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45話:ロージアンに戻る前に。


 その日の夜は長かったです。僕のリュートの音色を気に入ってくれて、村人たちや女性たちは曲のリクエストをしてくれました。

 いつの間にか用意された料理はとても美味しくて、ヒスイも野菜の味を気に入っていっぱい食べてみました。みんなでワイワイと楽しんで、村人たちも女性たちの表情も、優しくなっていました。――ほんの少しでも、彼女たちの心が癒えますように。

 深夜まで続いたちょっとした宴は終わりを告げ、それから僕らは教会に戻って休むことにしました。今日はマオと一緒に眠りました。子どもの頃にお父様とお母様と一緒に眠った時、こんな風にぽかぽかとしたなぁと思い出してちょっとだけ懐かしんでみたり。

 目を閉じるとあっという間に眠りに落ちました。ぎゅっとマオが抱きしめてくれたような気がします。





 そして翌朝、僕が起きると同時にマオも起きたようです。眠そうに目を擦りながら「おはよう、アイリス」と挨拶をしてくれました。


「おはようございます、マオ。マオはお風呂ですか?」

「うん……、行ってくるね」


 眠そうなままタオルや服を持ってお風呂場へ向かって行きました。僕も身支度を整えましょう。精霊に頼んで髪と身体を綺麗にしてもらって、服を着替えて鞄を持って部屋から出ると、ウィルが待っていました。


「おはようございます、ウィル」

「おはよう。よく眠れたか?」

「はい、ぐっすり眠れました!」


 マオが抱きしめてくれていたおかげで、ぽかぽかと温かく眠れました。今日はロージアンに戻る予定なので、その前にシスターたちに会っていきましょう。礼拝堂まで向かうと、シスターらがお祈りをしていました。……彼女たちは一体何時起きなのでしょうか?

 お祈りを終えたシスターが僕らに気付いて、「昨日はよい演奏をありがとうございました」と微笑んでくれました。


「こちらこそ、村人たちを集めてくださってありがとうございました」

「ふふ。演奏を聞く機会なんて滅多にありませんから。……彼女たちも、喜んでいました。自分たちを救おうとしてくれる人たちが居ると言うことに、感謝しておりました」


 喜んでくれたのなら良かったです。僕の演奏でどのくらいの心が動かせたのかはわかりませんが……。自ら前を向いて歩き進んでいく人たちの背中を押せるようになりたいですね。今回のことで、僕に新たな目標が出来ました。助けられる人たちは助けたいですし、悲しんでいる人を見たら励ましたい。人々を笑顔に出来るような――そんな吟遊詩人になりたいです。


「そう言えば、ウィルはお風呂に行かなくて良いんですか?」

「さっき行った」


 いつの間に……。そう言えばちょっと髪が濡れていますね。「ちょっと屈んでください」と口にすると、ウィルは素直に屈んでくれました。そっとウィルの髪に触れると、精霊に頼んで彼の髪を乾かしてもらいました。ウィルはぼっく利したように目を丸くしましたが、髪が乾いていることに気付いて「便利なもんだな」と口にしました。


「魔法が使えるのなら、ウィルにも使えるんじゃ?」

「オレ、風魔法しか使えないんだよ……」


 あの時冒険者をぶっ飛ばした魔法ですよね。……向き不向きがあるのはわかりますが、魔法にも相性というものがあるのでしょう。全属性を使える人のほうが珍しかったりするのでしょうか……? ……まさかね。


「アイリスは風呂に入らなくて良いのか?」

「……お風呂に入ると五分もしないうちにのぼせることが判明したので……」

「……それは、やめたほうが良いな……」


 精霊に感謝です。精霊界に居た頃からお風呂に入っていたら、耐性がついたのでしょうか……。でも精霊たちが身体も髪も綺麗にしてくれるし……。人間界ではそれが便利なのか不便なのかわかりませんが……。


「あ、アイリスでも大丈夫そうなの思い付いた」

「?」


 ウィルはそう言うとシスターにちょっと大きめのバケツ、または桶がないかを尋ねました。シスターは「ございますよ」と言うとすぐに持って来てくれました。ちょっと大き目な桶を持って来たシスターに、ウィルがお礼を言って、そのまま教会の外に向かうと外のベンチに僕を座らせました。


「アイリスはお湯を沸かせるか? そんなに熱くない……。四十度くらいのお湯」

「お湯というにはあまりにも温すぎるんじゃ……?」

「良いから」


 出来ますけど……と口にして、桶の中にお湯を入れました。


「靴を脱いで、そのお湯の中に足を入れてみて」

「?」


 言われたとおりに靴を脱いで桶の中に足を入れてみます。四十度程度のお湯なのであまり熱くはなく、それよりもじんわりと温かさが足に伝わってきます。ウィルは僕の隣に座り、空を見上げるように顔を上げました。


「……確かにこれなら大丈夫そうです」

「それなら良かった。足湯って言うんだ」

「足湯……。ふふ、マオも気に入りそうです。今のサイズのヒスイなら、このサイズの桶でも大きそうですね」

「確かに……」


 そんな話をしていたら、マオがお風呂から上がったのか僕らの元に来ました。ヒスイと一緒に。


「ヒスイ、おはようございます」

「おはよう……ところで、何をしてるんだ?」

「ウィルが教えてくれた足湯を試しています」


 マオが「へぇ、足湯」と珍しそうに見ていました。そして心配そうに僕を見て、小声で「大丈夫?」と聞いてきました。全身浸かっているわけではないので大丈夫そうです。こくりとうなずくと、マオはホッとしたように微笑みました。


「それでは、全員揃いましたし……ロージアンに戻りましょうか」


 クエストの完了報告と、核を売って……。もうちょっとクエストをこなしたいところです。僕の旅に期限はありませんから、のんびりと心行くまで人間界を楽しむつもりです。

 桶から足を引き上げて精霊に頼んで乾かしてもらって、靴を履いて……。桶のお湯は捨てて、綺麗に洗ってからシスターに返しました。


「馬車の時間まだあるぞ」

「……え。ええと、じゃあ、挨拶していきましょうか。マオとヒスイも一緒に」


 馬車の時間までは考えていませんでした……!

 そもそも馬車っていつでも乗れるものじゃなかったんですね……? ウィルが乗っていた馬車は借りたものでしたし……。

 ロージアンに戻る前に、あのおじいさんから野菜を買って行こうかなと思います!


少しでも楽しんで頂ければ幸いです♪

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