独自のスキルを覚えるまで特訓をしてみる。えっできない? それってやってみたの?
この世界にはスキルという能力が存在していた。
スキルとはスッとキルをおこなう技のことで気が付いたら相手が死んでいる技のことを言う。
なんてことはもちろんない。
スキルとは独自の特性にあわせた技のことでドワーフだと鍛冶スキルを持っていたり、エルフは植物育成など独自のスキルを持っている。
種族の特性で生まれた時からギフトとして持っていたり、成長の途中で熟練度があがるとスキルを覚えたりする。種族によっては成長と共に派生のスキルを身につけたりといろいろだ。
俺の場合生まれ持った才能なんてものは何もない。
種族特性のスキルなんてものもない。
だけど、実はこの世界でも継続することでスキルを身につけることができる。
なんで俺がそんなことを知っているかと言うと、近所のガッポという老人が植物育成というスキルをもっているというのを教えてくれた。
ガッポは人族で現在78歳の老人だ。
78歳には思えない筋肉隆々の白髪の老人で未だに片手斧を振り回して猪のような魔物を森に狩りにいくつわものだ。
そんなガッポの本職は農業で、そのスキルを身につけたのは20歳を過ぎた頃だという。
ガッポの家の野菜は確かに美味い。
今まで野菜なんて好き好んで食べる方ではなかったがガッポの野菜は疲労がポンと回復してしまうのではないかと錯覚をおこすほど身体に栄養がしみこまれるのがわかる。
別にへんな薬などは使っていないと思うが。スキルを身につけると断然効果が変わってくる。
それ以外にも毎日兵士として働いていた男が剣技のスキルを身につけていたり、先天的なだけではなく後天的にでもスキルを身につけている大人が沢山いる。
もちろんこのスキルというのは人に自慢するものでもテレビゲームのウィンドウ画面のように表示されるものでもないので一人一人に聞いていった結果だ。
だから確実だとは言えない。でも、スキル持ちだと言っていた人の動きはあきらかに違っていたし、同じ種から植物を育てても結果が変わっていた。
そこで俺が願ったスキル。
その名も
『パターン化』
きっと頭の中にはてなが出て来た人も多いだろう。
何を言っているんだ。
頭の中でガッポの野菜の事しか考えられなくなっているんじゃないか。
とかそんな怪しいことを思った人もいるかも知れない。
このパターン化のスキルと言うのは俺がパチプロニートをしていた時に唯一使っていたのと同じ考え方だ。
勝率が高くなるパターンを分析してその通り立ち回る。
それをこの世界に当てはめてみると。
多くの仕事というのは大きな視点で見ると同じパターンで動いているのがわかる。
例えば農業なら春に種まきをして、夏に肥料を与えて、秋に収穫し、冬は畑を休ませる。
かなりざっくりだがこれが1つのパターンとなる。
このスキルと言うのはこのパターンを分析して自分のものにすることができる。
もちろん、動きのマネはできても魔術師と同じように火を放つとか、術式をいくら解析しても俺にはそこまではできない。
だが、例えば兵士の剣技の動きをパターン化のスキルを使ってマネすることはできる。
もちろん、日常からそれだけの稽古を積んでいる兵士のスピードで剣技が使えるわけではないから万能というわけではないがそれでもこのパターンを習得するというのは何をするにしても近道だ。
このパターンを分析するためにスキルだ。
それ以外にも、この世界では未だに色々な技術が一子相伝のように伝えられている。
もちろんスキル持ちには勝てないのは当たり前だが、それでもこのスキルは工程をすべて同じに再現することができれば、なんでもそつなくこなせるようになる。
例えば一流料理のシェフの腕前を再現できるとか、使い道は多岐にわたる。
なんでこんなスキルなのか。
決まっている。俺の人生はかがり火を守る村人という運命が決まっている。
でも、それ以外どんなことでもできるなら、できることは多い方がいいじゃないか。
かがり火を守る村人なのに騎士団長と同じ動きができる。
一流のシェフと同じように料理が作れる。
ちょっとカッコイイと思わない?
理由はそんな理由だ。
もちろん、最初はそんなスキルがあるのかもわからないし、他に有用なスキル探した方がいいとも思った。きっとまともな大人に相談をしていたら、
「絶対にそんなスキルはない」
そう言われていたに違いない。
多くの人は自分でやる前から諦めてしまっている人が多い。
過去の俺も正直同じだった。
でも今が2度目の人生だとわかっている状態で自分に無理だなんて言いたくはなかった。
過去の自分の人生を振り返った時にいつもどこかで自分にはできないと思っていた。
でも、それは結局できない言い訳を先に作っていただけだった。
異世界にきて2度目の人生のチャンスも、もしこれが2度目の人生だと知らなかったら、俺はまた同じようにダメな自分にはできないと思って過ごしていたに違いない。
だけど、俺は今が2度目の人生だというのを知っている。
2度目の人生も同じようにやりもしない段階で無理だと諦めて逃げてしまう人生を送りたいのか。
いや、そんな人生は1度だけで十分だ。
自分の信念のもとにできるかどうかはわからなくても、自分が楽しいと思うことにチャレンジをしていく。神様はこの人生をつまらない誰もやりたがらない人生だと言っていた。
でも結局、つまらない人生にするのも楽しい人生にするのも自分次第だ。
今この世界にはゲームもコンビニもマンガもない。
だけど、俺の知らないことが沢山あって、魔法やスキルという可能性が無限大に広がっている。
きっと前世の世界だって、科学を使えば同じように無限の可能性にチャレンジすることができた。
それをしなかったのは結局自分だった。
だから今回は必ず自分の信じた道を歩くことにした。
そしてついに身につけたのがこのパターン化のスキルだった。
ここから俺の無双伝説が始まるはずだったのだがやっぱりそう簡単にはいかなかった。