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7話:ヒスイと契約しました!


「……そうか。ならば、今度こそ最後まで見守ろう」

「え?」

「エラの時は約一年くらいの付き合いだったからな。エラの子ならば、我の同胞と言っても過言ではない。アイリスが旅を終えるまで、我はお前に付き合おう」

「……それって、僕に使役されたいってことでしょうか……?」


 精霊界で聞いたことがあります。人間が精霊を使う時は使役するのだと。そして、魔物を使役する人もいると。ちなみに精霊使いと魔物使いという名前がつくようです。僕がヒスイを使役したら何になるのでしょうか。竜使い?


「うむ。そのほうが互いにわかりやすくなるからな」

「便利なんですね」

「精霊が傍に居るから居心地も良いしな」


 マオはまだまだ混乱しているようですが、僕としてはヒスイが使役されたがっているように見えるので、そのまま使役契約を行いました。と言っても、そんなに難しい契約ではないので、さっくり済ませましょう。

 僕が立ち上がって部屋の中心に行くと、ヒスイは僕の前に移動しました。僕がじっと見つめると、ヒスイはこくりとうなずいて僕はヒスイの前に手を翳して言葉を紡ぎます。


「――汝、我がもとで天命を共に背負いしもの。我らが主のもとに集いしもの。汝、我を認めし時、共に生き行くことを誓わん――……」

「我、汝を認め、共に天命を背負うことを望むもの。さぁ、受け取れ、アイリス」


 僕の手の甲にぽぅ、と契約の紋章が現れました。それが一瞬緑色の光を放ち、それからその光が僕の左手に移動して緑色のチェーンブレスレットが現れました。これで契約完了です。


「い、今のって?」

「簡単な契約の言葉です」

「知っていることに驚いたがな」


 一応知識として知ってはいました。まさかこんなにすぐに使うことになるとは思いませんでしたが……。ちなみに僕の周りに精霊は別に使役しているわけではありません。どうやら、僕の中に流れるお父様の血に惹かれているようです。


「食事が出来たよー!」


 下の階から呼ばれたので、僕らは食事を摂ることにしました。マオは未だに混乱していましたが、何とか自分で落としどころを決めたようです。朝ご飯は焼き立てのパンとコーンスープ、サラダ、ハムエッグでした。とても美味しく頂きました。サラダはヒスイの分を別にくれました。優しいですね。


「さて、少々時間が掛かりましたが、冒険者ギルドに行きましょうか」

「そうね。やっとかぁ……」

「やっとですね」


 僕らの会話にびくびくと六人が反応するのがちょっと面白かったです。食事を食べ終わり、早速冒険者ギルドに向かいました。冒険者ギルトはこの宿から近いところにあるので行きやすいですね。

 冒険者ギルドの前に来て、僕はゆっくりと深呼吸を繰り返してからその扉を開けます。中はとても賑やかでした。こんなに賑わうんですね、冒険者ギルドって。ワクワクしながらカウンターに向かいます。そして、カウンターのお姉さんに声を掛けました。


「初めまして。冒険者ギルドに登録したいのですが、お時間頂けますか?」


 柔らかい口調で話し掛けると、お姉さんは持っていた書類を置いてから僕らのほうに顔を向けて、「か、かしこまりました」とぼそぼそ言いました。恥ずかしがりやなのでしょうか。俯いています。

 お姉さんはわたわたと書類を取り出しました。どうやら何か書かなくてはいけないようですね。


「ええと、その、あの、これにご記入をお願いします……」

「わかりました、ありがとうございます」


 しっかりと三枚、用意されていました。ヒスイも冒険者になれるのでしょうか。竜の冒険者……良いですね!

 僕はペンを借りてさらさらと書いていき……性別で迷いました。ヒスイも言っていましたが、僕の性別は定まっていません。いつか僕と番になる人が現れたら性別が定まるらしいのですが……。


「う~ん……」

「ど、ど、どこか、わからないところが、あ、あります……か?」

「性別って絶対に書かないといけませんか?」

「えっと……?」


 お姉さんを混乱させてしまいました。ヒスイが「あー……」と頭の上で声を出しました。


「ええと、あの、少々、お待ちください……」


 そう言ってお姉さんは奥へ向かいました。どうやら奥に部屋があるようですね。五分もしないうちに戻ってきて、それから僕らを奥へと案内してくれました。そこに居たのはいかにも強そうな女性でした。


「性別で悩むのは君なのかい? ああ、失礼。私はここのギルドマスターのアヴァだ」

「初めまして、僕はアイリスと申します」

「……ふむ。確かに男女共に見える顔だが……。ちょっと失礼」


 そう言ってアヴァはぺたぺたと僕の胸と股間を触りました。遠慮なく触って来たのでびっくりしました。


「つるぺたの女の子ってわけじゃないのかい? 股間についてないし」

「それは多分、あなたが僕のことを女の子だと思って見ているからだと思います。人によって見え方は違うので」

「へぇ。興味深いねぇ」

「ところで、どうして性別の項目が必要なのでしょうか?」


 僕がそう尋ねると、アヴァはソファに座ることを進めました。僕らがソファに座ると、対面にアヴァが座り、すっと足をクロスさせました。仕事のできる女性感がすごいです。格好良いですね。


「……女性の冒険者のためだ。いくら強いと言っても、男どもや魔物に襲われて子を宿してしまったら、それだけで冒険者としても女としても終わってしまう。人の心って言うのはそんなに強くないのさ。だからこそ、我がロージアンの冒険者ギルドでは、女性冒険者にあることを無料でしているんだ」

「あること? ああ、子を宿さないために?」


 こくりとうなずくアヴァは、苦々しく唇を噛みました。どうやら苦い思い出があるようです。


「そんなことが出来るのですか?」

「ああ。……君の場合はどうしたら良いのか悩むところだな」

「それなら心配いらないと思います。僕は決まった相手としか、子を作れないので」

「……は?」


 僕はお父様の子なので、次期精霊王らしいです。ですから、お父様が僕に教えてくれました。精霊は本当に好きな人とでなければ子を作れないのだと。なので、お父様はずっと独身だったようです。お母様と出逢わなければ、お父様は誰かに王位を譲って消えようかなーと思っていたらしいので……。


「……どういうことだい?」

「僕、精霊と人間のハーフなので」

「冗談……ではなさそうだけど……」


 マジマジと僕を見るアヴァに微笑んで見せると、なぜかため息を吐かれました。そして、「こういうパターンは初めてだ」と肩をすくめて、性別は隠しておけばいいと助言をくださいました。ありがたいですね。


「では、ここで書かせて頂きますね」


 性別の欄にお好きにどうぞと書いておきました。それ以外は全ての項目が埋まりました。それを確認してもらうと、「良し」とうなずいてくれました。そして――ヒスイの分も出すとアヴァは僕の頭の上にいるヒスイに視線を向けて、


「そのトカゲも冒険者になるのか……?」

「トカゲではありませんよ、ヒスイは」

「全くだ! なぜ人間はこの姿の我を毎回トカゲと言うのだ!」


 苛立ったようにヒスイが叫びました。トカゲが喋った、までが定番のネタなのでしょうか。


「――いや、それはアイリスが使役しているものなのか? それならば、冒険者に登録しなくても良いぞ」

「そうなんですか? 確かに先程使役契約を交わしましたが……」

「ちなみにそれ、トカゲじゃなければなんなんだ?」

「竜です」


 さらりと言ってしまったからでしょうか、アヴァが目を大きく見開いて「え、マジで?」と呟きました。マジです。


少しでも楽しんで頂けたら幸いです♪

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