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第19話 平凡な俺の平凡な一日

突然ですが、なろうテンプレ小説始めます。






俺はエメルド・アイフレンド!どこにでもいるごく普通の村人だ。父さん母さん、俺は今日も一日色々頑張ってるよ。






ここは俺達の住む村「アイルマセリア」。

海にも近いけど、俺達の家は海からは少し離れた山の近くだ!


マセリアっていうのは俺の祖父の名前だ。その昔、村を魔物から救った英雄らしい。結局死んだけど、功績を讃えて村の名前にしたんだってさ。



そんな子孫の俺が今何をしているかというと。




「はー終わり終わり!」

農作業、料理、洗濯、家の掃除、回覧板、また農作業、洗濯物畳み、また農作業、薪割り、そしてまた料理だ!

おっと元気な足音が聞こえる!




「兄さんただいまー!会いたかったよ愛してる今日もかっこいいねしびれちゃう!」

「エメ兄ただいま!おつかれさま!」


「おかえりミラ、レト!」




俺はどこにでもいる村人だけど、周りの人とはちょっと違うことがある。

親がいない。祖父母もいない。結構前に死んでるからな。

だから俺が農作業も家事もやってる。その間、弟と妹は学校に行ってる。

村の人みんな優しくて良い人ばっかりで、せめて全員15歳までは学校に行けるようにって色々手伝ってくれてるんだ。俺はもう卒業したけど、本当に感謝してる。





「兄さん兄さん兄さん手伝うねお皿運ぶよ何でも運ぶよ兄さんも運ぶよ僕に身を委ねてさあ」

「まずは手洗って来い、うがいもな」



この落ち着きがなくて可愛いのが弟のミラディス。




「エメ兄あのね、今日テストがあったの」

「また100点じゃないか!レトはよく頑張ってるもんな、えらいえらい」



この頭が良くて可愛いのが妹のレトマーナ。




二人とも超可愛いし性格も良い。俺にはもったいないくらいよくできた子達だ。

だが。


「でも……一気に食器運びすぎて……ふらふらする……」

「テストきんちょうして今になっておなかがいたくなってきた……」




体が弱い!すっごい弱い!

両親は病気で死んだので、二人がすぐ体調を崩すのがめちゃくちゃ心配だ。






「ミラ、もう座ってていい!ありがとう助かった!後は兄ちゃんやるから!レトももう大丈夫だから、明日学校休みだから!お茶飲め!」




食卓に料理を運ぶ。今日のメニューはこんな感じだ!



炊きたてのごはん

なめこの味噌汁

魚の塩焼き

菜の花のからし和え(子供向けなのであんまり辛くしてない)

根菜のきんぴら


※常備菜

山菜の佃煮

大根のはりはり漬け

梅干し




「わーい、いただきまーす!」

「今日もおいしそー!」




俺はまだまだ若いけど料理には結構自信がある。子供の頃は台所なんかそれこそ皿運びや片付けくらいでしか入らなかったけど、親がいないせいで二人にひもじい思いをさせるなんて嫌だったから、手に入りやすい食材をできるだけ美味しく食べられるように、近所のおばちゃんとかに弟子入りしながらめちゃくちゃ頑張って練習した。



まあ途中

「まさかここまで厳しい修行についてくるとはね……私を倒して奥義を会得しなさい」

とかいうおばちゃんとの料理バトルもあったけど、それは割愛する。





「おいひいねえ」

「ミラ兄おしょーゆ取って、あとしゃべりながら食べないで」

「(ごっくん)レトはしっかりものだねえ」

「ミラ兄が子どもなんだよ!もー、わたしの方がお姉さんみたい!」

「良く噛めよー」

「出た!兄さんの良く噛めよ教!あっおかわりください」

「いや食べるの速いし本当に良く噛めってミラ!また消化不良で一日ぶっ倒れるぞ!」

「あのときのミラ兄『もうだめだ……おかーさんがお花畑で手をふってる……』とか言い出してもうたいへんだったんだからね、ほらお茶」

「レトはほんとにしっかりものだねえ」

「話聞いてる?」





俺達の食事風景はだいたいいつもこんな感じだ。というか、食事の時以外もこんな感じだ。




「そういや明日、校舎で何か展示があるんだろ?」

「うん。この前の学期に作ってた工作や絵を飾ってるんだよ!僕のもレトのもあるよ!」

「うん、ミラ兄のは……なんていうかすごいね。器用なのにテーマをまったく分かっていない感じの工作が芸じゅつてきだね」

「じゃあ俺も見に行くな!」

「えっやだ恥ずかしい!兄さんに僕のあんなところやこんなところ見られちゃうんだ」

「じゃあわたしはその分、畑のお手伝いがんばるね!」

「そんなのいいって、宿題とかあるだろ」

「宿題なんか出たしゅんかん終わらせちゃうもん!」

「そうそう出た瞬間頭良い友達にプレゼントするから大丈夫だよ!」

「ミラ兄、いっしょにしないで」

「自分でやれ」





そんな話をしていると。




ビー、ビー。



警報が聞こえた。

野性動物が山との境の柵に引っ掛かった時に鳴るやつだ。





「ちょっと見てくる」

「僕も行くよ兄さん!」

「お前は暗いとすぐ転ぶから駄目だ」

「ひどいよお!兄さんの役に立つなら何でもするよお!」

「大丈夫、魔物だったらすぐ逃げて大人呼ぶから。二人はここで普通にしてろ」

「エメ兄、気を付けてね!」

「うん。行ってきます!」






もう日は沈んでて辺り一面暗い。でも音が鳴った位置的に、俺の家にかなり近いはずだ。

放っておいて農作物に被害が出たら、村のみんなに申し訳が立たない。



「おかしいな、この辺だと思ったんだけど」


猿だの鹿だの猪だのが引っ掛かりそうな網を点検するが何の気配もない。誤作動かもしれない。

明るい時間帯にもう一度点検しよう。





そう思った、その時。

暗闇から何かが飛び出てきた。




「うわ魔物!?」

月明かりに照らされて、鋭い鉤爪を持った気持ち悪い鳥のような蛇のような攻撃的な動物、「魔物」が襲いかかってくるのがわかる。


うっかり近寄りすぎて刺激してしまったらしい。こちらに向かってまっすぐに飛んでくる。

手に持っていた棒切れを振り回すが威嚇にもなっていないようだ。



あんな爪、少しかすっただけで大怪我するに違いない!

こんなのが村に入ってきたら、ミラディスが、レトマーナが、村の人達が危ない!

でも他の大人を呼びに行く余裕がない。しくじった。





どうしよう。そんなことを考えているうちに、目の前に魔物が迫っている。

やられる!




そう観念した瞬間。






月明かりの下、虹のような軌道が見えた。




その先を追うと、魔物は木に刺さって絶命していた。


「これは……矢……?」

確認していると、背後から声がする。





「全く。こんな夜にろくな武器も持たずにほっつき歩く馬鹿がどこにいるんだ。素人は帰れ」





とろりとした甘い声質と噛み合わない、厳つい口調。

振り向くと、村の中で一度も見たことない人がいた。






俺より、ミラディスよりずっと小さい身長。

その体格に似つかわしくない大きな弓。



そして、ぼんやりした春の月光の下でもわかる。

超絶美少女だ。



有り得ないくらい、奇跡かと思うくらい、こんな季節じゃなくても星が霞むくらい、花という花がすべてひれ伏すくらい、あらゆる宝石が価値をなくすくらい、何にも例えられないくらい、世界で一番なんじゃないかってくらい綺麗な女の子がいた。


彼女は一歩も動かず、俺の方を睨んでる。

何も追及せずに帰れとでも言うかのように。

肩につかないほどの長さの髪と、それを緩く頭の横で結んでいるリボンだけが風に揺れてふわりと動いている。

見た目は可愛いけど眼光はめちゃくちゃ鋭い。殺気を感じるくらいだ。






でも訊かずにはいられない。


「君は、誰?」



「…………」





彼女が何か言おうとした瞬間、ふらついてその場に倒れかかる。

思わず駆け寄って腕で受け止める。






「だ、大丈夫か!?」

「煩い。声が大きい。放っておけ」

「どこか怪我してるのか!?俺の家すぐそこだから休んでって!」

「違う、ええい離れろ!」




ぐう。




何か音がする。

それが彼女のお腹から聞こえる音だと、すぐに気付いた。





「ミラ、調子乗っておかわりしすぎてないと良いけど……」





とりあえず、目を回しながらその場にへたり込む彼女をうちに連れて帰ることにした。





第3章はほぼずっとエメルド視点の予定です。

主人公のミウはしばらくお休みです。


「1、2章読むの文字多いしダルいわ~」って人はこの章と用語解説だけ先に読んじゃっても大丈夫です。



でも1、2章読んでくださった方がこの章飛ばすと4章以降が意味不明なことになりかねないので、もしよろしければ休憩気分でお付き合いください。

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