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8話:冒険者としての初依頼、決めました。


「これまた想定外のことだねぇ……。まぁ、この街を壊さないでくれたら良いよ」

「壊すつもりはありませんよ。ねぇ、ヒスイ?」

「うむ。人間が我らに度の過ぎた関与をしない限りは手出しはせん」


 度の過ぎた関与ってどこまでを言っているのでしょうか。ヒスイとアヴァの間に何やらひんやりとした空気を感じます。


「……あと、一応これにも触れてくれ。これに触れたら冒険者カードが出てくる」

「わかりました」


 丸い水晶を取り出してずいっと僕の前に置きました。僕がその水晶に手を置くと、ぱぁっと光って一枚のカードが出てきました。これが冒険者カードでしょうか。


「ちょっと見せてくれるかい?」

「どうぞ」


 アヴァにカードを渡すと、彼女は何かを確認するかのようにじぃーっと見て、それから「……人間と精霊のハーフとは、こんなに魔力が……って言うかもう人間の魔力じゃないよなこれ……」とぶつぶつ呟きました。アヴァにカードを返してもらって僕もじっくりとカードを眺めました。


「あの、私も書けました」

「ならば、君もこれに触れてくれ」

「はい」


 マオも同じように水晶に触れました。すると、やっぱりカードが出てきました。不思議な仕組みです。魔法……なんでしょうか。そしてマオのカードも見て、アヴァは「……すごい奴らが来たもんだ」と呟きました。


「マオ、だったか。君はどこの村の出身だ?」

「ええと、アントハムの出身です」

「ここを見てごらん」


 カードを見せて指差す。僕らも一緒に見ました。回復魔法力∞となっていますね。さすが神様に愛されている子。


「えええ……」

「確かにアントハムの周辺には竜の住む山があったな。もしやそこの竜が?」

「そうだ」

「中々にとんでもない仲間が集まったものだな、アイリス」

「そうですね」


 僕がそう言うとアヴァは「……」と呆れたような顔をしました。なぜでしょうか。


「しかし、君の容姿は問題だな。人によって違う姿に見えるのは……」

「そうなんですか? ……でしたら、ちょっと待ってください」


 目を閉じて精霊たちを呼び、僕の姿を定めて欲しいと願いました。精霊界の僕の姿は性別こそないものの定まっていたので、その姿に。

 さらさらと流れる肩までの金髪、瞳はお母様譲りの紫水晶のような色になっているでしょう。


「精霊界ではこの姿で暮らしていたのですが、人間界でも問題ありませんか?」


 すっと目を開けて尋ねると、アヴァもマオも「……性別不明、恐るべし」とよくわからないことを口にして、同じことを口にしたからか、がしっと握手をしていました。問題はなさそうですね。


「あ、僕の魔力∞なんですね」

「人間の魔力量じゃないね……」

「マオの回復魔力を考えると、後衛パーティになってしまいますね。前衛が欲しいところです。あ、僕がやれば良いのでしょうか」

「どうしてそうなる!? パーティメンバーを募集すれば良いだろうが!」


 なるほど、そう言うことも出来るんですね。人間界って面白い。でも……ちらりとマオに視線を向けると、マオはちょっと考えているようです。


「とりあえず、簡単な依頼を受けてから決めましょう? アイリスの目的もあるんだし……」

「はい、それで構いません。簡単な依頼ってどんな依頼があるんでしょうか」

「あ~。冒険者ギルドって言っても、ようは何でも屋みたいなもんだからな。初心者にもやりやすい仕事はたくさんあると思うが……。報酬は期待するな」


 簡単な依頼はそれほど報酬が出ないんですね。なるほど。最初のうちはそんなに稼げないと言うことなのでしょうか。……だとしたら、彼らは少ない報酬を分けていたと言うことなのでしょうか……。それは確かに大変そうですね。


「依頼をこなしたり、魔物を倒せばカードにポイントが付く。所謂経験値、だな。それが一定まで貯まればランクアップの試験を受けられる」

「ランクアップの試験?」

「そうだ。中級レベルからは依頼がどっと増える代わりに、難易度も跳ね上がる。そのため、ここで試験を行いその試験に受かれば無事にランクアップと言うわけだ。上級、特級も同じように試験がある。だからこそ、人によっては中級で良いと上級の試験を受けないものも居るし、まぁ、人生色々ってことさ」


 なるほど、勉強になりますね。覚えておきましょう。中級に上がるのにどのくらいの時間が掛かるかはわかりませんが……。いつか上がれたら嬉しいですね。


「ま、頑張れ。それじゃあ、依頼を受けるにしろ、一度装備を整えるにしろ、色々気をつけていきなよ」

「ありがとうございます、アヴァ。それでは、失礼します」


 そう言って頭を下げてから立ち上がりました。マオとヒスイも一緒に、アヴァの部屋から出て、まずは依頼が貼られている掲示板を眺めます。どうやらランクで分かれているようですね。数字で分けられているようです。一から三までが特急と上級、四から六までが中級、七から九までが下級のようですね。僕らはこの下級の中から、ひとつ、依頼を選んでみました。


「冒険と言うか雑用じゃない? 書類の整理って」

「僕らまだ装備品揃えていませんし……こういう仕事でも、困っている人が居るのなら助けるのが冒険者なのでしょう?」


 にこりと微笑んで僕がそう言うと、マオは「はいはい」と言ってその依頼を手にしました。すると、ざわっと周りが騒がしくなりました。


「……一応、念のために言っておくけど、その依頼人、あんまりよくない人だから気をつけて……」


 と、誰かが忠告をくれました。一体どういう意味でよくない人なのでしょうか。気になります。そして、忠告をしてくれた人に「ありがとうございます、気をつけます」と頭を下げてから受付に向かい、あのお姉さんのところに提出しました。


「……ええと、ほ、本当にこの依頼を……?」

「はい。書類整理、頑張ります」

「わ、わ、わかりました……。か、カードの、提出を……お願い、します……」


 僕とマオがカードを提出するとお姉さんは「ひぇ」と変な声を出して僕らを手招きました。


「こ、こ、この魔力と、回復魔力は、隠した、ほうが……」

「そうなんですか? どうすれば隠せます?」


 ひそひそと内緒話をするように受付のカウンターに出来る限り近付いて尋ねると、お姉さんは「こ、こちらで、対処、しますか……?」と聞いて来たのでお願いすることにしました。マオもうなずいていたので、大丈夫でしょう。


「では……」


 とお姉さんがすっとカードに手を翳しました。何をどうやっているのかさっぱりわかりませんね。魔法としかわかりません。カードを返してもらったので、確認してみると数値が隠れていました。名前と年齢だけ確認出来れば良いようです。


「少し、弄りました……。はい、これで、大丈夫です……。あ、あの……。お気を、つけて……」

「ありがとうございます。それでは、初依頼、行ってきます」


 お姉さんから依頼書を受け取って、僕らは早速その場所へ向かうことにしました。初めての依頼、とても楽しみです!


少しでも楽しんで頂けたら幸いです♪

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