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53話:本を借りました。


 それからさらに数時間、僕らは本を読むことに没頭していました。マオも一冊の本を読み終え、別の本をフローレンスに勧められて読んでいました。

 本を読んでいてわかったことがあります。僕とヒスイのマナは、もしかしたら相性が良すぎるのかもしれません。

 相性が良すぎると、逆にパスが狭くなるみたいです。互いのマナが混じり合い、不調になることもあるらしいので……。ヒスイが眠いのはそのせいだったりしますかね……? これを治すには、一度ヒスイと話し合ってみないといけません。……未だにすやすや眠っていますから、後で話し合うことにしましょう。僕の力不足なのか、それとも相性が良すぎるのか、どちらなのかはわかりませんが、きちんとお話ししなければなりませんね。

 とりあえず、僕は望んでいた情報を得ました。マオのほうに視線を向けると、マオは難しい顔で本を読んでいました。


「……どうしたの、アイリス?」

「いえ、真剣な表情でしたので……」

「うん、ちょっとね」


 他の人の迷惑にならないように小声で話します。僕はぱたんと本を閉じました。読み終わっていない本を宿屋で読みたいのですが……ええと、図書館の本は読み終わるまで図書館に居ないといけないのでしょうか。利用するのが初めてでわかりません……。精霊界にある本はどれも私物なので、『貸して』と言えば『良いよ』で終わりなんですよね。ダメな時は『読んでるからダメ』と言ってくれますし。


「何かお困りですか?」

「素晴らしいタイミングです、フローレンス。この本は借りることが可能でしょうか?」

「もちろんでございます。汚さないでくださいね」

「わかりました」


 そして、僕は本を借りるためにカウンターに向かおうとしました。マオは「私も借りるわ」と立ち上がり、読んでいる途中の本を持って来ました。

 フローレンスはカウンターで本の貸し出しについて話してくれました。期限は二週間。本は汚さないこと。汚した場合罰金が発生すること。返却時、急ぎの時は門番に渡しても構わないと言うことを説明してくれました。なるほど。きちんと期限以内に読んで返却しましょう。

 本を鞄にしまって(マオの分も入れました)、図書館を後にしました。フローレンスが見送ってくれました。……司書の仕事のうちなのでしょうか? あんなにたくさんの本があるのに、的確に見つけられるのすごいですよね。僕には無理だと思います。


「これからどうするの?」

「冒険者ギルドで小切手を替えてもらいましょう。僕とマオとウィルで三等分です」

「ヒスイの分は?」

「ヒスイのものは僕が買うつもりです」


 だってヒスイの契約者は僕ですから。……ただ、ヒスイに掛かる費用ってあまりありませんよね……。食費くらいでしょうか……?

 ヒスイを飾り付けたいわけではないですし……。そもそも、今のヒスイのサイズに合わせて飾り付けても、元の大きさに戻ったら破れたり壊れたりしそうじゃないですか? 僕が読んだ本では都合よく伸縮自在なものしかありませんでしたが……。伸縮自在なものってどんなものなのか知りませんし。それでも手のひらサイズのヒスイにぴったりなものが、最初に会った時の大きさになったら……と考えると……伸縮自在なものでも似合わなそうな……。

 今のヒスイはすごく可愛い系ですから。大きいヒスイは格好良い系でしょうか?

 そんなことを考えながら歩いていると、冒険者ギルドにつきました。ギルド内に入るとウィルが奥から出てきました。丁度良いタイミングだったのかもしれません。


「アイリスにマオ、今から依頼を受けるのか?」

「いいえ、昨日もらったのを……」

「ああ」


 納得したように小さくうなずいて、ウィルは僕を見ました。僕が首を傾げると、ぽんぽんと頭を撫でて外へ出て行きました。……ウィルは僕の頭を撫でるのが好きなのでしょうか。はっ、もしかしたら弟扱い……? ……いえ、ウィルの様子から同性と言うよりは異性のように扱われているような気がします。

 ……と言うか、ウィルがそう言うことをしたからでしょうか……、他の冒険者たちからの視線を感じます。まぁ、その視線を気にする僕ではないので、リリーの元に向かって昨日頂いた小切手を取り出してお金をもらいました。アヴァはもしかしたら三等分出来るように気を遣ってくれたのかもしれませんね。


「あ、あ、あ、あの……」

「どうしました?」

「……の、の、ノアと言う方、から……『ローブは一週間後に』と、で、伝言をたの、まれました……」


 ノアがロージアンに来ていたのでしょうか? ぱちくりと目を瞬かせると、リリーが不安そうに僕を見ましたので、僕はにこりと微笑みました。


「わかりました。一週間後ですね。マオのローブを依頼していたので、そのまま受け取ってくださると助かります」

「は、はい……。……あの、あ、アイリスさん……の、ノアさんのお嫁に、なるんですか……?」


 不安げに言われて目が飛び出るかと思いました。リリーに一体何を言ったんでしょうか、いえ何となくわかります。わかりますが……。一度、ノアとは徹底的に話し合わないといけないかもしれません……。とりあえず、これだけは否定しなくては。


「ノアと結婚する予定はありません。一切合切ありません。絶対に」

「……は、はい。そ、そ、そうですよね……! あ、安心しました……!」


 否定の言葉を重ねると、リリーはホッとしたように息を吐きました。外堀から埋めるつもりでしょうか。埋まる外堀が僕にあるとは思えないのですけど……。なにせ、人間界に来てからまだそんなに経っていないので……知り合いもほぼいませんし。


「荷物を受け取ったら教えてください……」

「わ、わ、わかりました……」


 リリーにそう伝えて僕はマオの元に向かいました。マオは僕の顔を見て怪訝そうな表情を浮かべて「どうしたの?」と聞いて来たので、僕はマオの手を取って、ぽすっと僕の頭に載せました。マオの顔に「???」と書いてありますが、わしゃわしゃ撫でてくれました。


少しでも楽しんで頂ければ幸いです♪

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