒に個室へと入ってきた。


 先ほどまでレインたちは仲良く3人で席に座っていたが、今は今回の主役でもあるレインとギルドマスターであるエアドが対面で座る形になっていた。


 まだ席に余裕があるので全員座ればいいのにと思うレインであったが、ナウナーたちが入ってきたことによってクロナとシーナの機嫌が悪くなりものすごい空気が悪くなってしまい迂闊に発言することができなかった。


 さすがAランク冒険者といったところか2人は今のレインでは全くもって敵いそうにない雰囲気を醸し出しており、そのせいでナウナーたちが可哀想なくらい縮こまってしまっている。


 しかも何が怖いってクロナは不機嫌ですと顔に書いてあるのだが、シーナはニッコリと笑っているのにも関わらず不機嫌オーラがバシバシとレインにも伝わってくるのだ。


 そんな2人からの威圧を受けているナウナーたちのことを内心で可哀想だなと思いながらレインはエアドと話を進めていくのであった。


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