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ラウラの回想

ネオとの出逢いは精錬場だった。


初めは個体番号が近い人、という認識。


私は当時、人を嫌った。誰もが私よりも剣の扱いが下手で、学力も私より下。


人を見下し、私が最も優れた人間であると思っていた。


そして、私よりも劣っている人間と戯れるのは時間の無駄だと認識していた。


今考えて見ると、よくそんな年齢でその思考にたどり着いたな、とまで思ってしまう。


ともかく、私は精錬場の同級生と話すことすら嫌い、話しかけられたら露骨に嫌な顔を向けた。


それを続けていくうちに、ただ嫌われていただけにも関わらず、孤高の天才と教官に言われるようになった。


それが10歳前後だったような気がする。


そして、その頃になると、私は自分が天才だと信じることは出来なくなっていた。


理由として、剣技では負ける回数も増え、勉学では「本当」の天才が私のスコアを飛び越える事実。


そして、これまでの自分の行いを反省し、皆の前で謝ったが、私を見る目は冷ややかだった。それもそうだ。


これまで、さんざん馬鹿にしてきた態度をとっていたのに、はい、そうですかで許される訳がない。


だが、皆が冷笑しながら立ち去った後に、彼は私に手を差し出してくれた。

 

「謝れることは凄いんだよ」

 

カッコつけようなんて微塵も考えていない、屈託のない笑顔でそう言ってくれた。


思い返せば、いつも私がペアを作れない時は手を差し伸べてくれていた。


一人でご飯を食べている時には声を掛けてくれた。


その優しさに気付いた時、私は生まれて初めて涙を流した。

 


過去を思い出せば、思い出すほど、彼に会いたいという気持ちが強くなる。

 

しばらく寝ていたのだろう。暗くなり始めている空をフロントガラスを通して確認する。

 

「あ、起きましたね」

 

助手席にいるナナが声を出す。

 

「報告、聞きます?」

 

顔の表情からは何も読み取れない。

 

「・・・うん、聞かせて」

 

ネオだけが救出できたこと。ネオより前にいた車両は完全に瓦礫に潰されており、死は免れない常態だったこと。ネオの証言と現場にシズ、ティト、レイが居ないことから、3人は帝国に拉致されたことが間違いなこと。

 

「・・・うん。そう」

 

私にとって最悪と言える内容は避けられたのかもしれなかった。だけど、ティト、シズ、レイを失った悲しみは想像以上に心へと刺さった。

 

だが、ネオは生きている。それだけが胸の明かりとなった。

 

数時間後にネオが脱走兵として認定されるなんて、思いもよらずに。

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