ポンコツのおかげで?記憶を持って生まれてきてしまった。
なんだろう。
すごい肌触りがいいもので身体が包まれている。
ふわふわの羽毛のようだ。
とても気持ちいい。
あれ?俺って記憶がなくなってしまっているんじゃなかったのか?
重たい瞼をゆっくりとあける。
目の前に広がるのは木でできて天井。
確か記憶がなくなると言われたはずだったが。
そこへ俺を覗きこむイケメンと美女のカップル。
「おぉ!ナインが目を覚ましたぞ」
「まぁ。あなたに似て目がとっても可愛いわね」
「君が頑張ってくれたから。ありがとうねサラ」
「いいえ、あなたがいつも優しくしてくれるからよ。イッシー」
サラと呼ばれた女性は金髪ロングの髪の毛に緑の目で今までみた美女の中でも一番の美しさだと言ってもおかしくはない。こんな美しい人がいるのかと思ってしまうほど肌は透き通り毛穴すら見えない。
イッシーと呼ばれた男性は屈強な体つきをしており、服の上からでもその鍛えられた身体がわかるほどだった。サラと同じく緑色の目をしており体つきとは変わり顔だけみるとイケメンで非常にアンバランスに感じる。
どうやら俺は記憶を持ったまま転生されてしまったらしい。
別に記憶があって困るものではない……か?
いや、俺の人生はずっと死ぬまで火の守りだって言っていた。
過去の記憶を持ったまま火守りなんてできるか?
いや無理だな。
だってそうだろ?楽しいことを知らなければ問題ないが楽しいことを知っている以上絶対に外の世界を見に行きたいとか考えてしまう。
まぁでもそれを考えるのはまだ早いか。
今はまだ手すらろくに動かせない。
赤ちゃんってこんなに大変なんだな。
自分では動けないし、しゃべることすらできない。
人間は生まれてから死ぬまで誰かに面倒を見てもらわなければ生活できない弱い生き物だと言われたことがあったが本当にその通りだろう。
かろうじて動かせるのは目だけだったので一生懸命家の中を見渡す。
見るからに大きな盾や剣、槍なども飾られておりそれなりの鍛冶は進んでいるようだが科学は発達していないようだった。
どうやら俺の知っている地球ではなく異世界へきてしまったようだ。
それにしても、異世界なのに普通に俺は今この2人の言っていることを理解できている。
なぜだろう?
転生チートなのか?
いや、でも転生チートなんてないってあの時に言っていたが。
ただポンコツの天使が何か薬を間違ったようだからな。
きっと何か特別な力を得られたに違いない。
そう思い込むことにしよう。
だって過去の記憶を持ったまま転生できただけでも十分アドバンテージがあるわけだし、見たところそれほど科学も発達していない。
ただ、毛布だけは今まで触ったことがないような肌触りでものすごく気持ちいい。
これが天然ものの素晴らしさなのだろうか。
それとも異世界特有の特別な魔物とかの毛なのだろうか。
毛布に包まれ色々考えてはいたが瞼が段々と重くなっていく。
そうして俺はまた意識を手放した。