平凡=退屈に思えるけど、意外とそうでもなかった異世界ライフ
5歳になると色々なことができるようになった。
手から風の刃を発生させたり、口から火を吐いたり、手を空にかかげれば雷を呼びよせることができるようになった。自由自在に空を駆け巡り地面に手を置けば地面が割れた。
なんてことはもちろんない。
いたって平凡に育った俺は過去の記憶がある分成長が早いと思われてはいるがそれ以上ではない。
両親は俺のことを天才だと騒いでくれるが、それはどこの家だってそうだろう。
歩き出せばこの子は優秀だと言われ、ママと言えばこの子は覚えが早いとか。
ただの親バカのレベルだ。
俺はできるだけこの世界の普通の子供になれるようにまわりの子たちを見て演じるようにした。
ドワーフの子供たちは鍛冶のスキルがあり5歳児で父親に健康の願いをこめて自分で打ったものをプレゼントする習慣があった。俺もマネして短剣を打ってみたらドワーフの大人が
「その輝きはまさかマスタングの!? いやでも子供が」
なんてブツブツ言っていたが、俺は気にせず父親の健康を願い短剣を1本打ってあげた。
不器用だが輝きは悪くない。なんかよくわからない魔力を帯びてる感じがするが少しくらい魔力がはいることはよくあることだろう。なんたって異世界だからな。
どんな不思議なことがあってもおかしくない。
父親のために打ったその短剣は素人ながらなかなかいい物だと思う。
あげるときに親父に
「お父さんの健康と繁栄を願ってつくったよ」
って言ったらお父さんはは嬉しそうに
「お守りとして肌身離さず持っておくよ」
なんて言っていってくれた。
本当に肌身離さず持っていてくれるみたいで、短剣を持つようになってから身体の調子がいいとか嬉しいことまで言ってくれる。そんな不思議な効果なんてあるわけないのにプラシボー効果とは怖いものだ。
父親は肩こりに腰痛もなくなって調子がいいんだよなんて言っていたが、今度兄弟が増えることになったらしい。まぁ俺も5歳だからなそろそろ次ができてもいい頃だろう。
その後、俺はよくわからないが村が魔物に襲われた時に親父が無双をしたとか言っていた。
実は隠れた才能があったようだ。普段は冴えない同じを演じているのにいざという時には活躍する。
小さな頃に憧れていたヒーローのようだ。
火守りの平凡な親父だと思っていたのに。
俺も鼻が高い。
それ以外にも俺は目立たないように同級のエルフが植物を育てていたのでマネして育ててみることにした。エルフは魔力を込めて種をうめるみたいなので俺も魔力をこめて種を埋めてみた。
やっぱり土も大事だろうということで植える時はエルフの土地にしてみた。
なんの種かはよくわからないが、確かポーションという回復薬の原料になる草の種らしい。
俺はうっかり植えた場所を忘れてしまいその後種がどうなったかはわからないが、その後、なんかエルフの土地から世界樹の木が生えてきたとか大人たちが騒いでいた。
世界樹の木というのは上級ポーションの原料になるものらしく瀕死の状態でも回復させることができるらしい。普通は何十年もかけて魔力を込めた種を植えると生えてくるものらしい。
不思議なこともあるものだ。
そんな感じで異世界で同じくらいの子供たちのマネをしながら交流して成長していった。
しかし異世界っていうのは怖いものだ。
前世の記憶があるからこそ、本当に異世界だというのを実感してしまう。
平凡な人生を送ると言われていたのに刀鍛冶の真似事ができたり、世界樹とか珍しい植物が生えていたり。
俺を殺した天使は許せないが同じ人生でも全然平凡なんて感じじゃない。
日々面白い体験ができたり、新しいことを見れたりする。
どんな生活も自分の見方次第で変わるもんなんだな。
そして15歳になった時俺は独自のスキルを身につけることに成功した。