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裏切り

おおよそ、ミユさんから伝えられたことと本に書かれていることは間違いなかった。帝国は近隣三国だけを過去に征服しており、現在は自治権を与える形で独立させている。


世界中に広がっているのは帝国経済圏と言い、帝国通貨を導入している国達の総称である。この経済圏には帝国の優位性はなく、貨幣発行に関しても帝国以外の場所でも認めている。本を確認する限り、ミユさんの話を聞く限りでは僕達の認識が誤っていたとしか言えないだろう。

 

それから、シズと話をした。食事が運ばれ、ベッドに潜っても話しをした。わずか十日前後。それだけしか離れていなかったのに、話すことは沢山あった。

話が途切れたタイミングでシズに尋ねる。

 

「シズは、これからどうしたい?」

 

「共和国か帝国ってことだよね?」

 

「うん」

 

シズもこれが指す意味が分かっているだろう。選択次第では僕達の過去を、僕達の意味を無くしてしまうのだから。

 

「帝国に居たい」

 

思いのほか、答える口調はしっかりとしていた。

 

「ちょっと前から疑問に思っていた。でも、何を疑問に思っているのか私でも分からなかった。だけど、帝国で話を聞くにつれて、良く分かった。共和国がおかしいってことが」

 


ゆっくりと、確かめるようにシズが話す。


漠然とし過ぎた呟きだけど、その気持ちは理解できる。僕が愛国心を持っていたようで、愛国心が空っぽだったのと同じだろう。心の奥底では共和国を信じていなかったんだ。だけど、信じなくちゃ僕の存在を否定してしまうから、表面上は信じていたんだ。

 

「・・・ネオはどう思うの?」

 

隣のベッドから不安そうな顔が見える。

 

「勿論、同じだよ」

 

「良かった!」

 

ふぅ、と安心したような顔を見せるシズ。もし、僕が共和国に戻るという選択肢を選んだらどうしよう、と思っていたのだろう。ま、共和国に戻るって選択肢を選んでも無事に帰れそうにない確率の方が大きい気がするな。

 

ティトもこんな問題に直面しているのだろうか。数少ない友人の顔を思い出す。だけど、彼がこの問題に直面した時に下す決断を僕は容易に想像できる。


何もない天井を見上げて、ため息をつく。

 

朝、目覚めると隣にはシズが居た。時刻は九時を回っている。こんなにじっくりと眠れたのは久しぶりだ。シズの頭を浮かし、枕を滑り込ませる。シズとパートナーになってから身につけた特技の一つだ。

 

それからしばらくしてシズが起き上がり、朝食が運ばれてくる。食事の質の良さから、皇宮にいることを思い出す。

 

「それじゃ、帝国軍に入ることを伝えたいと思うけどシズも来る?」

 

「うん!」

 

警備兵を呼び出し、用件を伝えると、今は忙しいが、昼過ぎなら時間を取れるとのことだった。

 

それから二人で落ち着かないまま時間を過ごす。シズは何度もベッドと椅子を行き来し、僕は本の同じページを何度も読み直す。それもそうだろう。何せ、生まれてからこれまでお世話になった共和国を裏切るのだから。

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