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3話:最初の目的地が決定しました!


「さて、これからどうするのだ?」


 ヒスイが僕に聞いてきました。そこで僕は、僕の目的を話しました。すると、特に目的もないし僕の旅に付き合ってくれると言ってくれたのです! 僕は嬉しくなって彼女の手を取ってぶんぶんと上下に動かしました。人間界ではこれで喜びを伝えられるらしいです。


「ちょ、ちょっと、なに?」

「あれ? 人間はこうやって喜びを分かち合うのではないのですか?」


 僕が首を傾げると、マオはぱちくりと目を丸くして、それから「はぁぁあああ?」とよくわからない声を出しました。驚いているようです。おかしいな、僕が読んだ本ではこう書いてあったのですが……。


「……あんた、一体どこから来たのよ」

「んー……僕を呼ぶときは名前か『きみ』でお願いします。マオのように美しい人に、『あんた』なんて言葉似合いませんよ」


 繋いだ手を離して、マオの唇に人差し指を当てて微笑むと、彼女はかぁっと頬を赤らめました。お母様をお手本にしてみたのですが、成功のようです。ヒスイが僕の肩ではぁ、とため息を吐きました。謎です。


「……あ、でも待って。旅に出る前にこの格好何とかしなきゃ」

「似合ってますよ?」

「……。旅には相応しくないでしょう、花嫁衣裳なんて」


 あ、やっぱりその恰好ウェディングドレスだったんですね! 僕の考えは間違っていなかったようです。……確かに旅をするにはちょっと、いえかなり動きづらそうですよね……。僕がじっと見ていたからか、マオはぎゅっとウェディングドレスを掴みました。


「……このドレスって、返品するものなのですか?」

「え? さ、さぁ……? 別に良いとは思うけど……」

「なにせ生贄の衣装だからな。毎回毎回毎回……!」


 ヒスイ的にかなり鬱憤が溜まっていたようです。要らないと言っているのにぞくぞくと来られたヒスイの気持ちを考えると、なんだか複雑ですね。


「なら、僕がちょっと細工をしてもいいですか?」

「細工? 別に良いけど……それなら、村に戻ってから」

「いいえ、ここで大丈夫です」


 ――さぁ、出番ですよ、精霊たち。

 ぽぅ、と優しい緑色の光が現れました。それから、様々な属性の色が。マオはびっくりしたように目を大きく見開いて、「え? え? え?」と混乱してしまったようですが、精霊たちが頑張ってくれたのであっという間に彼女の服装が変わりました。


「……アイリスは精霊使いなの?」


 白をベースにした服装ですが、冒険をしやすいように色々と細工をしました。ウェディングドレスは足首まで隠れるタイプだったので、布は充分ありましたし……。動きやすいようにキャロットパンツ、白のニーハイ……絶対領域、でしたっけ? これも本に書いてありました。靴も高いヒールでは歩きづらそうなので、低めのヒールに。上半身には腕まくりをしやすいようにボタンをつけて、デコルテを見せるのはマオくらいの年齢では普通なのでしょうか? なんだか露出が多いのは寒そうに見えたので、タートルネックで。寒さ対策に余った布でマントも。それぞれ緑、赤、青、黄色の糸で仕上げて――うん、綺麗、です。


「……そう言えば、僕ってどういう存在になるんでしょうね?」


 精霊界のことしか知らない僕は、この人間界では多分……いえ、かなり浮いた存在になりそうですし……。


「精霊使いでもこんなに精霊が協力することはないぞ、マオ」

「そうなの? なら、どうしてアイリスは……」

「ん~と、それは僕がただ単に、精霊と人間のハーフだから……でしょうかね?」


 僕がそう言うと、マオとヒスイが同時に「ハーフ!?」と声を出しました。そんなに珍しい存在なのでしょうか。確かに精霊界では見たことありませんでしたが。ヒスイが僕の肩から離れてじぃーっとこっちを見ました。


「……お前の母の名は?」

「エラ・ロックハート、ですけれども……?」


 ヒスイが驚いたように、目を瞬かせ……それからくっくっくと身体を揺らして笑い始めました。そしてちょこんと僕の頭に乗ってぺしぺしと軽く叩きました。叩いているのか、撫でているつもりなのかよくわかりませんが、ヒスイは「そうかそうか」と僕の頭の上で何かを納得していました。


「精霊と人間のハーフって、あんた……、アイリスは、今までどこで暮らしていたのよ?」

「精霊界です。綺麗なんですよ~。旅立とうとしたら、マオの悲鳴が聞こえてきたんです」

「それは……なんか、ごめん?」

「いえいえ、こうやって仲間が出来たので嬉しいです!」


 ぽんぽん、とマオが僕の肩を叩きました。どうしたのでしょうか。頬が赤くなっています。


「……あのさ、旅に出る前に、行きたいところがあるんだけど、良いかな?」

「もちろんですよ」


 ありがとう、と微笑むマオは、やはり美人でした。

 そうして、マオはスタスタと歩いていくので僕たちもついて行くことに決めました。マオは迷わず歩いていきます。見晴らしの良い丘まで、真っ直ぐに。そして――マオの目的地についたようです。


「ここは?」

「私の両親のお墓。村にはお墓を作らせてくれなくてさ。挨拶、していこうと思って」


 そう言ってマオは墓石の前にしゃがみ、両手を合わせた。目を閉じて祈るようなその姿に、光が満ちました。――ああ、やっぱり。マオは特別な人間のようですね。ヒスイが僕の頭をぺしっと叩きました。地味に痛いです。


「マオは人間だよな?」

「ええ。ですが――とても、神様に愛されているようですね」


 僕はマオの隣にしゃがみ、同じように手を合わせました。マオと一緒に旅立つことを、ご両親に報告したのです。……恐らく、マオもそうなのでしょう。ちらりと彼女を見ると、祈りの言葉を口にしていました。


「――よし、これで大丈夫!」


 満足するくらいご両親に報告したのでしょう。マオは立ち上がると僕に手を差し出しました。僕はその手を取って立ち上がります。


「ありがとうね、一緒に祈ってくれて」

「いいえ。それでは、改めて――出発、しましょうか」

「うん!」

「ああ。……ところで、アイリス、ここからどこに向かうんだ?」


 ヒスイの言葉に僕はごそごそと鞄から地図を取り出しました。パラパラとめくって、現在地を確認すると、ヒスイがふと思い付いたようにこう言いました。


「どうせなら、冒険者ギルドで冒険者登録したほうが良いのではないか?」

「冒険者ギルド? え、人間界って本当にそう言うギルドがあるんですか?」

「あるわよ~。そうね、身分証にもなるし、私も冒険者になろっかな」


 ふむ、と呟いて僕は精霊を呼び、どこに行けば冒険者ギルドがあるのかを聞きました。すると、精霊がくるっとひとつの街を教えてくれたので、マオを見るとこくりとうなずき、ヒスイは僕の頭の上で「そこが一番近い」と教えてくれました。街の名前はロージアン。よし、最初の目的地はここに決定です!


少しでも楽しんで頂けたら幸いです♪

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